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2008/02/22

ROBERTO SANTORO / L'ELISIR DEL PASSIONARIO (2006)

1972年9月1日、南イタリアのカラブリア州ヴィボ・ヴァレンティア(Vibo Valentia)で生まれた新人カンタウトーレ、Roberto Santoro(ロベルト・サントロ)のデビュー・アルバムです。アーティスト・プロデュースとアレンジメント、一部の曲の演奏でMauro Pagani(マウロ・パガーニ)がかかわっています。このデビュー作をリリースする前は、いくつかのローカル・グループにシンガー、ギタリストとして参加していたようです。

もともとはFabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)Bob Dylan(ボブ・ディラン)に影響を受けてギターを始め、その後はイギリスのニュー・ウェーヴ系グループ、The Smiths(スミス)The Cure(キュア)Depeche Mode(デペッシュ・モード)Nick Cave(ニック・ケイヴ)などに傾倒していったらしいですが、このアルバムで聴かれる彼の音楽はそういったアーティストたちのものとは毛色の違う、ラテン・フレーバーやジャズ・フィーリングがほんのり漂い、やわらかな哀愁を帯びたフォーク・ロックになっています。

メロディ自体はシンプルな感じのものが多く、また、どこかで聴いたことのあるようなメロディがときどき出てきて、オリジナリティの点ではちょっと弱い感じもしますが、個性的なひびわれヴォーカルはなかなか魅力的です。バックの演奏・アレンジにもそれなりに工夫があり、歌メロとヴォーカルに彩を添えています。とくにアルバム前半で多く聴かれるフィザルモニカ(アコーディオン)の音色はいかにも南欧やラテンの哀愁を感じさせ、アルバム前半の個性をつくりあげていると思います。また、数曲で入るトロンバ(トランペット)は心地よいジャズ・フィーリングを曲に与え、これもまた別の個性を表現します。

ちなみに、曲を印象深いものにすることに大きく貢献しているフィザルモニカとトロンバがRobertoと一緒に写っている写真がいくつか、ジャケットやブックレット式の歌詞カードに掲載されていますが、Roberto自身はこれらを演奏していません。なんだよ。

M1. Non credo che sia stato Andrea
アコーディオンの音色と、パタパタしたドラムが、全体の雰囲気をつくっています。軽快だけどヨーロッパの哀愁を帯びたメロディが、ひび割れた歌声によく合います。

M2. Navigante di te
ラテン風のパーカッションと、ガット・ギターの丸い音、それにアコーディオン。いかにもラテン・ポップスな感じのイントロで、このままラテン・ポップスにいくのかなと思ったら、ヴォーカル・パートはラテン・パーカッションはそのままに、ピアノやアコーディオンを上手に生かした哀愁ロマンティックなユーロ・ラテンな曲になります。

M3. Giulia gia' se ne
アコーディオンのイントロはタンゴ風。ヴォーカル・パートでは打ち込み系のリズムとベースが強調されていますが、歌メロ自体はなだらかでほんのり哀愁を持ったポップス系です。アコースティック・ギターやエレクトリック・ピアノの優しい音に対し、おそらくプログラミングされたシンセサイザーがいかにもつくりものっぽい音と演奏なのがちょっと興ざめです。

M4. Il tritacuore
ごくわずかにだけ歪ませたエレキ・ギターの音がロックンロールやロカビリーの時代を思い出させます。ギター・アンプに搭載されたトレモロ機能を使った演奏とかも懐かしい感じです。でもギター以外は現代風で、歌メロなどは最近のR&B系ポップスに近いように思います。

M5. Cesare Pavese
小気味よいドラムと締まった音色のコントラバスが心地よいジャズ・フィーリングを振りまき、軽やかなピアノとミュートをつけたトランペットが都会の夜をイメージさせます。でもサビの部分での演奏は明るい太陽を思わせる地中海風のものになり、その上に哀愁のあるメロディが乗るという、ちょっと不思議な構成が楽しめます。

M6. Il tuo seno
キーボードとアコーディオンでラテン・ポップス風に始まります。ヴォーカルの合間にガット・ギターのフィルインが入り、ラテン風の哀愁がいっそう高まります。歌メロは比較的淡々としていて、歌だけ聴けばミディアム・スローのフォーク・ロック風なのですが、そこにラテン・フレーバーな演奏がかぶさるというアレンジが楽しいです。

M7. Il mistero di Ledia
はっきりしたリズムや、アルペジオ風だったりルートを弾くだけではないベース、細かなフレーズを刻むギターのバッキングなど、現代風なアレンジがされています。曲の前半はメロディよりも言葉の流れを重視しているような感じですが、後半からサビに入ると流れるようなメロディ重視のイタリアらしい感じになります。

M8. L’elisir del passionario
キーボードのオーケストレーションや、フィドルっぽいヴァイオリン、明るくクリアなガット・ギターのアルペジオを上手に生かした、ほどよくロマンティックなミディアム・テンポのポップス。パタパタと鳴るドラムがちょっと雰囲気違いな感じはします。曲の前半はロマンティックで優しい感じですが、後半から終盤にかけて妙に厚くドラマティックになっていき、最後は演劇を思わせるくらい舞台音楽風になるという、ちょっと不思議な構成です。

M9. L'alchimista
ヴィブラフォンのような音色のエレクトリック・ピアノややわらかな音色のホーンがジャズ・フィーリングを感じさせます。ベースやドラムなどのリズムもジャズ・ポップス風です。でもサビ前あたりからなめらかなメロディを持った美しいポップス調になり、サビでは哀愁度が増してイタリアらしいポップスへとなっていきます。

M10. Addio Milano, addio
派手なシンセサイザーのイントロが歌謡ロックぽく感じます。ほのかな哀愁をまとったシンプルなメロディは、もしバックの演奏がスパニッシュ・ギターだったらフラメンコになりそうな感じです。曲の中間部ではひさしぶりにアコーディオンが出てきて南欧・ラテンな味わいを深め、サビでは流れのある美しいメロディがイタリアらしさを感じさせます。バックに聴こえるハープのような音色(Mauro Paganiの弾くブズーキかもしれません)も心地いいです。

M11. Il tritacuore
M4のインストゥルメンタル(カラオケ)ヴァージョンです。

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