STYX / KILROY WAS HERE (1983)
前作『Paradise Theatre』の大ヒットを受け、多くのファンの大きな期待のなかでリリースされた『Kilroy Was Here』。しかし、アルバム冒頭でおそらく大半の(日本人)ファンが「あぁ、やっちまったぁ~(涙)」と崩れ落ちたであろうことがいまでも想像できます。
良くも悪くもこのアルバムはM1「Mr.Roboto」に尽きるように思います。
曲自体は悪くないのですよ。ドラマチック・ポップな構成とメロディ。レトロな未来観を感じさせるコズミックなシンセサイザー。ベース・シンセのデジタル感とパワフルなドラムのアナログ感の対比から生まれる迫力のあるリズム。スペース・オペラっぽいSF感だって、子供っぽいといえば子供っぽいかもしれないけれど、わかりやすいアドヴェンチャーが思い描けて、男の子なら大好きなんじゃないかと思います。
ただ、いきなり「ドモアリガットミスターロボット マタッアッウヒマデー ドモアリガットミスターロボット ヒミッツッヲシリターイ」はないだろうと。しかも冒頭だけでなくサビでも使われ、さらに「ドモッ」の部分がリピートって、すさまじい脱力感です。これまでも、たとえばQueen(クイーン)の「Teo Torriatte」とか、The Police(ポリス)の「De Do Do Do, De Da Da Da」のように歌詞の一部に日本語が使われてて微妙な気分になる曲はありましたが、この「Mr.Roboto」ほどズッコケ感の強いものはそうそうないでしょう。日本語の内容自体がなんじゃそりゃだし、曲のイメージと日本語内容の落差が激しすぎるし。
にもかかわらずこの「Mr.Roboto」が収録曲のなかでもっともかっこよく印象的というところにアルバム『Kilroy Was Here』の残念さが漂います。「Babe」や「Desert Moon」などにも通じるいかにもDennis De Young(デニス・デ・ヤング)らしいM3「Don't Let It End」もヒットはしましたが、甘ったるいポップスでいまいちだし、いかにもJames Young(ジェームズ・ヤング)らしいハード・ロックンロールのM5「Heavy Metal Poisoning」もメロディにはあまり魅力がない。イントロに三味線を使い、ギター・ソロはテープの逆回し風にするといった工夫のあるM6「Just Get Through This Night」や、ほどよい哀愁と美しいメロディでドラマチックに展開しサビのコーラスがちょっと印象的なM8「Haven't We Been Here Before」も、いい線まで行っているのだけど、もうひと展開、もうひと押しが足りない感じだし。
そんなわけでアルバムを聴き終えると、「Mr.Roboto」にあんな変な日本語歌詞を使わず、英語だけで歌ってくれていたならなぁという思いだけが強く残るのでした。ちなみにミスター・ロボット君は「Robot」じゃなくて「Roboto」なのね。日本で使うローマ字表記風にしたんでしょうか。これも微妙...
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