メタルマクベス disc3 (IHI STAGE AROUND TOKYO)
客席がぐるぐる回る回転劇場「IHI STAGE AROUND TOKYO」で観てきました、『メタルマクベス disc3』。劇団☆新感線の舞台を観るのは初めてで、客席が回るというギミックたっぷりの逆円形劇場での部隊も初体験で、観る前の期待値はけっこう高かったのだけど、観終わったあとの印象は思ったよりもおもしろくなかったなでした。
『メタルマクベス』というタイトルどおり、シェイクスピアの『マクベス』をベースにしたストーリーにヘヴィメタルを取り入れたロック・ミュージカルというかロック・オペラといった感じの作品です。それならそれで、もっとオーソドックスにロック・オペラにしてもらったほうがよかったなというのが感想です。
物語の舞台をデストピア感漂う西暦2218年という近未来に設定したのは、それはそれでありだと思います。しかし、それとは別に、1980年代にアルバムを1枚だけリリースして消えた「メタルマクベス」というヘヴィメタルバンドの栄枯盛衰?をところどころに挟み込み、そのメンバーたちを2218年の登場人物の前世として、バンド内の人間関係などが2218年の登場人物たちの人間関係などにも影響を及ぼすというか、ひとりの人物のなかで前世と現生が時空を超えて共鳴しあうような設定は、話をむだにややこしくするだけで、やりすぎだったと思います。
また、宮藤官九郎の作品だからしかたないのですが、あちらこちらに細かく「笑うパート」を入れ込んできていて、その多くがまったく笑えなかったのもきつかった。宮藤官九郎作品は、はまれるときはおもしろいのですが、はまれないときは苦痛のほうが大きくなる傾向があり、『メタルマクベス』は残念ながら、自分にははまれないほうの作品だったようです。「笑い」の質や方向性が内輪受けに近い。メインとなる2218年の世界での、人物や国などの名称が、ことごとくエレキギターのメーカー名やフレットボードの素材の名前などになっているのも、フェンダーとギブソンがESPに滅ぼされるとか、最後はグレコが仇をとるとか、エレキギターのことを多少なりとも知っている人には物語とは別におもしろみを感じたりはするものの、楽器に詳しくない同行者にはまったくぴんと来なかったようです。
劇中で使われている曲も、ところどころでURIAH HEEPぽかったり聖飢魔Ⅱに似せていたり歌詞が沢田研二の曲のパロディ風だったりと、まぁそれなりに悪くはないのだけど、あとあとまで印象に残るような名曲はありませんでした。歌詞がパロディソングみたいなものが多いのも宮藤官九郎作品だからしかたがないのでしょうが、もっと高揚感のある歌い上げ系の曲があればよかったと思います。長澤まさみにも、もっとロングトーンで胸が熱くなるようなヴォーカルを聞かせるようなメロディの曲を歌ってほしかった。
そうしたもろもろのことも含めて、近未来のデストピアを舞台に置き換えたもっとオーソドックスなロック・ミュージカルで観たかったという印象が残りました。
そして、もうひとつの期待だった回転劇場も、非常に期待外れでした。非常に広角のスクリーンは独特の臨場感があってよかったし(むかし東京ディズニーランドにあった「ビジョナリアム」を思い出しました)、舞台が暗転するかわりに客席が回転するしくみも通常とは違う舞台効果を演出できるという点で悪くないです。ただ、座席のつくりがだめすぎる。最近できた新しい劇場なのに、まるで昭和のころにつくられた劇場のように座席の傾斜が小さく、足元も非常に狭くて前の席との距離が近く、結果として、前の席および2列前の席に座る人の頭で舞台の中央がほぼ見えません。普通に座っていると舞台が見えないために前に乗り出すようにして見る人もいて、そうなると、その後ろに座る人たちはいっそう舞台が見えなくなり、しかたがないからその人も前に乗り出すという悪循環。設計に欠陥があるとしか言えません。
そんなわけで、けっこう残念な感じの『メタルマクベス disc3』でした。
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