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2007/09/14

MARIELLA NAVA / DENTRO UNA ROSA (2007)

1960年2月3日、Taranto(タラント。イタリア南部の町のようです)生まれのカンタウトリーチェ。1988年にアルバム・デビューし、以後1~2年置きに精力的にアルバムをリリースする一方、Ornella Vanoni(オルネッラ・ヴァノーニ)Eduardo De Crescenzo(エドゥアルド・デ・クレッセンツォ)Renato Zero(レナート・ゼロ)Loredana Berte'(ロレダーナ・ベルテ)Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)などに対する楽曲提供者としても活躍します。2007年にリリースされた『Dentro una rosa』は、Mariella Nava(マリエッラ・ナーヴァ)の13枚目のアルバムになるようです。

たくさんのアルバムがあるMariellaですが、自分はこれまで2~3枚しか聴いたことがなく、曲の感じがアルバムごとにけっこう違ったもので、イメージがうまく確立できません。基本的にはロマンティックな曲を書く人かなと思うのですが、意外と力強いロックなども歌うようだし。Amedeo Minghi(アメデオ・ミンギ)と「Futuro come te」をデュエットした頃のアルバムなどはかなりエレ・ポップ風という噂も聞いています。

幅広い曲想を持っているらしいMariellaですが、この『Dentro una rosa』ではきわめて王道的といえそうな、ドラマティックに盛り上がるイタリアン・ポップスをたっぷり聞かせてくれます。緩急豊かな構成と印象的なメロディ、サビでの歌い上げなど、いわゆるカンツォーネ的な要素がたっぷりありつつも、転調を上手に使い、意外性はあるけれど不自然さのないメロディ展開をするなど、非常にモダンでセンスの良いものになっていて、作曲家としての豊かな才能を感じます。またシンガーとしても、低めでわずかにひび割れたような力強い歌声には独特の存在感と説得力があり、哀愁漂うメロディを歌ってもべたべたと甘くなりすぎず、非常に好ましいです。

M1「Dentro una rosa」は、メロディアスなヴォーカルに豊かなオーケストラがかぶさり、極が進むにつれ徐々に盛り上がっていくという、典型的なイタリアン・ポップス。カンツォーネの香りがたっぷりしますが、1コーラスのなかで細かい転調が繰り返されるところに現代技巧を感じます。ひとつひとつのフレーズそのものはシンプルなので歌うのも簡単そうに感じるけれど、通して歌うのはけっこう難しそうなメロディ展開だと思います。

M2「Preludio」はタイトルどおりの前奏曲。オーケストラだけで演奏される小曲です。

M3「Via della poesia」もオーソドックスなカンツォーネ風ポップス。厚いオーケストレーション。のびやかなサビのメロディ。徐々に盛り上がる構成。どれも王道的で、安心して聴いていられます。なのに古臭さを感じさせないところが魅力的。Mariellaの歌声も、キンキンしたり浮ついたところがなく、力強く存在感たっぷりです。

M4「Un treno」は汽車のSEで始まります。リズム・ボックスとシンセ・ベースが使われ、テクノ・ポップ風に始まりますが、サビではゆったりとした大きなメロディが現われ、イタリアらしいポップスになります。

M5「Fade out」もなかなか気のきいた曲。どこか歌謡曲ぽいイントロから語りっぽいヴォーカル・パートに入ります。それがだんだんとなだらかなメロディに乗りはじめ、サビに向けてどんどんと盛り上がっていく展開は、まさにイタリア。もちろん厚いオーケストレーションも美しく鳴り響きます。どことなく寂しげで哀しげな雰囲気があるところも、古き良き時代のカンツォーネ・ポップスを思い出させますが、古臭さは感じさせないところに作曲の妙を感じます。

M6「La piazza」でもリズム・ボックスを使ったテクノ風の演奏が聴けます。この感じ、どことなくFranco Battiato(フランコ・バッティアート)に似てるような気がします。少しはにかんだ笑顔を見せるようなAメロから、明るく開放的だけど人影は少ない秋の夕暮れの海を見るようなサビへの展開が印象的です。

M7「Spendi qualcosa per me」は落ち着いた感じの、カンタウトーレぽい曲調。ちょっとオーケストラがうるさく感じられます。シンプルで淡々としたメロディに味わいが感じられるので、もっと弾き語りに近いアレンジでもよかったように思います。あたたかく懐かしい感じから少し寂しげな哀愁へとつながるメロディ・ラインが心地よいです。

M8「Gli ultimi」ではガット・ギターの音色がやわらかく響きます。前半のメロディ、なにかの曲に似てるのだけど、思い出せません。サビで力強く盛り上がるのはお約束。

M9「Vita sui capelli」はオールド・ファッションドなロックンロール。ピアノ、エレキ・ギターが軽快に演奏されます。オルガンの使い方やサキソフォンのソロなどもノスタルジック。

M10「Guarda giu'」はピアノとオーケストラの落ち着いた感じで始まります。歌詞の語感を生かしたシンプルでやさしいメロディ・ライン、楽しげななかにふっと寂しさやさりげない哀愁が入り混じる構成など、非常に上手につくられている曲だと思います。

M11「La strada」はアコースティック・ギターのコード・ストロークとキーボードのオーケストレーションを中心にしたカンタウトーレぽい曲。歌メロも淡々としていてカンタウトーレ風ですが、サビのメロディはどことなく近年のClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)とかに似てるような気がします。

M12「Portami con te」は、なんとなくElton John(エルトン・ジョン)の「Your Song」を思い出させます。出だしのメロディやコード進行が似てるのでしょうか。やわらかであたたかいヴォーカル・ラインが続き、この分だときっとサビでは大きなメロディでイタリア風に盛り上がるのだろうなと思いきや、サビ前で転調してちょっとひっかかるようなメロディを持ってくるところが意外性があっていい感じです。

M13「Finale」はタイトルどおり、オーケストラ(キーボードだと思う)のみの演奏による終曲。最後にひと言セリフが入ります。

このあとにゴースト・トラックがあります。波打ち際のSEとアコースティック・ピアノ、薄めのオーケストラに包まれた、静かでスローな曲です。サビではカンツォーネ風に歌い上げ、哀愁を振りまきます。



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