BANCO / ...E VIA (1985)
Ricordiレーベルでプログレッシヴ・ロックを演奏していたBanco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)が、音楽市場の時代の波に押されポップスを(ポップスも?)演奏するグループへと変身するためにグループ名をBanco(バンコ)
と短くし、CBSレーベルに移籍したのが1980年。CBSで4枚のアルバムをリリースしますが、この『...E via』
は4枚目、CBSでの最後の作品となります。
もともとバリバリのプログレッシヴ・ロックを演奏していた彼らですから、そう簡単にポップスに転向できるはずがありません。CBSでの初期のアルバムは、ポップスをめざしつつもあちらこちらにプログレッシヴな要素が顔を出してしまう、ある意味で中途半端な、同時にある意味で非常に微笑ましい変なポップスで、これはこれで意外と楽しめます。プログレ・ファンにもポップス・ファンにも受けないでしょうが、プログレ・ポップのファン(ニッチかつコアだ)には受けそう。
しかしCBSでのリリースを重ねるごとに彼らはきちんとポップ化していきます。この『...E via』は、そんな彼らの「ポップス・グループ」としての完成形といえるかもしれません。まるでアメリカのAORを聴いているかのようなメロウなメロディ。都会的で洗練されたサウンド。洒落たシティ・ポップスのできあがり。
でも、これがBancoである必要があるのでしょうか。グループとしての躍動感などはほとんどなく、いかにも時代を感じさせるリズム・ボックスやシンセ・ベースの使い方などはいまでは古くさい感じにしか聴こえない。ヴォーカル・ラインも、なんとなくスムーズできれいなメロディを持っているけれど、ポップスとしての魅力はそれほど高くない。Banco
の曲としては非常にがんばったポップスになっているけれど、ポップス全体のなかでの彼らの曲は、けっしてすぐれているとは思えない。そして演奏は、ポップス曲の伴奏であろうとしたためか、Banco
というグループの持つせっかくの高い演奏力とアレンジ力が活かされていない。
たとえばM4「(When We) Touched Our Eyes」は、ありきたりではあるけれど、美しく魅力的なメロディを持ったイタリアらしいポップスだと思います。M6「Mexico City」や、ボーナス・トラックで1985年のサンレモ音楽祭参加曲「Grande Joe」なども、イタリアらしさは感じないけれど、アメリカのAOR風のポップスらしいポップスだと思います。こういった曲は、曲として悪くはないけれど、でも、これをBancoがやる必要があるのかというと、疑問を感じてしまう。
アルバムの最後を締めるM8「Baby Jane」では、本来のプログレッシヴ・ロックの血が噴き出したのか、いきなりテクニカル・プログレッシヴを思わせるイントロが聴こえてきてびっくりするが、ヴォーカル・パートに入るととたんに甘いAOR風のポップスになってしまううえ、そのつなぎ方がいかにも唐突で、あのテクニカル・パートはなんだったんだ、何の意味があるんだと疑問に感じてしまう。
CBS時代のアルバムには比較的いいイメージを持っているのだけど、このアルバムについては、自分は魅力をほとんど感じられないのでした。
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