CICO / NOTTE (1974)
イタリアン・プログレッシヴ・ロックのファンとしてはどうしても元Formula 3(フォルムラ・トレ)のドラマー、という形容詞をつけたくなってしまうCico(チコ)
だけれど、Formula 3
が解散したのは1973年(のちに突然の再活動があったりしますが)で、翌1974年には『Notte』
でソロ・デビューですから、もうソリストとしての期間のほうが長くなりましたね。1980年代からは名前をTony Cicco(トニー・チッコ)
と改め、歌って曲もつくれるドラマーとして活動していたようですが、最近はあまり名前を聞かなくなってしまいました。
彼のアルバムは、ソロ・デビュー作である『Notte』と、おそらく現時点での最新盤であると思われる『Ogni volta che vedo il mare』
(2004年リリース。1997年リリースの『Voce e batteria』を再発したもの)しか聴いたことがないのですが、この2枚、かなり趣が違います。『Ogni volta che vedo il mare』
は軽快でポップなアルバムだけど、この『Notte』
はオーケストラ入りでしっとりとドラマティック。リリース年が古いこともあって、M3「Se mi vuoi」やM4「I cattivi consigli」、M10「Piu'」などはむかしのロマンティック歌謡曲のような雰囲気があります。
また、プログレッシヴ・ロック・グループからソロになって最初のアルバムだからか、ところどころにプログレ風な「なんでもあり感」が垣間見えるのもおもしろいところです。M6「Il prete e il semplice」はいきなりのパイプ・オルガンが妙に大仰で、軽快なポップ感を持つ曲調から浮いてたり、つづくM7「Il gatto di casa」も、なぜかイントロはバロック風の室内楽から始まるのにヴォーカル・パートは飄々としたポップス風というか、ロックンロール風というか、変なバランス感。
M2「Il successo」などは軽快なポップスで、『Ogni volta che vedo il mare』収録曲に近い感じがありますが、しかし『Notte』
全体で印象に残るのは、やわらかくたおやかなオーケストラでしょう。あまり派手にドラマティックに全体を盛り上げるのではなく、比較的おだやかに、抑えめに、要所要所で歌と演奏をフォローする感じに入っているのが好ましいです。M3「Se mi vuoi」でのオーケストラは、まるで明るく澄んだ星空を眺めているようですし、M11「La notte」でも哀しげなピアノにのって語るように始まる歌い出しから一気に場面転換したサビでの感情の高ぶりをオーケストラがみごとにバックアップします。やわらかなピアノのアルペジオと木管、弦の響きが印象的なM5「Il fiore rosa」などもロマンティックな佳曲だと思います。ただ、全体的にちょっとドラムがうるさい感じがするのは、ドラマーの性でCicoが叩きすぎちゃったのかな。
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