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2007/10/19

GIANNA NANNINI / PIA - COME LA CANTO IO (2007)

ここ数作のアルバムで、意欲的に新しいスタイルに挑戦しているGianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)。以前はシャウト系ロック姉御のイメージが強く、その力強いしゃがれ声は非常に魅力的なものの、歌い方はけっこう一本調子で聴き続けていると意外と飽きることもあったのですが、最近はただシャウトするだけでない表現力も充分に発揮しています。

このアルバム『Pia』は、ダンテの『神曲(Divine Comedy)』にインスパイアされたポップ・オペラなのだそうです。2008年には舞台での上演も予定されているらしい。イタリアで有名なポップ・オペラというとTito Schipa Jr.(ティト・スキーパ・ジュニア)『Orfeo 9』という作品があって、ストーリーものらしいちょっと雑多な音楽性や役ごとに代わる歌い手などが楽しいのですが、Giannaのこのアルバムにはそういった雑多性のようなものは感じられません。全部の曲をGiannaがひとりで(一部ゲスト・ヴォーカルのようなものありますが)歌っているからでしょう。

演奏面では、オーケストラの導入や、一部で入る少年少女合唱などは、いかにもポップ・オペラ風ですが、リズム・ボックスやシンセサイザーなどのデジタルな音もあちらこちらに配置してあり、ここにもGiannaの新しい音への挑戦を感じられます。Giannaらしいパワフルなロックもありますが、単純なハード・ロックとして曲が完結することはなく、リズム・チェンジや情景転換などを組み合わせて、曲の中で表情が変わるような構成・アレンジがされています。

M1「La divina commedia」はイントロダクション的な位置づけなのでしょう。オーケストラによる演奏と詩の朗読のような語りだけで構成されています。

M2「Dolente Pia」はGiannaらしい軽快なロックにオーケストラをかぶせています。オーケストラ導入に無理やり感がないのが好ましいです。終盤ではソプラノのスキャットがGiannaのヴォーカルのうしろに配置されます。

M3「Mura mura」は少年少女の合唱から始まります。ほのかな哀愁とおだやかなあたたかさを感じさせるスローな曲で、上手に配置されたオーケストラとコーラスがGiannaのヴォーカルをバックアップします。

M4「Non c'e' piu' sole」は、どこか妖しい雰囲気のする演奏がアシッド風? 歌メロはイタリアらしい素直なもので、サビあたりではオーケストラも入り、前半部分の妖しさとはまったく違った雰囲気の美しい演奏になります。アコースティック・ギターでぽつぽつと音が奏でられる間奏がちょっとノスタルジックです。

M5「Contrasto」はディストーションのきいたエレキ・ギターがコードをかき鳴らすハード・ロック。Toshe(トシェ?)という男性ヴォーカリストとGiannaの掛け合いヴォーカルが聴けます。

M6「Le corna」はうにょうにょしたリズム・ボックスがなんだか気持ちの悪い変な曲。これもいわゆるアシッドとかクラブ系音楽とかの雰囲気なのでしょうか(そっち方面の音楽ってぜんぜんわからん)。前半はとくにメロディや歌といった感じではなく、歌詞つきの実験音楽のような雰囲気もあります。後半部では美しいメロディを持った歌になります。

M7「La gelosia」は大仰な絶唱系バラードのように始まります。しかしヴォーカル・パートの後半あたりでバンドが入るとハード・ロックになり、それからまたオーケストラとコーラスをバックにした歌い上げ系に戻る、といった感じで緩急をつけた構成になっています。

M8「Dolente Pia (voce prigioniera)」はミディアム・テンポのロック・バラード系の曲。シンプルだけど印象的な美しいメロディがたくさんあります。Giannaの歌唱も、力強く歌い上げるところと、力を抜いてやさしげに歌うところを、上手に歌い分けています。

M9「Testamento」は、曲そのものはオーケストラをバックにしたおだやかかつ力強くあたたかいミディアム・テンポのロック・バラードで悪くないのですが、曲の調子がM8と少し似ているので、M8からの続きで少し飽きてしまいました。メロディやヴォーカルの魅力もM8より少し劣る感じです。単曲で聴くか、もしくは別の場所に配置されていたなら、もっとよかっただろうなと思います。

M10「Settimanima」はイントロに古いLPのスクラッチ・ノイズのSEを使っています。なのでノスタルジックな曲が始まるのかなと思ったら、その後はリズム・ボックスとシンセサイザーのオーケストレーションを前面に出したデジタルな演奏で、現代的。こうしたら草の演出は、自分はけっこう好きです。

M11「Meravigliati i boschi」も、1コーラスめはバックの演奏で聞こえるのが宇宙をテーマにしたテレビ番組とかでかかりそうな雰囲気のシンセサイザーで、このままコスミックな感じで進むのかと思いきや、2コーラスめからはアコースティック・ギターのアルペジオにバックが変わり、シンセサイザーのヒューマン・ヴォイスによるコーラスも入って、厚みのある演奏に成ります。スローであたたかな感じの曲ですが、歌メロ自体はとくに変化や盛り上がりがなく、単調です。

アルバムを通して聴くと、前半から中盤まではなかなかいいのですが、終盤で少し息切れしちゃったかなという印象で、それがちょっと残念です。ベースになっている物語のないようにも関係しているのでしょうが、最後はGiannaらしいロックを感じさせるパートを持った曲のほうがよかったかなと思います。


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