THE ALAN PARSONS PROJECT / I ROBOT (1977)
デビュー作ではエドガー・アラン・ポーを題材にしたThe Alan Parsons Project(アラン・パーソンズ・プロジェクト。APP)が、今度はアイザック・アシモフの小説『I Robot(われはロボット)』を題材につくりあげたセカンド・アルバム。
モチーフとなった小説は読んでいないのだけど、たぶん、近未来SFなんだと思います。でも、このアルバムで聴かれる音楽は人間的なあたたかみがあって、ロボット(機械)のイメージとは違う感じがします。曲によっては混声合唱が入り、荘厳さや哀愁が漂うところもありますが、全体にはやわらかいメロディをカラフルなキーボード類を中心とした丸いアレンジでフォローするという、APPらしい美しさと魅力にあふれたアルバムです。しかしアルバム終盤ではいきなり雰囲気が変わり、不安感を煽るような、どことなく不気味な感じで終わっていきます。これは、モチーフとなった小説となにか関連があるのかしら。
M1: I Robot
シンセサイザーによるシークエンスが、曲自体のリズムとはわざと少しずらしてあるため、ちょっとポリリズム風に聴こえるという工夫がされています。キーボードのコード・ストロークの感じがとてもAPPらしい。コーラスも入り、どことなくミステリアスな雰囲気のあるインスト曲。
M3: Some Other Time
パイのとアコースティック・ギターの美しいアルペジオ。ぼんやりと寂しさの漂うやわらかな夕暮れ時から夜にかけてのイメージが浮かびます。バラード風のヴォーカル・ラインですが、バックの演奏はけっこう力強い。歌メロにもバックにも、シンプルだけど印象的なメロディがあります。
M4: Breakdown
ミディアム・スローの、明るい感じのポップス。どこと泣くエキゾチックな雰囲気もあります。後半では混声合唱が入り、哀愁と荘厳さが入り混じります。
M5: Don't Let It Show
これは名曲だと思う。オルガン系のキーボードによる賛美歌風のイントロから、パッヘルベルのカノン風のコード進行の上に寂しげな雰囲気を持った歌メロが乗ります。よく知られたクラシックのコード進行の上に哀愁のメロディを乗せるというやり方は、Procol Harum(プロコル・ハルム)の「A Whiter Shade of Pale(青い影)」に倣ったのかもしれません。やわらかな哀愁のある美しい曲です。
M7: Nucleus
星空しかない草原で、宇宙に想いを馳せながら寝転んでいるような、そんな風景が浮かびます。現われては消える川の流れのようなハーモニーが印象的なインスト曲。
M8: Day After Day (The Show Must Go On)
APPらしい、やわらかなメロディを持った美しくおだやかなポップス。透明感のあるヴォーカル、丸いオーケストレーション、あたたかみのあるコーラス。バックの演奏にわずかだけどエスニックというか、オリエンタルな匂いを感じます。
M9: Total Eclipse
なぜかここからアルバムの印象ががらっと変わります。不安を煽るような不気味なコーラス。サイコ・ホラーやオカルトなどの恐怖映画のBGMぽいオーケストラ。APPのデビュー作に収録されていた「Fall of the House of Usher(アッシャー家の崩壊)」を少し思い出します。
M10: Genesis CH.1 V.32
哀しげな雰囲気の漂うキーボードのアルペジオとコーラス。哀愁を帯びたエレキ・ギターのメロディ。分厚いシンフォニー。アルバム終盤でいったいどんなドラマが起きたのでしょうか。人間とロボットの未来が心配になります。
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