国:ボスニア・ヘルツェゴヴィナ

2007/11/15

BIJELO DUGME / SINGL PLOCE (1976-1980)


中古盤屋でこのCDを見つけたとき、表から見えていたジャケット写真がファースト・アルバムの『Kad bi bio bijelo dugme』と同じだったので、てっきりファーストだと思って買ったら、実は1982年リリースのシングル集『Singl ploce (1976-1980)』でした。アルバムのタイトルをちゃんと読めばわかりそうなものだ。ちなみに、表は『Kad bi bio bijelo dugme』の写真が使われていたブックレットですが、ケースの内側に面した方に『Singl ploce (1976-1980)』のジャケット写真が印刷されてました。くぅ。

タイトルどおり、1976年から80年のあいだにリリースされたシングル6枚のA面/B面両方を収録したもののようです。

このグループ、ボスニア・ヘルツェゴビナのグループということで、日本ではプログレッシヴ&ユーロ・ロックのコアなファンにしか聴かれていないでしょうし、それゆえ日本ではプログレ扱いされてるんだと思いますが、このシングル集を聴いていると、基本はいわゆるオルガン入りハード・ロック/ヘヴィ・メタル系のグループなんだろうと思います。力強いヴォーカルや、ヨーロッパ音楽的でありながらときにブルージーに奏でられるギターなど、70年代のブリティッシュ・グループ、たとえばDeep Purple(ディープ・パープル)とかRainbow(レインボー)とかUriah Heep(ユーライア・ヒープ)などの影がよぎります。ただ、そうした中にいかにも東欧らしい、西欧とは違ったひなびた哀愁がときおりまざりこんでくるところが、東欧のグループならではの魅力でしょうか。

ハード・ロック風な曲が大半ですが、M3「Milovan」などはホンキートンク・ピアノの音色が楽しいパブ風、カントリー風のロックだったりするし、M9「Pristao sam bicu sve sto hoce」はアコースティック・ギターのストロークを生かしたフォーク・ロック風、M12「Na zadnjem sjedistu moga auta」はラテンっぽいリズムに歌謡曲っぽい女性コーラスとジャズっぽいブラスが入った妙な曲だったりと、単純なハード・ロック・グループではありません。そして多くの曲に、短いながらも印象的な哀愁フレーズがあったり、ちょっとしたシンフォニック・アレンジがあったり、合唱風のコーラスが入ったりと、ユーロ・ファン心をくすぐる要素が隠し味のように現われます。M6「Dosao sam da ti kazem da odlazim」のオルガンをバックに歌われるスロー・パートなど、非常にヨーロッパ的な美しさに満ちていて、こういうメロディが聴きたくてヨーロッパのポップスやロックを聴いてるんだよなということを再認識しました。

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2007/09/19

BIJELO DUGME / BITANGA I PRINCEZA (1979)

ヨーロッパのポップス界や映画音楽の世界で頻繁に名前を見かける作曲家、Goran Bregovic(ゴラン・ブレゴヴィッチ)がリーダーを務めていたボスニア・ヘルツェゴビナのロック・グループ。主に1970年代から80年代にかけて活動し、東欧では人気があったようでアルバムも十数枚リリースされています。

1979年にリリースされた『Bitanga i princeza』は、スタジオ作としては4枚目、ライヴを含めると5枚目の作品で、Bijelo Dugme(ビジェロ・ドゥグメ)ファンのあいだでは一般に彼らの代表作と呼ばれているようです。基本的にはハード・ロックなのですが、ところどころで東欧らしいひなびた哀愁が入り混じり、かと思うと不思議なエキゾチシズムも感じさせたりして、なかなか聞かせます。バラード系の曲はメロディや構成がシンプルだけどヴォーカルに味があり、けっこう沁みます。

ちなみにBijero Dugmeとは英語に直すとWhite Button(白いボタン)という意味だそうです。ファースト・アルバムのジャケットでも女性の左胸のあたりにやけに大きく白いボタンがありましたが、このアルバムでも女性の左耳の下にまるでイヤリングのように大きな白いボタンが描かれています。

M1「Bitanga i princeza」はブルージーなハード・ロック。エレキ・ギターのシンプルなバッキングやオルガンの音が懐かしく感じます。終盤にはスキャットが入り、ヨーロッパの哀愁が漂います。樽を叩くようなドラムの音は、いかにも古い録音という感じで、よくもあり、悪くもあり。

M2「Ala je glupo zaboravit' njen broj」はスピーディなハード・ロック。なんとなくJudas Priest(ジューダス・プリースト)とか思い出しました。イントロではキーボードがエキゾチックで妖しいメロディを奏でます。

M3「Ipak pozelim neko pismo」はちょっと土着リズム風のドラムに乗ったオルガン入りハード・ロックといった感じでしょうか。中間部には静かな演奏パートがあり、そこからエレキ・ギターのソロへと続くあたりはプログレッシヴ・ロックの香りがします。

M4「Kad zaboravis juli」ではパイプ・オルガン系の音づくりをされたキーボードとエレクトリック・ピアノに乗って哀愁のメロディが歌われ始めます。サビ前でアコースティック・ギターのアルペジオが入ってくるとCockney Rebel(コックニー・レベル)の名曲「Sebastian」風になり、哀愁度が高まります。さらにサビではオーケストラが入り、ドラマティックに盛り上がりますが、そのまま哀愁メソメソ路線に進むのではなく、少しの希望を感じる明るさのあるメロディになるのが非常に好ましいです。このサビのメロディはいかにもユーロピアンなシンフォニック・ポップス風ですね。ブラスのアレンジがぶかぶかと垢抜けないのが残念ではあります。

M5「Na zadnjem sjedistu moga auta」は一転して歌謡曲ぽいロック。古くさい女性コーラスの使い方とか、最近ではめったに聴かれないハンド・クラップの導入など、時代を感じます。キーボードの奏でるユーモラスというかコミカルというか、ちょっと妙なメロディもちょっと脱力ものです。

M6「A koliko si imala do sad」もいまとなってはオールド・スタイルですが、シンプルでストレートなハード・ロックで、かっこいいと思います。オルガンも入ってほどよく哀愁も漂わせているし、途中にはセリフのコラージュがあったりと、それなりに構成に気を配っているのも好ましく感じます。

ラストのM7「Sve ce to mila moja prekriti ruzmarin, snjegovi i sas」は、このアルバムのハイライトでしょう。オーケストラの演奏で映画音楽のように始まります。Aメロはアコースティック・ギターのアルペジオをバックにとつとつと歌われます。そして、サビ。ドラマチックなメロディが力強く歌われ、オーケストラがその哀愁をサポート&フォローします。いかにもシンフォニック・プログレッシヴ系バラードらしい曲です。後半のサビでは薄いながらもヒューマン・ヴォイスによるコーラスがかぶさり、哀愁度&ドラマチック度をいっそう高めます。東欧らしい名曲。

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2005/09/16

BIJELO DUGME / USPAVANKA ZA RADMILU M.

Bijelo Dugme(ビジェロ・ドゥグメ)は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身のロック・グループ。おそらく、プログレッシヴ・ロックのファン以外はまったく知らないでしょう。でも、リーダーのGoran Bregovic(ゴラン・ブレゴヴィッチ)の名前は、ユーロ・ポップスのファンならご存じかもしれませんね。コンポーザーとして(シンガーとしても?)ヨーロッパでずいぶん人気があるようです。何年か前のサンレモ音楽祭のコンピレーションCDにも彼の曲が収録されていました。

日本ではおそらくプログレ・ファンにしか名前を知られていないであろうBijelo Dugmeですが、じゃぁプログレ・バンドかといえば、そうじゃないように思います。少なくとも、このアルバムを聴くかぎり。もっとシンプルでストレートなロックですね。非常にヘヴィで力強いのだけど、あまり重苦しさや暗さは感じない、パワフル・ハード・ロックがベースなんじゃないかと思います。

歌詞は、ボスニア語? 何語というのかわかりませんが、英語とかではなく、いわゆる「現地の言葉」なんでしょう。この、ふだんあまり聞きなれない言葉の独特の響きが、なかなか心地よいです。スウェーデン語やハンガリー語よりもロックのリズムや躍動感に乗りやすい言葉なような気がします。

ただ、もしヴォーカルがボスニア語?ではなく英語だったら、あまり「東欧のグループ」ということを意識させないかもしれません。リリースは1983年のようで、リリース年を考えると音づくりや曲想が古く、その点で英米の当時のロックとは違うという印象は受けそうですが、1970年代の先進的なイギリスのハード・ロック・グループだよといわれたら、それはそれで納得してしまうかも。

いくぶんブルージーなヘヴィ・ロックをベースに、おそらくこの時代の英米のロックの影響なのでしょうか、ときどきシンセサイザーのカラフルな音色が紛れ込んでいて、あの頃にはやったイギリスのポップ・ロック、ABCとかFlock of Seagulls(フロック・オブ・シーガルズ)とかSpandau Ballet(スパンダー・バレー)を思い出させます。

M8「Ne Placi」やラストのインスト曲「Uspavanka Za Radmilu M.」はバラードではありますが、これもプログレッシヴ・ロックのバラードではなく、HR/HMグループのバラードといった印象です。ヨーロッパの哀愁というよりも、イギリス風な哀愁、というか、個人的にはThe Animals(ジ・アニマルズ)の「朝日のあたる家」を思い出してしまいました。

詳しい人によると、Bijelo Dugmeには数々の名曲バラードがあり、そこではメロトロンなどが使われ、それゆえユーロ・プログレッシヴのファンに愛されているらしいです。また、これまでにけっこうな枚数のアルバムをリリースしていますが、どのアルバムにもたいてい1曲はそうした名曲バラードが収録されているのだけど、このアルバムにはそういった曲がなくて残念、といった評もあります。個人的な感想としては、たしかにプログレ・ファン的な心をくすぐる曲は見つけにくいアルバムでしたが、自分はもともとハード・ロックも嫌いではないし、これはこれでかっこいいなぁと思います。

あれ、そういえば自分、Bijelo Dugmeのバラードを集めたベスト盤って、持ってたはずだぞ。あとで聴いてみよう。

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