SEBA / QUADRI D'AUTORE (2006)
シチリア出身の若手カンタウトーレ、Seba(セバ)ことSebastiano Barbagallo(セバスティアーノ・バルバガッロ)のデビュー・アルバムです。このアルバムではヴォーカル、作詞、作曲のほか、ギターとプログラミングも自分でしています。
若手のカンタウトーレというと、最近はロック色が強いかフォーク色が強い、あるいはアート感覚が強いタイプが多いように思うのですが、Sebaはめずらしく大衆感覚のあるポップス系です。歌メロは素直なメロディを持ったやさしいポップス・タイプだけど、演奏はロック風味があったりラテン風味があったりジャズ風味があったりと工夫があり、それぞれの楽器のアレンジも細部までよく考えられています。けっして強い個性はないのですが、どこかのんびりとした、人のよさそうな歌声が、どんなタイプの演奏でもSebaらしさを感じさせるに充分な求心力を持っています。この先の活動も注目したい、なかなかおもしろい才能を持った人だと思います。
M1: Domenica d'estate
ちょっとアイリッシュぽいというか、Dexys Midnight Runners(ディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ)のヒット曲「Come on Eileen」を思い出させるような可愛らしいヴァイオリンのイントロが印象的。ヴォーカル・パートに入ると、リズムは強めだけど歌メロはほのぼのとしたフォーク・ロック風になり、オーケストラがほどよく厚みをつけます。ときおり入るアコーディオンのフィル・インも心地よく感じられます。どことなくのんびりとしたあたたかさが感じられるのはSebaの歌声の持ち味ですね。
M2: Vento d'africa
曲名は「アフリカの風」という意味でしょうか。タイトルどおり、エスニックぽいパーカッションと、動物の声などのジャングル風SEで始まります。だけどやっぱり歌メロは素直でなだらかで落ち着いたポップな感じです。イントロの雰囲気が歌メロにはあまり影響しないのも、このアルバムの特徴かもしれません。
M3: Nerofumo
エレキ・ギターのアルペジオと重たいベース。ミディアム・スローのポップ・ロックでしょうか。ヴォーカルのうしろにはテープを逆回転させたようなギターの音が聞こえるなど、細かい工夫がありますが、基本的にはシンプルで素直なメロディとアレンジだと思います。演奏は少し力強いけど、ヴォーカルはやっぱりやさしげで丸みがあり、このコントラストがなかなか心地よいです。
M4: C'e' qualcosa nelle donne
管楽器とガット・ギターとラテン風のリズム。南洋の雰囲気を持った、あたたかくて楽しげな曲。
M5: Mentre piove
ミディアム・スローのあたたかいポップス。アコースティック・ギターのストロークとオーケストラ、オルガンが心地よく響きます。少しだけファルセットを使ったヴォーカルが印象的。サビでは演奏が厚くなり、ほんのり哀愁もまじります。この厚さはシンフォニック・プログレッシヴ並み、といったらいいすぎですね。この曲を聴いていると、なんとなく、あたたかい季節の、夕暮れには少し早い、だけど陽射しはゆるくなった時間帯に、ヨーロッパのどこかの海岸を散歩しているようなイメージが浮かんできます。
M6: Minigonna blu
ヴァイオリンとアコーディオン、リズミカルなパーカッションがアイリッシュ・トラッド風? ヴォーカル・パートではバンジョーなども使われ、演奏的にはカントリー風にも感じますが、歌メロにはカントリーやトラッドのニュアンスはなく、軽快なポップスだと思います。全体的に軽快ですが、サビではゆったりしたフレーズになります。どことなくSimone Cristicchi(シモーネ・クリスティッキ)などにも通じる気がします。楽しげな演奏が聴いていて気持ちいいです。
M7: Bravo bambino
8ビートを刻むギターやドラムのイントロがロック風ですが、ヴォーカル・パートはどこかのんびりした感じのあるポップス風です。どんな曲でもやさしげな感じが漂ってしまう歌声は、Sebaの魅力のひとつでしょう。終盤では子供のコーラスが入り、Zecchino d'oro(ゼッキーノ・ドーロ。イタリアで開かれる子供の歌のコンクール)の参加曲みたい?
M8: I ricordi
ガット・ギターとラテン・フレーバーなパーカッションでイントロが始まりますが、ヴォーカル・パートはやっぱり素直なポップス。この曲でのSebaのヴォーカルは、どことなくMax Pezzali(マックス・ペッツァーリ)に似ているような気がしますが、Max
ほどの華やかさはなく、やっぱりどこかのんびりした感じ、育ちのいい感じが漂います。演奏だけ聴けばラテン&スパニッシュのテイストを加えたポップスで、けっこう華やかなのですが、この歌声のために、ほのぼのした印象が残ります。展開部ではオーケストラがメインになり、古いユーロ歌謡風になるのもいい感じです。
M9: Racconti d'estate
ラテン・ポップスを思わせるガット・ギターのコード・ストローク。ピアノやオーケストラの入り方も、歌メロも、ほどよくヨーロッパの哀愁を感じさせます。哀愁があるけれど、どこか楽観的な雰囲気も感じられるのは、Sebaの育ちのよさそうな歌声のせいでしょうか。
M10: Indifesa
ぽろぽろと鳴るピアノが印象的。ピアノとコントラバスを中心にしたジャズ・バラード風の演奏で、都会の夜を思わせる、落ち着いた華やかさともの哀しさを感じます。比較的軽快で楽しげな曲が多かったアルバム前半とはずいぶん印象の違う曲で、余韻を残して終わります。
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