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2015/07/20

志の輔らくご「牡丹灯籠」@本多劇場

下北沢で志の輔らくごを観るのは2回目。志の輔はなかなかチケットがとりづらいので、今回はとれてラッキーだった。

「牡丹灯籠」は、たぶん古いテレビドラマか映画でしか見たことがなく、原作がどんななのかは知らない。もともとはトータル30時間くらいになる三遊亭圓朝の創作落語らしい。そのうち、映像化されているのは主に、幽霊の娘と乳母が夜な夜な恋人である浪人のところに現れて、ついには浪人を取り殺してしまうという部分で、自分もこれがこの話の主テーマで、物語の大半なのかと思っていたのだけど、原作の落語はそうではないらしい。トータル30時間に及ぶらくご作品を、志の輔は前半に背景解説を1時間、幽霊が夜な夜な訪れるくだり以降(物語全体の3分の2くらいにあたるようだ)を2時間の、合計約3時間くらいにまとめて演じた。幽霊のくだりだけでなく、物語の最初から最後までを一通り全部3時間程度で表現するための工夫だそうだ。

全編を聞き終えて思ったのは、実は幽霊のくだりって、物語のなかでは意外と脇筋なんじゃね?ということ。物語の骨子は主に仇討で、そこに複雑なお家事情が絡むという、なんというか、とても歌舞伎っぽい物語のようだ。その仇討ちをドラマチックに演出するために、仇への出合い方のきっかけとして幽霊話をトリッキーに織り込んだ、という印象を受けた。率直に言って、幽霊パートの主人公である新三郎とお露なんて、物語全体のなかでみればすっごく小さな存在というか、仇討話を成立させるためだけのサブキャラのように思える。

もちろん、30時間を3時間にまとめているわけだから、そのまとめ方に志の輔なりの意図や思考があるはずで、それで言うと志の輔が、この物語のなかで新三郎とお露にはあまり興味を持たなかったのかもしれない。それよりも、幽霊に脅されてお札をはがし新三郎を死なせてしまった伴蔵や、その妻で欲深く嫉妬深いお峰のほうに、人間としてのおもしろみを感じたのかなと思う。たしかに、映像作品でも新三郎ってキャラが弱いし、お露もなぜそこまで新三郎にこだわるのかよくわからないところもあり、以前から主役二人が印象に残らない話だと思っていた。たしかにこの二人より、伴蔵夫妻のほうがある意味、人間味にあふれていて面白いな。

ただ、全体的には登場人物が多すぎて、複雑にしすぎた感がある話だ。それをわかりやすくするために志の輔は人物相関図を作成し、第一部で見せてくれたわけだが、この試みは非常に助かった。話だけではきっと、登場人物たちの関係が把握できなかっただろう。親の仇討のために剣の修業をしていた孝助の仇が実は修行先の師匠だったり、その師匠ができた人で、のちに孝助はその師匠の仇討を目指すことになったりと、運命の皮肉や不幸な偶然などもあって、それがひねりになっているわけだが、ひねりをいろいろ入れすぎて、全体の印象が散漫になってしまったのかなと思う。そんな話をコンパクトにわかりやすく楽しめたという点で、面白いというよりも勉強になった下北沢の志の輔らくごだった。


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