やくたたず
自分はいまでも機会と体力があったら飲食店のホールスタッフに戻ってみたいと思っているのだけど、昨日は夢の中でそれが実現した。
ほどよい数の来店がある飲食メインのレストランで、ひさしぶりにホールに立ち、ご案内やオーダー受け、料理運び、ドリンクサービスなどを行なうことになった。
おぉ、他のスタッフを見てみると、2店目の配属先でお世話になったマネージャーがいるじゃないか。あの頃の自分は本当に子供で、働くこともお客さんのこともきちんと考えていなかったが(それはいまもおなじか)、そんな自分に職業人としての基本的な考え方や動き方を教えてくれたのは彼だった(教わったからといって、それが実践できるとはかぎらない見本が自分だ)。ほかのホールスタッフたちも、なんとなく見たことのあるようなないような顔がいくつかある。
あぁ、やっと自分はここに戻ってこれたんだな。うれしいな。お客さんの笑顔のために、それを見て自分が楽しくなるために、しっかりとホールサービスをしよう。そう思って働いた。
だけど、ぜんぜんだめなんだ。
レストラン企業の社員だった頃に覚えたはずのこと、身につけたはずのこと、さらに出版社の編集部員として制作にかかわった接客サービスのノウハウや考え方に関する本で得た知識などを活かしてホールの仕事をしようとするのに、体も頭もついていかない。物理的なスピードや、頭の中の反応時間が、目の前のお客さんの動きに追い付かない。
あたふたするだけで、サービスの提供スピードがぜんぜん間に合わない自分を見て、他のスタッフが「しょうがないな、この人は」という表情をしている。飲食の現場から20年も離れていたし、もう年寄りだし、最初から過剰な期待はしてなかったけど、それにしても、この程度かよ、という顔をしている。
やくたたず。
あんたは、やくたたずなんだよ。
頼むから、おれたちの邪魔だけはしないでくれ。
おれたちの邪魔にならないところでなら、好きにやってくれていいからさ。
おれたちの仕事場では、おとなしくしててくれ。
彼らの憐みの表情に、かたちばかり微笑んだ目の奥に、そうした感情があるのがありありと見て取れた。
あぁ、自分は駄目なんだな。
やっぱり、やくたたずなんだ。
哀しい気分になったところで、目が覚めた。
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コメント
すげーリアルですね!
投稿: 三毛猫 | 2010/02/03 09:10
もあさん、今晩は。
「やくたたず」の言葉を聞いて、私は
「かかし」を即座に思い浮かべました。
「やくたたず」の立ち位置は、ステキだと思いますよ。
オブザーバーとして、見守っていてくれる人がいるから、他の人たちが機敏に動ける、そんな気がしました。
こういう人が必ず必要なのです。
何もしなくていい、ただそこにいて、そこで見ていてくれさえいれば、
みんながスムーズに動ける、そんな「役回り」のように思いました。
ほら誰かが「好きにやっていい」って言ったましたよね。
投稿: ムーン・フェアリー・ヒロコ | 2010/02/03 21:12