Claudio Baglioniの声が長く美しく響いた夜
Claudio Baglioniの歌声を初めて聴いたのは、もう25年以上も前のこと。たしか初めて買ったのは『E tu』のLPだったと思う。インターネットがなかった当時のプログレッシヴ・ロック・ファンにとって数少ない情報源のひとつだった雑誌『Marquee』がプログレッシヴなアレンジの施されたカンタウトーレ作品をいくつか紹介しているのを読んで興味を持ち、Riccardo CoccianteやAngelo Branduardiなどと一緒に、いまはなき新宿のエジソンで(ディスクロードだったかも)買ったのだった。
そしてすぐに自分は彼の歌声とメロディの美しさに魅了された。それまでイタリアといえばプログレッシヴ・ロックにしか興味のなかった自分にとって、Claudio Baglioniはイタリアン・ポップスへの道標となった。輸入盤店で運よく彼のLPを見つけられたら迷わず買い、何度も何度も聴いた日々。あの日からClaudioは自分にとって「いちばん好きなイタリアのアーティスト」となった。
イタリアでは常にスタジアム級の会場を超満員にするトップ・アーティスト。しかし日本では一部のイタリアン・ポップス・ファンにしか名前を知られておらず、日本盤CDもこれまでに2枚しか出たことがない(しかもセールス的にも成功せず)。日本には、いわゆる古いカンツォーネやナポレターナのファンはそれなりにいるけど、日本盤LP/CDがほとんど発売されていない1970年代以降のポップスを好んで聴く人は少ない。
だから、彼の歌声を東京で、生で聴ける日が来るとは、夢にも思っていなかった。
でも、その見果てぬ夢が、まさかの現実となった。
2010年11月4日・木曜日。東京・九段下のイタリア文化会館内にある客席数400にも満たないアニェッリホールのステージ。バンドのいない、たったひとりでの弾き語りコンサート。そこでClaudioはFazioli社のピアノを弾きながら(ときにギターに持ち替えて)、26曲を歌ってくれた。
細かいことをいえば、ときどき演奏が微妙だったり、音程が曖昧になる部分もあったけど、でも歌声の素晴らしさは初めてLPで出会ったときと変わらない。力強く始まり、やわらかく優しい感じになったあとに力を盛り返してくるロングトーンも健在。この歌声が自分のほんの数メートル先、肉眼で表情まで見て取れることができる距離から発せられているなんて。
小さな会場だからこそ、会場全体に歌声がいきわたる。目を閉じると、自分のまわりが歌声で満たされているのが感じられる。あたたかみと深みのある声。その声をサポートするFazioliのピアノの音色も素晴らしかった。落ち着いた華やかさのある音色。
カバーや古い曲が多く、もっと最近の曲や聴きたかった曲もあったのは事実。でもそれは贅沢というものだろう。中盤の「Vedrai vedrai」で感情が込みあがり、「Amore bello」「E tu」「Sabato pomeriggio」と続くメドレーでは涙が止まらなかったのに、これ以上なにを望むというのだろう。
こうして2回のアンコールを含む約2時間は、夢のように過ぎていった。
もしまだ見果てぬ夢を追うことが許されるなら、次はバンドとともに来てくれる日を夢見たい。
- Claudio Baglioni one world 2010 tokyo -
- set list november 4, 2010 -
Solo
Strada facendo
A modo mio
Avrai
Pace
Signora Lia
Niente piu'
Poster
Santa Lucia luntana
L'inno di Mameli
- Medley anni '60 -
Nel blu dipinto di blu
Il nostro concerto
Io che amo solo te
Io che non vivo senza te
Vedrai vedrai
Con tutto l'amore che posso
Mille giorni di te e di me
Porta portese
- Medley canzoni -
Amore bello
E tu
Sabato pomeriggio
- encore 1 -
Buona fortuna
Questo piccolo grande amore
La vita e' adesso
- encore 2 -
E tu come stai?
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