PROCOL HARUM / HOME (1970)
大ヒット曲の「青い影」を含む(ただし、オリジナルのイギリス盤には未収録)ファースト・アルバム(1967)、名作と名高いセカンド『Shine On Brightly』
(1968)、最高傑作と呼ぶファンもいるサード『A Salty Dog』
(1969)に続いてリリースされた、ある意味でProcol Harum(プロコル・ハルム)
の真価を問われた?4枚目... なのですが、う~ん、微妙です。
印象的なオルガンを奏でていたMatthew Fisher(マシュー・フィッシャー)がグループを離れ、グループ内における演奏楽器の力関係が変わったようで、Robin Trower(ロビン・トロワー)
のブルージーでヘヴィなギターが前面に出てきています。もともとProcol Harum
にはいなたいブルース・ロックやパブ・ミュージック的な要素があるので、それはそれでかまいません。このアルバムでもっとも残念に感じるのは、雑然としたいなたさのなかに紛れ込む英国風の気品やクラシカルな美しさが後退したことよりも、歌メロの魅力が薄いことです。
率直にいって、曲がつまらない。
M1「Whisky Train」やM3「Still There'll Be More」、M5「About To Die」などのブルージーなハード・ロックは、粘っこいディストーション・ギターやぶいぶいいうベースはけっこうかっこいいし、酒場のロック調のピアノも雰囲気があります。でも、演奏は印象に残っても歌メロが印象に残らない。
M2「The Dead Man's Dream」やM4「Nothing That I Don't Know」などは、最初は弾き語り風に始まり、徐々にハモンド・オルガンやリズム・セクションが加わって、後半へ向けて盛り上がっていくというドラマティックな構成になっています。だけど、そのアイデアや演奏のドラマ性に対し、ヴォーカル・ラインのドラマ性、盛り上がり方が追いついていない。M4で聴かれる教会風のオルガンなどは非常に印象的なのに、歌メロに印象的な部分が見つからないのですね。
もちろんGary Brooker(ゲイリー・ブルッカー)の歌声は独特の深みと哀愁があって味わい深いのだけど、その「声」に頼らないとあまり気持ちよく楽しめないというか。たとえばインストゥルメンタルのBGMにしたときに印象的なメロディが見つけられないような、そんな感じなのです。
7分を越す大曲であるM8「Whaling Stories」も、おだやかなパートからだんだんと力強くなり、ハモンド・オルガンとギターも大きくフィーチャーされ、後半では混声合唱も入るなど、楽曲自体は非常にドラマチックに盛り上がっていくし、ヴォーカルも呼応するように力強くなっていくのだけど、そこで歌われているメロディ自体はうまく盛り上がれてないよなぁと感じてしまいます。それでもこの曲は、Robin Trower BandではないProcol Harum(笑)が好きなファンにとって、このアルバムにおける最大の聴きどころであるという点も、ある意味で切ない感じがします。
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コメント
「青い影」を聞いてプロコルハルムのファンになりました。マシュー・フィシャーのオルガンは独特であり、彼にしか出せない唯一無二の世界観だと思います。彼のソロ作品があるというので一度聞いてみたい!
投稿: ボック | 2007/11/23 18:18
Procol HarumでのMatthewのオルガンは、ほんとに素敵な音で鳴っていますよね。
彼のソロ作『Journey's End』でも魅力的なオルガンの音が聴けますけど、導入比率はあまり高くありませんでした。全体に地味なつくりのアルバムでしたよ。
よろしければ↓に、ソロ作の雑感があります。
http://musicapensiero.web.fc2.com/musica/item/uk/FISHER1.html
投稿: もあ | 2007/11/23 18:52