FAITHFUL BREATH / FADING BEAUTY (1974)
のちにヘヴィ・メタル・グループとなったそうで、一般的にはそっち方面での認知度のほうが高いらしいドイツのグループ。『Fading Beauty』は彼らのデビュー作で、このアルバムでの音楽はいわゆるシンフォニック・ロックと呼んで差し支えないものといえるでしょう。十字架の前で祈る少女に十字架上のイエス・キリストから光がそそがれているジャケット・アートが、いかにもユーロ風です。
収録曲はM1「Autumn Fantasia」(2つのパートに分かれてます)とM2「Tharsis」の2曲。どちらも20分超の、組曲風のものです。オルガンやキーボード類を中心にギターをバランスよく配置した素直なシンフォニック・ロックだと思います。演奏面でも構成面でも難しいことはやっていませんが、ロマンティックでメランコリックで美しいメロディを連ねていくスタイルは好感が持てます。
ヴォーカル・パートはあまりなく、M1は女性によるスキャットと混声によるコーラスのみ。この女性スキャットが、なんだか自信なさげな歌い方で、音程もどことなく微妙だし、発声も弱い感じなのだけど、これがかえって儚い美しさを表現しているともいえそうです。こういうのも悪くはないけど、個人的にはもっと力のある歌が聴きたかったかな。コーラスもせっかく混声なのに演奏のうしろでアーアーいってるだけで残念。合唱ロックが好きな自分としては、歌詞つきで、もっと前面に出てきてほしかったです。
M2では男性ヴォーカルによるヴォーカル・パートが増えますが、これまたあまり力のないヴォーカルで、頼りないというか、弱々しいというか。神秘の森の奥で妖精の遊ぶ湖を見ているようなM1にくらべ、M2ではリズムが強調され、どことなく妖しい感じや邪悪な雰囲気すらも漂っているので、ヴォーカルにもそれに見合った意志の強さのようなものを期待したかった。
ヴォーカル面での個人的な不満は少し残りますが、作品そのものはシンフォニック・ロックらしい美しさがあり、好ましいと思います。技巧よりも調和と重厚さを意識しているように感じられる作風も、ジャーマン・シンフォらしい印象です。
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