LUCA BONAFFINI / NESSUNO E' SCOMPARSO (2007)
1962年10月28日生まれ、マントヴァ(Mantova)出身のカンタウトーレ。自分はLuca Bonaffini(ルーカ・ボナッフィニ)のアルバムを、この『Nessuno e' scomparso』も含めて3枚持っているのだけど、CDショップで彼の名前を見かけることはほとんどないし、イタリアのポップス関連ニュース等で彼の名前を見かけることもめったにないので、めちゃめちゃマイナーな人なのだと思ってました。
でもバイオグラフィを見たら、1984年にカンタウトーレとして活動を始め、その2年後の1986年にはPremio Rino Gaetano(1981年に亡くなったカンタウトーレ、リーノ・ガエターノの名前を冠した、才能ある新人発掘のための音楽祭)で「最優秀作曲家」として優勝してました。
アルバム・デビューはさらに2年後の1988年で、その後、セカンド・アルバムまでは5年、サードまでは3年のブランクがあったものの、1996年リリースのサード・アルバム以降は1999年の6枚目まで毎年アルバム・リリースをしています。それから少し活動がゆっくりとなり、7枚目となる前作『Treni』が2002年、そして5年ぶりにリリースされた8枚目がこの『Nessuno e' scomparso』となります。
自分がこれまでに聴いたことがあるアルバムは1997年の『Prima di oggi era gia' domani』と2002年の『Treni』。『Prima di ~』はRiccardo Cocciante(リッカルド・コッチァンテ)やClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)
といったイタリアの有名シンガーたちの曲をカバーしたもの、『Treni』は彼のオリジナル曲集でしたが、J.D.Souther(ジェイ・ディ・サウザー)
にも通じるような、ささやかな幸福を感じさせるフォーク・ソングといった感じで、こうしたあたたかみのあるフォーク・タッチが彼の持ち味なのだろうと思っていました。
しかしこの『Nessuno ~』は、フォークというよりはジャズ・ポップス。演奏面ではアコースティック・ピアノを前面に出し、曲によってはウッド・ベースやブラシを使ったドラムなども導入されます。これまでに自分が聴いたことのある彼の作風とずいぶん違うので、ちょっと戸惑いましたが、デビュー当初はジャズ・ブルースなどを演奏していたらしいので、Luca的には新しい挑戦というよりも原点帰りなのかもしれません。
ぜんぶで17曲が収録されていますが、ヴォーカル入りの曲は半分の8曲。それらヴォーカル入りの曲のあいだにピアノだけで演奏される1分弱程度の小曲がはさまれるという構成になっています。
M1「Il Taglio」はウッド・ベースとピアノが心地いい、おだやかであたたかいジャズ・ポップス。丸みのあるやさしい歌声は、Fabio Concato(ファビオ・コンカート)やNino Buonocore(ニーノ・ブォノコーレ)
などにも通じそうです。
M3「Il Collezionista」はジャズをベースにしたオールド・ファッションドなポップス風。ピアノとウッド・ベース、ブラシを使ったドラムの奏でる音色からは、ほのかな哀愁が漂います。
M5「L'Architango」ではピアノとウッド・ベースにパーカッションが加わり、ほんのりラテンの雰囲気があります。むかしのラテン歌謡とか、ムード・ミュージックみたいな感じです。
M7「L'Acchiappamosche」もおだやかであたたかいポップス。エレキ・ベースや華やかめのパーカッションに対し、花のあいだを飛び回る蝶のような可愛らしいピアノの対比が楽しいです。Lucaのやわらかく丸い歌声も曲によくあっていて、平和で幸せな感じがします。
M9「Il Biografo」ではイタリアらしいおだやかなラップ風味が取り入れられています。やわらかな明るさとあたたかさがあります。サビのあたりのメロディが自分は気に入っています。
M11「Il Pentito」はタンゴ風味を少し持ったラテン・ポップスといった感じ。秘めた情熱と哀愁を感じます。こうした古いポップス風味は聴いていて心地いいです。
M13「Il Conte」も古いヨーロッパ歌曲風に始まります。ピアノによる弾き語りで、おだやかで、静かで、ほんのりした哀愁がいかにもヨーロッパ風ですが、リズムが入るパートからはなぜか50'sや60'sを思わせる、明るく楽しげな曲調になる構成がおもしろいです。
M15「Lo Strizzacervelli」もピアノ中心の静かでおだやかなジャズ・ポップス。この曲を聴いていて思ったのですが、Lucaのヴォーカルは微妙に音がはずれてる気がします。そのはずれ加減が丸い声とうまく作用して、むしろ安心感を出してるのかもしれません。
M17「Van Gogh」もラテン・フレーバーのあるおだやかなジャズ・ポップス。どことなく妖しい美しさを振りまくピアノは、ゴッホの画風を表現しているのでしょうか。ここでもLucano丸くて少しかすれたあたたかい声が心地よく響きます。
各曲の間に挟まれるピアノ小曲もそれぞれに心地よい響きを持っていますが、なかでも、小鳥がさえずり遊んでいるような可愛らしさを感じるM4「Interludico」、細かいパッセージ少し攻撃的に始まり、だんだんと踊るような楽しい感じへと変わるM8「Interludico Grigio」、ヨーロッパの古い街角を思わせる感傷的なM10「Interludio Celeste」あたりが印象的でした。
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