RENATO ZERO / IDENTIKIT (1984)
1950年9月30日、ローマ生まれのRenato Zero(レナート・ゼロ)の、13枚目のアルバムになるのでしょうか。
全部で16曲が収録されていますが、M9「La gente come noi」とM15「Io qui」の2曲のみが新曲で、あとはそれまでのベスト選曲となっています。ただ、たんに以前の録音を集めたのではなく、すべての曲を再アレンジし、Renato Serio(レナート・セリオ)のオーケストラをつけた新録となっています。そのためもあってか、アルバム全体を通して非常に統一感のある仕上がりになっていて、ベスト盤にありがちな飽きがきません。M1「Introduzione」とM16「Finale」は「Io qui」のメロディを奏でるオーケストラをバックにRenatoがMCをしているような内容で、舞台作品のサウンドトラックであるかのような、トータルなストーリーを持ったアルバムのように感じさせます。
全体におだやかで落ち着いた雰囲気があり、ときおりRenatoらしい演劇風なヴォーカルは聴けるものの、際立って印象的な部分は見つけにくいように思います。そのためもあってか、1979年以降リリースのアルバムが続けていたアルバム・ヒット・チャート連続1位の記録をこのアルバムがストップさせただけでなく、最高で16位と、ベスト10にも入らない結果に終わっています。続く1986年の『Soggetti smarriti』
は2位を獲得しましたが、1987年の『Zero』
は最高13位、1989年の『Voyeur』
は最高でも20位と、80年代後半におけるRenato
不遇時代はこの『Identikit』から始まったといえそうです。
とはいえ、ベスト選曲ということもあり、収録された曲はどれもRenatoらしい美しいメロディにあふれていて、それを盛り立てるオーケストラもとてもロマンティック。最近の作風にくらべると多少小粒な感じはありますが、楽曲のメロディや構成はいいし、アレンジも丁寧で、安心して気持ちよく聴いていられます。M7「Mi vendo」などは元気なポップスという印象が強い曲だと思いますが、このアルバムではピアノやホーン、スネア・ドラムのリム・ショットなどのジャジーな演奏とオーケストラをバックにした、ちょっとミステリアスでけだるい感じのアレンジになっています。新曲のM9「La gente come noi」はピアノとオーケストラをバックにしたミディアム・スローのポップスで、木管(オーボエかな)のやわらかな響きや、ほのかにバロック風味のオーケストラがロマンティック。同じく新曲のM15「Io qui」もオーケストラとピアノをバックにしたスローなポップスで、やわらかく、夢見るようなやさしさがあり、徐々にロマンティックに盛り上がっていく流れが心地いいです。
この『Identikit』も含め、1980年代のRenatoのアルバムは現在どれも入手困難になっていますが、このまま廃盤として忘れ去られるのはもったいないです。ぜひ再発してほしい。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 「every little music in my life」最近の更新(2023.08.06)
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- Umberto Tozzi / Io Camminero(2022.07.24)
- Spectrum / Spectrum 6; SPECTRUM FINAL Budoukan Live Sept. 22,1981 (1981)(2022.05.22)
- RockFour / One Fantastic Day (2001)(2022.05.22)
「ジャンル:ポップス」カテゴリの記事
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- 米津玄師 / STRAY SHEEP (2020)(2021.03.18)
- 久保田早紀 / Airmail Special (1981)(2019.02.13)
- Paolo Vallesi / Un filo senza fine (2017)(2018.03.11)
- Riccardo Fogli / Storie di tutti i giorni e altri successi (2016)(2016.11.06)
コメント
始めまして。
基本的な質問で恐縮なのですが、「イタリアの19xx年のアルバムチャートで第x位」みたいな情報は、どうやったら手に入るのでしょうか?
そもそも、どういう種類のヒットチャートがあるのかも分からなかったりします…。
ところでRenato Zeroと言えば、Luciano Pavarottiと競演した "Il Cielo" が好きです。
投稿: blackwatch | 2008/06/27 19:05
イタリアのアルバム・チャートは、AC NielsenとM&D(musica e dischi)が2大勢力?だと思います。ランキングを載せているイタリアのサイトのほとんどは、このどちらかのランク表を引用・転載しているようです。あと、Radio Italiaにもアルバム・ランキングがあるんだけど、ここは別ソースなのかな、NielsenともM&Dともちょっと違ったランキングになってることが多いように思います。
AC NielsenのチャートはFIMIのサイトの「Classifica」ページで見られます。
http://www.fimi.it/classifiche_artisti.php
M&Dのチャートは、以前はM&Dのページで見られたのですが、少し前から登録制になってしまったようで、いまはユーザーIDとパスワードがないと観られません(どうすれば登録できるのか、登録に費用がかかるのかとか、わかりません)。ただ、ネット書店のIBS.itのCDセクションにあるランキングがM&Dのものを流用しているようです。
http://www.ibs.it/cd/fat/fatpge.asp?
Radio ItaliaのランキングはRadio Italiaのサイトで見られます。
http://www.radioitalia.it/radio/classifica.php
過去のランキングについては、どうやって調べればいいのか、自分は知りません。どこかにアーカイブはありそうに思いますが... このエントリに書いた『Identikit』等の順位は、イタリアのWikipediaのRenato Zeroの項に書かれていたものを参考にしました。
なお、月ごとではなく、アルバムの年間売上ランキングについてはHit Parade Italiaというサイトで1965年からのものが見られますが、このデータがなにを基にしているのかはよくわかりません。
http://www.hitparadeitalia.it/hp_yenda/index.html
このサイトでは、シングルについては年間だけでなく月間ランキングも見られます。
RenatoとLucianoが歌った「Il cielo」というと、Pavarotti & Friendsのときのかしら。メロディのゆったりした曲なので、Lucianoの歌声も生かせますね。
投稿: もあ | 2008/06/28 19:54
詳しくご回答いただき、恐縮です。なるほど、AC NielsenとM&Dですか。
"Il cielo"は、まさにそれです。今ならYouTubeにもありますね。
投稿: blackwatch | 2008/06/30 18:13