« 関係(BlogPet) | トップページ | 三色そぼろ丼と鴨南蛮うどん@seasondining shun(神楽坂) »

2008/06/06

SIMONE LO PORTO / LA VALLE DELL'UTOPIA (2007)

1974年、ミラノ生まれ(両親はシチリア人)のカンタウトーレだそうです。湖の見える高知の草原に座り込む牛といういかにものんびりした感じのジャケットがなんだか気に入ってしまい、つい購入してしまいました。アルバムに収録された音楽は、ジャケットに描かれた山岳地帯とは違い、どちらかというとビーチ・リゾートぽい印象ですが、平和でのんびりした感じはジャケットのイメージにも通じ、なかなか自分好みです。若いころに中南米や中東、アフリカなどを訪れ、それぞれの地の音楽に親しんだことが、いまの彼の曲づくりや演奏スタイルに影響しているのでしょう。

ベースはフォーク・ポップスで、そこにカントリーやブルースのニュアンスが入り込んでくることが多いのだけど、けっして泥臭くいなたい雰囲気にはならず、どこかのんびりとリラックスした感じがいつも漂います。歌もけっしてうまくはなく、おっさんぽい声でけっこう適当に歌っている感じですが、いい具合に力が抜けていて、おだやかなあたたかさがあり、1960年代とかの歌手みたいに心地いいです。管楽器や女性コーラス、ギター・アンプのトレモロ機能、ハモニカなどの使い方やラテン・フレーバーも古き良き時代のポップスを思い出させ、ゆったりとリラックスした気分になります。33歳のカンタウトーレの作品にしては若さがぜんぜん感じられませんが、その分、時間がゆっくりと流れる地方都市でのんびりと休暇を楽しんでいるような気分になれます。うん、気に入りました。

M1: Fiume in salita
ウッド・ベースとアコースティック・ギターがほんのりジャジー。ギター・ソロはルーズでちょっとアシッドな香りがあり、フルートがうっすらと幻想味を加えたりもしますが、基本はフォークです。

M2: In girasole
クリーン・トーンのエレキ・ギターやドラムのリズムの取り方が、古き良き時代のポップ・ロックといった感じです。あまり流行っていないリゾート地の、陽射しのあたたかいのどかな午後といった雰囲気が漂っています。犬の鳴き声のSEがのんびり感を高めます。

M3: Palme finte e acquari tropicali
フォーク・ギターのアルペジオやクリーン・トーンのエレキ・ギターがカントリー風のポップス。ここでも犬の鳴き声が使われていて、のどかな山間の農村にいるようなイメージが浮かびます。

M4: Niente cambiera'
これもカントリーぽいけど、こっちはフォーク。ブラシを使ったドラムや、やわらかな木管の音色、のんびりしたアコースティック・ギターのストロークなど、穏やかで心地いいです。月の出ている夜の荒野、だけど危険な動物はおらず、心地よい夜風に吹かれながら大地に座り、ぼんやりしている――といったイメージが浮かびました。

M5: La pelle di un pollo onesto
軽快なカントリー風味のフォーク。スリー・フィンガー奏法のバンジョーが入っていないのがむしろ不思議な感じです。ドラムの音が木樽を叩いているみたい。

M6: Postino
60'sやラテンの香りがするフォーク・ポップス。やわらかく、あたたかく、懐かしい感じがします。

M7: Cartulen de paris
古いカンツォーネの香りがします。8分の6拍子で、ウッド・ベースとアコーディオンが印象的です。アコーディオンが入るからといって哀愁が漂うわけではなく、やっぱりのんびりした感じが漂います。

M8: Il vino vien dall'uva
陽気だけどのんびりした感じはラテン・リゾートを思わせます。ぶかぶかと鳴るトロンボーンとホンキートンク調のピアノを聴いていたら、東京ディズニーランドのショーを思い出しました。

M9: Malandrino
イントロはハモニカがやたらとブルージーですが、ヴォーカル・パートに入ると楽しげなフォーク・ロックになります。軽快ながらものんびりとゆるい感じがリゾートぽいです。

M10: Profondo piu' blu
アコースティック・ギターのアルペジオとやさしく響くハモニカ。スローなフォーク・ポップスで、アンプのトレモロ機能を使ったクリーン・トーンのエレキ・ギターなどに古き良き時代の、時間がゆっくり流れていくような感じがあります。ひなびた古いビーチ・リゾートで夜、ハンモックに揺られながら月を眺めているような(そんな経験はありませんが)、おだやかでゆったりした気分になります。

M11: La valle dell'utopia
ボサ・ノヴァのリズムを刻むガット・ギター。丸い音色の管楽器。ストリングスのやさしいオーケストレーション。平和でやさしくあたたかな心持ちになるインストゥルメンタル曲です。あたたかい太陽の下、海の浅瀬でふざけあう若い恋人たちの姿を見ながらビーチに置かれたパラソルつきのテーブルでトロピカル・カクテルを飲む初老の男性を写した写真(動画映像ではない)を微笑ましい気持ちで見ているような、そんな心持ちになりました。


|

« 関係(BlogPet) | トップページ | 三色そぼろ丼と鴨南蛮うどん@seasondining shun(神楽坂) »

音楽」カテゴリの記事

ジャンル:ポップス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: SIMONE LO PORTO / LA VALLE DELL'UTOPIA (2007):

« 関係(BlogPet) | トップページ | 三色そぼろ丼と鴨南蛮うどん@seasondining shun(神楽坂) »