OMEGA / XV. EGY ELETRE SZOL (1998)
ハンガリーの老舗ロック・グループ、Omega(オメガ)の、タイトルから判断するにおそらく通算15作目のアルバム。さすがに「いかにもプログレ」な曲はありませんが、ハンガリーらしい、というか、Omegaらしい、ほどよくひなびた哀愁と随所に散りばめられた美しいメロディが充分に堪能できます。もともと力強いロック・フィーリングも持ったグループですが、30年にわたる活動暦の中で西側的なしなやかさも身につけ、ポップな感覚を持ったメロディアス・ハード・ロックといった感じになっています。
演奏も曲の構成や展開も、あまり難しいことはやっていなくて、むしろシンプルなのですが、飽きや退屈を感じないのは、だいたいどの曲にもキャッチーで印象的なメロディがあるからなのでしょう。これは以前からずっと変わらないOmegaの魅力のひとつですね。それと、やはりハンガリー語の持つ独特の味わい。これもまた彼らの曲に彩を添えています。
M1「Fenymadar」で聴かれる、宇宙空間を思わせるような広がりのあるシンセサイザーやエレキ・ギターは、いかにもOmega的。1970年代のアルバムを思い出させます。スペイシーなシンフォニック・ロック。
M3「Ez Egy Eletre Szol」は少しエレ・ポップ風。1980年代テイストの残像でしょうか。透明な夜空を思わせるようなエレキ・ギターのアルペジオが心地よく響きます。シンプルでやさしいメロディのくりかえしなのだけど、それが飽きを呼ぶよりも印象を深める方向に作用しています。
M4「Megszentelt Vilac」はほんのり哀愁が漂うポップ・ロックで、平凡といえば平凡な、たいしたことのない曲なのですけれど、サビのメロディが印象的。キャッチーさと哀愁が入り混じったシンプルで素直なメロディをつくるのがOmegaってやはり上手です。
M6「Ezredfordulo」はブルージーなエレキ・ギターがメロディを奏でるインストゥルメンタル曲。これはどうかな。ありきたりな感じ。
M7「Boldog Angyalok」はイントロのガット・ギターにヨーロッパの哀愁を感じます。ストリングス・シンセによるアルペジオや味わいのあるヴォーカルなど、哀愁系ユーロ・ポップスのひとつの典型といえそうです。ただ、もう少し気のきいた展開がほしかったところ。
M9「Isten Tudja」はエレキ・ギターのアルペジオをバックに落ち着いたメロディが歌われるロック・バラード系。淡々としたなかにある哀愁や、サビでほんのり明るくなる、だけどやわらかな哀愁は失わない展開など、とてもOmega風。
M10「Miert Beszelsz」のイントロは、松田聖子の「Rock'n Rouge」
みたいだと感じたのは自分だけ? 軽快なポップ・ロックで、メロディにはCesare Cremonini(チェーザレ・クレモニーニ)
にも通じるポップ感があるように思います。でも、そこに西欧とはどこか肌触りの違う哀愁があって、やっぱりOmegaなメロディ。
M11「Legenda」はボレロ風のリズムで始まります。そこにヒューマン・ヴォイスのコーラスと、ぽつぽつとメロディを奏でるピアノ、そして語りが入ります。その後、ピアノの奏でていたメロディをヴォーカルが引き継ぎ、徐々に演奏が厚くなって盛り上がるという、わかりやすくてありきたりではあるけれどドラマチックでやっぱり感動的な構成。サビでは女声合唱と少年合唱(だと思う)も入り、おだやかな明るさと清らかさに包まれます。
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