アニメ・コミック

2022/01/18

真船一雄 『K2』

どんな病気も手術で治してしまう天才外科医を主人公にした、いわゆるスーパードクターもの。同じ著者による『スーパードクターK』という作品の続編らしい。

基本的には天才外科医が「天才的な手術の技で問題を解決する」ということが主眼になっているようで、そのため、ともかく高難度の手術が必要であることが物語の前提になっているように思える。その病を抱える患者やその執刀をする医師の「人間としての個性」には、あまり関心がないのかもしれない。

天才外科医が主人公のマンガといえば手塚治虫の『ブラック・ジャック』という名作があるわけで、それと比較してしまうのはしかたがない。『ブラック・ジャック』は実は医療行為そのもの以外のところに基本テーマがあるように思うわけで、その意味では、治すべき病自体は必ずしも難病や超高難度の手術が必要なものでなくても実はOKに思う。ときには患者が救われないこと、さらにはブラック・ジャック自身が救われないこともあり、物語に奥行きや幅が感じられる。

比較の結果、自分にはやはり『ブラック・ジャック』のほうがおもしろいと思えてしまう。そんなわけで、『K2』は現在までに単行本が40巻くらいまで出ているようだが、10巻まで読んだところで飽きてしまった。

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2021/01/10

上村五十鈴 『星の案内人』

以前、自宅から歩いて行けるところに、区立の科学館があった。
科学館にはプラネタリウムがあり、毎月、上映会や天体観測会が行われていた。
近隣の住民は無料で参加することができたので、ほぼ毎回、上映会に出かけて、星の話や宇宙の話に親しんだ。
その頃は、仕事帰りに夜空を見上げ、プラネタリウムで覚えた星や星座を探したり眺めたりすることもよくあった。
知っている星をみつけられると、それだけで楽しくなった。
しかし、施設の老朽化を理由に科学館が閉館されてからは、夜空を見上げることも少なくなった。
天体に関するニュースなどがあったときに、時折見上げる程度になってしまった。
あの頃に覚えた星の名前や位置なども、いまではだいぶ忘れてしまった。

でも、このコミックを読んだら、また夜空を見上げたくなった。
そこにはいまもオリオン座があり、双子座があり、アルデバランは赤い光を放ち、シリウスは強く白く輝いていた。

読後感が非常に爽やかな、すてきな作品だった。


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山花典之 / たかはし慶行 『聖樹のパン』

飲食店を舞台にした作品は好きなのだけど、これはなぁ、ベーカリーレストランを舞台にしてはいるけれど、飲食店の話ではないなぁ。パン作りの解説書をマンガベースでつくってみましたといった感じで、ストーリーは添え物といった印象。すごく学習マンガっぽい。10巻あたりになるとパンだけでなく北海道の食品や歴史などに関した解説も増えてきて、いっそう学習マンガ風になった。
いちおう、パン職人である主人公の成長物語風に構成しようという意図は見えるけれど、物語自体が非常に短絡的かつご都合主義に展開していて、ちっともおもしろくない。やたらと女性キャラを大量投入し、その誰もが主人公に好意を抱き、そのことにヒロイン?がやきもきするというワンパターン展開も工夫がないし、他のパン職人とのパンバトルも、主人公があまりに簡単に勝ちすぎ。新商品の開発にしても、ほぼ試行錯誤なしで、頭の中でイメージしたパンがすぐにできてしまうなんて、天才パン職人という設定とはいえ天才すぎ。
登場人物すべての背景描写が薄っぺらくて誰ひとりとして魅力が感じられないうえ、物語のコア部分があまりに退屈で、読み続けるのが苦痛だた。


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2020/01/05

宮崎駿 『風の谷のナウシカ』

ずっとむかし、まだ学生だったころにいちど読んだことがあるのだけど、そのときはまだコミック最終巻が発行されておらず、けっきょく最後までは読まなかった記憶がある。今回、おそらく初めて最後まで読んだわけだが、終盤に近づくにつれて物語が駆け足になっているというか、話を終わらせるために大急ぎでいろいろなものを詰め込んだような、そんな印象を受けた。最初のほうに出てきた腐海や王蟲の描写とかは繊細で美しかったのにな。それと、モノクロ印刷のコミックだと、王蟲の目の色がわからないのが残念だった。
あと、根本的な思想としては、『新世紀エヴァンゲリオン』に似ているように感じる。何度も過ちを繰り返し、争いや略奪に明け暮れるいまの人類を地上から一掃し、より平和的で完成された新しい世界をつくろうとする「誰か」によるノアの箱舟的な計画により、主人公たちが生きている時代に大きな災害が発生し、あと少しでその計画が成就しようとするが、最終的に主人公は完成され完全な調和が得られるであろう新しい世界よりも現状の未完成で不完全な世界で生きていくことを選ぶという流れは、基本的に同じなんだな。


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2019/12/15

楳図かずお『神の左手悪魔の右手』

絵はけっこうグロくてよいのだけど、ストーリーにあんまり厚みが感じられないのが残念。絵面のどす黒さとぐちゃぐちゃ加減に対し、物語のどす黒さやどろどろ加減が負けている感じがする。「女王蜘蛛の舌」はそこそこ趣があって悪くなかったけれど、他の話は登場人物がただ騒いでいるだけのB級スプラッタムービーと同じような匂いを感じる。『神の左手悪魔の右手』というタイトルも物語にほとんど活かされていない。そこを上手に使えていれば趣深いタイトルだっただろうに、最終話で思い出したようにそれっぽい説明を入れただけで、単に思わせぶりなタイトルで終わってしまった印象。

神の左手悪魔の右手(1)

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2019/08/25

食糧人類-Starving Anonymous- (原作:蔵石ユウ、作画:イナベカズ)


人間を捕食する地球外知的生命体との戦いを描いた作品という点では『寄生獣』などと似たようなところがあるけれど、『寄生獣』と比べると描かれているテーマや登場人物の描写などが非常に浅いと感じる。主人公?の伊江は基本的になんの役にも立たないし、キャラクターに魅力も感じない。伊江よりも活躍するナツネと山引はどちらも特異体質なのでストーリーを都合よく進めるうえでなんでもありだし、伊江の友人のカズは登場の必要性を感じない。桐生もマッドサイエンティストにしては知性の高さを感じない。最大の敵である巨大生物も、人類よりも知能も科学技術力も高いという設定なのに食糧を食べつくしたうえ共食いで絶滅って、とても知能が高いとは思えない。人間以外のものは食べないような設定でありながら共食いをするというのもなんだかなぁ。発言者の役柄や状況に対してそぐわないような子供っぽい、というか、ばかっぽいせりふもところどころであり、非常に興ざめ。SFとしてもゴアものやバトルものとしても中途半端で、登場人物たちの成長ストーリーとしても起伏が少ないうえ振れ幅も小さく、思ったよりもおもしろみのない、こじんまりとした作品だった。

食糧人類ーStarving Anonymous-(1)

イナベ カズ/蔵石 ユウ 講談社 2016年09月20日
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2019/05/01

佐藤宏之 『気分はグルービー』

まだギターを弾いていた大学生だったころに、同じ音楽サークルの後輩の家で読んで、なかなかおもしろかった記憶があったのだけど、あらためて読み返してみたら、思ったよりおもしろく思えなかったのは、自分が年を取ってしまったからだろうか。というか、ロックバンドをテーマにしたコミックだと思っていて、もっと演奏シーンがたくさんあったように記憶していたのだけど、意外と演奏シーンが少なかった。ロックバンドがテーマというよりは、人気のある高校生ロックバンドにあとから参加したドラマーの兄ちゃんと、その兄ちゃんをバンドにスカウトしたキーボーディストの姉ちゃんの煮え切らないラブストーリーと、バンドのメンバーである高校生たちの馬鹿っぽい青春ストーリーが、むしろ主軸だったんだな。もっとバンド活動やロックへの愛情や苦悩のようなものが強く感じられるような内容のものが読みたかったと思った。

 

 


 

 

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2018/12/30

楳図かずお 『わたしは真悟』


なんだろう、なんだかわからないけれど、すごく圧倒された。読み進めずにはいられない迫力があり、読み終わったときには感動と心が痛みが残った。うまく言葉にできない。すごい作品だった。


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2018/06/02

日渡早紀 『ぼくの地球を守って』


少女コミックの名作と評価が高く、男性が読んでもおもしろいというコメントも多かったので、読み始めてみたのだけど、コミックの2巻まで読んで、もう飽きてきてしまった。1巻を読み終わったときに、すでに「先を読み進めたい」という気持ちがまったく起きずにいたのだけど、もう少し読めばおもしろくなるかもと思って、我慢して2巻まで読んだが、やっぱりぜんぜんおもしろくならない。少し毛色の変わった青春ラブストーリーといった感じで、自分にはまったく合わない感じ。もう少し読めばおもしろくなってくるのかもしれないけれど、続けて3巻以降を読みたいという興味がどうしても湧いてこないので、ここで打ち切りかな。



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2018/04/08

池田理代子 『ベルサイユのばら』


ラブストーリー部分にはぜんぜん興味はないが、激動の時代を生きたオスカル・フランソワというひとりの若者の成長と死、生き方を描いた作品としては、やはり非常におもしろい。特にオスカルがフランス衛兵隊に行ってからは、物語自体にも厚みと躍動感が増し、また、オスカルが兵士たちに伝えようとする言葉にも響くものがたくさんあって、いっそうおもしろくなった。

あと、物語終盤の、マリー・アントワネットが行かれる国民たちに向かってバルコニーでお辞儀をするシーンも、心を打つものがあるな。そういえば、このシーンは、ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』でも非常に印象的だった。





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