DISCUS / 1st (1999)
Discus(ディスクス)のセカンド・アルバム『...Tot Licht!』(2003)は、とんでもなくすごい作品で、インドネシアン・プログレあなどりがたし!と非常にびっくりしたものです。先にこの超絶なセカンドを聴いてしまったこともあってか、このデビュー作は意外と普通というか、まだまだ未完成・未成熟というか、そんな印象を受けます。
10分超の組曲を含む全9曲が収録されていますが、曲ごとの印象はけっこうまちまちです。ハード&テクニカルなシンフォニック・プログレッシヴあり、軽快なジャズ・ロックあり、女性ヴォーカルをメインにしたウォーミーなジャズ・ヴォーカル系ポップスあり。曲の感じにあわせて演奏もテクニカルだったりハードだったりジャジーだったりしますが、エレキ・ギターだけはだいたいどの曲でもディストーション・サウンドで妙にハード・ロック風なのが、なんだかおもしろいです。
M1「Lamentation & Fantasia Gamelantronique」はオリエンタルでエキゾチックな男声スキャットから始まります。なんとなく「イヨマンテの夜」とか思い出しました。その後、テクニカルで妖しげな演奏に突入。混沌としたPremiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)
のような、あるいはテクニカルなOsanna(オザンナ)
のような印象を受けます。フルートがどことなくイタリアン・プログレッシヴ風だからでしょうか。でもキーボードはイタリアンというよりはジャパニーズ・プログレの匂いがするように感じます。終盤にはガット・ギターによるスパニッシュなテイストも入ります。
M2「For This Love」は女性ヴォーカルによるジャズ風ポップス。ドラムはブラシを使っています。いなたいオルガン・ソロが入ったあとは、アコースティック・ギターとフルートで透明感のある演奏パートへと続くあたり、やはりプログレッシヴ系の構成です。その後はさらにエレアコ、サックスのソロへとつながっていきます。
M3「Doc's Tune」はヘヴィ・メタリックなエレキ・ギターの入るハードなジャズ・ロック・プログレッシヴといった感じでしょうか。Colosseum II(コロシアムII)などに通じるところもあるように思います。ディストーションの効いた2本のエレキ・ギターがユニゾンでメロディを奏でるパートはスピーディでスリリング。その後はエレキ・ギターのソロ、キーボード・ソロ、管楽器(クラリネット?)のソロへとつなぎ、テクニカルなジャズ・ロックを聴かせてくれます。
M4「Condissonance」ではアコースティック・ギターとヴァイオリンをメインにした演奏に、バス・クラリネットの音色が乗ります。現代音楽風の室内楽といった雰囲気があります。
M5「Dua Cermin」は爽やかで軽快なポップス。サーと鳴る乾いたシンセサイザーの音づくりや半アルペジオ風に奏でられるエレキ・ギターなど、ちょっと古い感じのポップ・ロックを思わせます。フルートのソロ・パートでは一瞬プログレッシヴな匂いを漂わせますが、続くエレキ・ギターのソロは普通にポップなハード・ロック風。
M6「Wujudkan!」は、古いキャバレーなどのクラブで演奏されるようなジャズ・ポップスをハード・ロック・グループの編成で演奏したような感じでしょうか。華やかでノスタルジックな歌メロとパタパタしたドラムに、どことなく「上海バンスキング」のような匂いを感じますが、ベースはぶいぶいと鳴りエレキ・ギターはメタリックな音色なのが微妙なマッチ感でおもしろいです。
M7「Violin Metaphisics」はタイトルからも想像できるように、エレキ・ヴァイオリンをメインにしたインストゥルメンタル。広い海や夜空を思わせるゆるやかな調べを奏でます。シンフォニックでやわらかな曲想はMarcus Viana(マーカス・ヴィアナ)にも通じるところがあるかなと思いつつも、メロディはどことなくオリエンタルでエキゾチックなのがやはりインドネシア?
M8「Anugerah」は品のいいクラブなどで歌われそうな女性ヴォーカルのジャズ・ポップス。少しくすんだ感じのヴァイオリンの音色が世俗のあたたかさを感じさせます。クラリネットのやわらかなソロも心地よく、ハイハットやシンバルを多用したドラムや、スムースなフレーズを奏でるベースといったジャジーな演奏も楽しげです。でもなぜかエレキ・ギターはやっぱりディストーション・サウンドでハード・ロック風。
M9「Contrasts」は6つのパートからなる組曲。エレキ・ギター弾きまくりでヘヴィ・メタル風に始まりますが、一転してオリエンタルな妖しさを振りまくフルートによる静かな場面へ。恐ろしげに鳴りつづける低音(なんの楽器だろう?)。引きずられるように音が流れていく鐘(グロッケン?)。そこへキーボードの細かいアルペジオが聞こえてきて、テクニカル・シンフォニック風へと展開したかと思うと、すぐにエレキ・ギター中心のハードなロックへ、そうかと思うとフルートがリードを奏でるメロウなシンフォニック・プログレへと、場面がどんどんと変わります。そして終盤へ向け、テーマ・メロディをサポートするバックの演奏は徐々にハード・シンフォ風に。素朴な音色の木琴のソロ、サキソフォンのソロ、キーボードのソロ、サキソフォンとキーボードの掛け合いと、リード楽器が移り変わるソロ・パートも、やわらかくおとなしいものから徐々にスピーディでスリリングなものへとなっていき、加熱したところでやさしく美しいヴァイオリンがリードをクールダウン、だけどバックの演奏はかまわずハードに、パワフルにという、やりたい放題な感じのアレンジが楽しいです。
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