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2023年3月

2023/03/12

『ホテルマン東堂克生の事件ファイル~八ヶ岳リゾート殺人事件』(2022年・BS-TBS)

1990年から2002年にかけてTBSで断続的に連続ドラマやスペシャルドラマがつくられた、石ノ森章太郎のコミック『HOTEL』(1984年~1998年)を原案に、2022年にBS-TBSで放送されたテレビドラマ。番組サイトには「本作品は、石ノ森章太郎の名作コミック『HOTEL』を原案としたスピンオフドラマ」と書いてある。
過去のテレビドラマ版『HOTEL』シリーズも原作コミックとはずいぶんと内容の違うものにはなっていたが、それでも原作へのリスペクトはあったし、ホテルという場所の持つ魅力やそこで働く人、そこに訪れる人、そこで展開されるサービスといったものをきちんと描こうという原作の趣旨は受け継いでいたと思う。
しかし、このスピンオフはひどい。舞台がホテルである必要も、主人公が藤堂マネージャーである必要も感じない。昭和の時代に数多くつくられた温泉宿などを舞台とした2時間ミステリードラマと変わらない内容で、とりあえず、原作コミックのファンと過去にドラマ化されたシリーズのファンの両方に謝れといった感じでした。

ちなみに、藤堂マネージャーの名前は「東堂克生」というのだけど、「克生」の読み方が原作コミックでは「かつみ」、過去のドラマシリーズでは「かつお」で、今回のドラマでは「かつき」と、少しずつ違うらしい。名前の読み方は難しい。


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2023/03/11

『白鯨(Moby Dick)』(1956年・アメリカ)

監督:ジョン・ヒューストン John Huston
出演:グレゴリー・ペック Gregory Peck 他

有名だけど観たことのなかった作品。原作小説も未読で、船乗りのあいだで伝説的に語られる巨大な白クジラ・Moby Dickを仕留めることに執念を燃やす老船長の話……くらいの知識しかなかった。
舞台はエイハブ船長が指揮する捕鯨船で、ストーリーはMoby Dickを追跡し闘うことと、ある意味では単純なものではあるのだけど、船長はエイハブ(アハブ)だし語り手はイシュマエルだし出航前にはイライジャ(エリヤ)という名の予言者がちょっと登場するしと、聖書との関連というか影響というかがあちらこちらにうかがえる。
そうすると、圧倒的な力を持ち多くの船乗りから恐れられる巨大な白鯨は、もしかしたら神のメタファーかもしれないし、それに挑もうとするエイハブ船長やPequod号の船員たちは異教徒、異端者のメタファーであり、滅ぼされて当然、そしてその力を伝えさせるためにイシュマエルを生かしたのか。あるいは、多くの船乗りの命を奪った白鯨は悪魔のメタファーで、それを滅ぼそうと最後まで闘ったエイハブ船長や船員たちは殉教者なのか。
などと深読みもしたくなるが、大長編らしい原作小説(核となるストーリーから逸脱した記述も膨大らしいが)を2時間弱の映像作品にまとめたためか、意外とあっさりした印象が残った。エイハブ船長とスターバック一等航海士がなぜあそこまで信頼し合っているのか、その背景がもう少ししっかりわかるように描かれていたなら、Moby Dickに執着するエイハブ船長をあれほど諫めていたスターバックが、エイハブ船長の死を目にして帰還を望む船員たちをたきつけ、自ら先頭に立ってMoby Dickに立ち向かっていくシーンに、もう少し納得感があったかもな、とか思う。
古い映画なので、映像に登場するMoby Dickはなかなかの作り物感があるが、捕鯨に向かう帆船はPequod号も含めておそらくみな実物なのだろう。大海原を進む帆船はやはり美しい。



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