国:フィンランド

2008/05/28

KHATSATURJAN / ARAMED FORCES OF SIMANTIPAK (2006)

フィンランドのプログレッシヴ・グループ、Khatsaturjan(ハチャトゥリアン)のセカンド・アルバム。70分弱にわたるアイデア満載のロック・シンフォニーが展開されます。ちなみにハチャトゥリアンといえば有名なロシアの作曲家の名前ですが、ロック・グループのKhatsaturjanはとくにクラシックのハチャトゥリアンの曲を演奏に取り入れたりはしていないようですムソルグスキーベルリオーズヘンデルの曲は使ったりしてるのに)。そのかわり、デビュー作である『Aramsome Sums』(2003)も、セカンドである『Aramed Forces of Simantipak』も、アルバム・タイトルがハチャトゥリアンのファースト・ネームである「Aram」から始まる、というこだわりがあるらしい。

ベース、ギター、ドラム、チェロの4人からなるグループですが、それぞれの担当楽器だけでなく、メンバー全員がヴォーカルをとりキーボードも演奏するため、非常に厚みのあるアレンジが楽しめます。いろいろなアイデアを次々と繰り出して展開していく様は楽しくもありますが、有名どころのプログレッシヴ・グループの曲で聴いたことのあるようなメロディや演奏もけっこうあります。分厚いキーボード・オーケストレーションやハーモナイズド・ギター、頻繁に入る合唱などに力強さとユーロピアンな哀愁を感じつつも、全体の印象は意外とすっきり爽やかで軽快な感じがするのは、北欧だからでしょうか。情緒的ではなく淡々とした印象で歌われるヴォーカルはイギリスのファンタジック系シンフォニックを思い出させます。

若者らしい(みんな1981年生まれ)瑞々しさと勢いがあり、好感が持てます。なんとなく、Mandalaband(マンダラバンド)から「圧倒的な迫力」を除いたような、そんな印象を受けました。

M1: Prelude
キーボードの雄大なオーケストレーション。ファンタジックな雰囲気の、イギリスのシンフォニック・ロックぽい導入部。

M2: The Grand Pariah Lament
M1から途切れずに場面展開して始まります。ほどよく力強くて軽やかでテクニカルな演奏。ストリングスの入る静かな演奏からシンセサイザーのソロへとつながる中間部も含め、いかにもシンフォニック・プログレッシヴらしい曲。

M3: Oh, Cosmic Pearl
力強いリズム。シンフォニックなキーボード。ファンタジック・シンフォニック風のコーラス。軽快なプログレ・ハードといった感じ。中間部ではゆったりとしたリズムのおだやかな演奏に場面転換します。やわらかくなめらかな美しさを持ったメロディには涼しげな清涼感があります。

M4: Advent Rise
チェンバロのようなキーボードによるイントロはバロック風。さらに弦楽器が入り、室内楽風へと変わっていきます。と思っていたらヴォーカル・パートでは荘厳なオルガンが鳴り響き、そこに合唱が入って、合唱ロック好きな自分としてはぞくぞくしてしまいます。序盤はクラシカルな印象が強いのですが、中盤以降はオルガンを中心としたシンフォニック・ロック・テイストが強まります。

M5: Scenario Triangular
3つのパートからなる12分弱の組曲。合唱入りのオルガン系シンフォニック・ロックで始まり、中間部ではシンセサイザーとガット・ギターでおだやかに。そこにリズムが入るとキーボードがやわらかなアルペジオを奏でだし、いくぶんジャジーなエレキ・ギターのソロへとつながります。後半ではハーモナイズド・ギターがほどよい哀愁を振りまくおだやかなシンフォニック・ロックへ。そして、合唱。さらにタンゴ風のパートを経て、最後はシンフォニック・ロックへと戻ってきます。

M6: The New Masters Of My Body
M5から途切れなく始まります。どことなくコミカルな雰囲気のあるストリングスのピッチカート風アルペジオ。ヴォーカルはイギリス系ファンタジック・ロック風。ポップな雰囲気もあって、なんとなくTeru's Symphonia(テルズ・シンフォニア)とか思い出してしまいました。

M7: I've Got Your Daddy's Phonenumber
テクニカル・シンフォニック風のイントロから爽やかなシンフォニック・ロックへ。しかしオルガンと合唱が入ると、どことなく邪悪な雰囲気の漂う怪しい感じになります。さっきまでふつうに八分音符を刻んでいたはずが、気がつくといつのまにかさりげなく付点つき八分音符のシャッフル風にリズム・チェンジされていたりするところが玄人っぽい感じ。プログレ・フュージョンに似た雰囲気もあり、ちょっとKenso(ケンソー)とかが思い浮かびました。

M8: Guidance Of Blinded Light
軽快で爽やかなシンフォニック・ロック。ヴォーカル・ラインはストレートなハード・ロックぽいけれど、コーラスを上手に使ったアレンジはファンタジック・ポップス風でもあります。

M9: Chromatic Movement
5拍子のリズムに憂鬱な感じのヴォーカル。ちょっとシリアスで、いくらか退廃的にも感じられる雰囲気は、Lewis Furey(ルイス・ヒューレイ)などに通じるかも。6/8拍子に変わる間奏部は重ね録りのエレキ・ギターが縦横無尽に鳴り響くシンフォニック・ロック。

M10: The Mass
3つのパートからなる15分超の組曲。クラシカルなピアノのイントロに続いて厳かな合唱。そこに加わるチェロには室内楽風のリラックスした感じがあります。ヴォーカル・パートはマイナー調のメロディですが、細かなリズムを刻む演奏には軽快さがあります。途中でヘンデルのサラバンドを挟み、いくぶんブルージーなシンフォ・ロックへと展開。そこからリズムが速まり軽快なロック・パートへつながるなど、さまざまな場面転換を繰り返しながら進みます。

M11: Upon The Plummeth
演奏なしのスキャットで歌われる、聖歌ぽい合唱。地響きのようなシンセサイザーと、そこに色彩を加えるオーケストラ。呪術めいたヴォイスが入り、最後は教会の鐘の音で終わります。なんだか恐ろしげな終焉です。



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2005/11/18

PEKKA POHJOLA / EVERYMAN - JOKAMIES

フィンランド人のベース奏者。いまはソロで活動しているけれど、以前はWigwam(ウィグワム)というグループで演奏してました。Wigwamってプログレッシヴ・ロック・ファンのあいだではけっこう有名なグループなのだけど、聴いたことないや。

ソロになってからのPekka Pohjola(ペッカ・ポホヨラ)は、ニューエイジ系の優れたアーティストとして、プログレッシヴ・ロック・ファン以外の音楽ファンにも知られるようになり、日本にも何度か来てたはず。だけど自分、彼のアルバムって持ってなかったよな、たしか... と思い、ためしに入手してみました。

全体にシンセサイザーの音が支配している、いわゆるアンビエントとかニューエイジとか呼ばれるタイプの音楽。もともとは「Jokamies (Everyman)」というフィンランドのテレビ番組のために書かれた曲らしく、それもあってか、ほとんどの曲にヴォーカルもリズム隊も入っていません。自分の好み的にはあまり興味のない、聴いていて飽きてしまうことの多いタイプです。

でも、なぜかこのアルバムは、飽きない。それは、アルバム全体を通してシンセサイザーがただもやもやと鳴っているだけであまりメリハリもないままにだけどおしゃれっぽさはまぶしてある... といった感じ(に自分には聴こえる)のアンビエント・ミュージックとは違い、ときに神秘的で、ときに幻想的で、ときに厳かでと、曲想にいくらかのヴァリエーションがあるからでしょうか。また、それぞれのフレーズやメロディ自体が魅力的な美しさを持っているからかもしれません。

そして、突然響く混声合唱。これが何の違和感もなく、音楽に溶け込んでいる。

けっきょく、非常に穏やかな気分のまま、気持ちよく最後まで聴けてしまいました。

ちなみに自分、Pekkaのアルバムって持ってなかったよなぁと思っていたのですが、Pensiero! websiteを確認したら、『Visitations』というアルバムを聴いたときの雑感を自分で書いてました。このアルバムとはずいぶん感じが違うようです。ていうか、アルバム持ってるじゃん、自分。

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