RHAPSODY / SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS (1998)
イタリア出身のシンフォニック・メタル・グループだそうです。いやぁ、これはすごい。
ベースにあるのはHelloween(ハロウィーン)などが一気に世に広めた、いわゆるメロディック・スピード・メタルなのだろうと思います。疾走する高速ギター・リフ、意外とゆったりめでメロディアスなヴォーカル・ライン、ドラマティックに盛り上がる構成など、Helloween
などと同種の匂いがします。
しかしRhapsody(ラプソディ)の場合は、それだけじゃ収まらない。自分が学生時代に親しんだメロディック・スピード・メタルにクラシカル・シンフォニック・アレンジをかぶせ、合唱団も導入し、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの枠を超えた、とてつもなく大仰な演奏をバンド・サウンドに織り交ぜています。構成も複雑で、極端な緩急のつけ方もことさらにドラマティック。派手な緩急はいかにもイタリア音楽らしいと思います。
ヴォーカル・パートに対する演奏パートがけっこう長く、しかも演奏パートではロックというよりもシンフォニック・プログレッシヴやクラシック的な印象が強いのも好ましいところ。そしてところどころに混じるトラッド風味。Skyclad(スカイクラッド)とかちょっと思いだしてしまいました。ヒロイック・ファンタジーをベースにしたコンセプト作のようですが、物語の内容はわからないものの、その雰囲気は非常によくでていると思います。
M1: Epicus Furor
怪しい雰囲気を漂わすストリングスに合唱がかぶります。ファンファーレ風のイントロダクション。
M2: Emerald Sword
M1から続いて演奏されます。スピーディなギター・リフを持った典型的なメロディック・スピード・メタルだと思います。合唱とオーケストラが入り、クラシカルな要素が強く感じられますが、あまり重苦しい感じにはならず、どことなく軽やかなところがプログレッシヴ・メタルやシンフォニック・メタルというよりもメロディック・スピード・メタルっぽいと自分は思うのだけど、どうかしら。
M3: Wisdom of the King
木管2本とリュートかな、クラシカルでファンタジックに始まります。ちょっとトラッドぽい香りもします。そしてキーボードが派手なファンファーレ風メロディを奏でだし、そこにスピーディなギター・リフが重なります。ヴォーカル・パートはけっこう大きめのフレーズを組み合わせてメロディアスに、というのもお約束。クラシカルなフィルインや、どことなくエキゾティックな雰囲気のある間奏も魅力的です。終わり方がちょっとあっさりしてるかな。
M4: Heroes of the Lost Valley
鳥のさえずりと小川のせせらぎ。チェンバロ風のキーボードと木管2本によるバロック風のインスト曲。馬のいななきに続いてモノローグが入ります。
M5: Eternal Glory
ブラス系の音づくりをしたシンセサイザーが戦いの前のファンファーレ風の勇猛なメロディを高らかに奏でます。細かく16分音符を刻むスピーディなギターがそれを引き継ぎ、力強い進撃が始まるかと思いきや、ヴォーカル・パートに入ると一気にスロー・ダウン。この落差に意表をつかれます。その後、4分を刻んでいたリズムが8分に、そして16分にとスピード・アップ。静かでおだやかなパートから徐々にスピーディに盛り上がっていきます。中間部にはロマンティックで静寂さを感じるシンフォニック・パートがはさまれます。アウトロはチェンバロ系のキーボードとフルート、バイオリンでバロック風。
M6: Beyond the Gate of Infinity
風の音と狼の遠吠え。神経質な印象のあるシンセサイザーのアルペジオに力強いエレキ・ギターとドラムが入り、サスペンス・ホラー映画のBGMのようです。Mercyful Fate(マーシフル・フェイト)とかKing Diamond(キング・ダイアモンド)
とかを少し思い出す、どことなく恐ろしげな雰囲気があります。チャーチ・オルガンも導入され、荘厳な響きを奏でます。分厚いコーラスも魅力的。途中には静寂な美しさを感じるパートもあり、とてもドラマティックな構成。
M7: Wings of Destiny
ロマンティックで美しいピアノをバックに少し哀しげに歌われるスロー・チューン。パンパイプやコーラス、オーケストレーションも入り、それなりにドラマティックな演奏になっていますが、歌メロの構成や展開がシンプルで、ちょっと平凡な印象。他の曲がスピーディかつけっこう複雑な構成と激しい緩急による強烈な場面展開を見せる分、この曲の「普通さ」が際立ってしまうのかもしれません。とりあえず、休憩時間ということで。
M8: Dark Tower of Abyss
ストリングス・シンセサイザーによるバロック風のイントロ。ヘヴィ・メタルにクラシカル・シンフォニーを載せたというより、クラシック・オーケストラにヘヴィ・メタルを組み合わせたような印象でしょうか。合唱が深遠に響き、チャーチ・オルガンが荘厳に鳴り渡ります。華やかな哀愁がとてもバロック風?
M9: Riding the Winds of Eternity
分厚くシンフォニックなオーケストレーションによるイントロ。スピーディなハード・ロック部と美しくロマンティックなシンフォニック部の対比がドラマティック。歌メロも雄大な感じです。
M10: Symphony of Enchanted Lands
モノローグから始まります。キーボードによるオーケストレーションとピアノが美しく、ファンタジックですが、どこか哀しい影も感じます。そして突然のチャーチ・オルガン。続くヴォーカルは力強い祈りのよう。分厚いシンフォニーと合唱。ハード・ロック部もこの曲ではそれほどスピーディな感じではなく、むしろミディアム・テンポで荘厳に、シンフォニックに演奏されます。そして静寂のパートは神秘の森の泉のように透明に、美しく。約13分という長尺のなかに緩急をつけたドラマティックな場面転換が続きます。フィドルやパンパイプにヨーロッパのトラッドや神話の世界が垣間見える気がします。
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