BIJELO DUGME / BITANGA I PRINCEZA (1979)
ヨーロッパのポップス界や映画音楽の世界で頻繁に名前を見かける作曲家、Goran Bregovic(ゴラン・ブレゴヴィッチ)がリーダーを務めていたボスニア・ヘルツェゴビナのロック・グループ。主に1970年代から80年代にかけて活動し、東欧では人気があったようでアルバムも十数枚リリースされています。
1979年にリリースされた『Bitanga i princeza』は、スタジオ作としては4枚目、ライヴを含めると5枚目の作品で、Bijelo Dugme(ビジェロ・ドゥグメ)ファンのあいだでは一般に彼らの代表作と呼ばれているようです。基本的にはハード・ロックなのですが、ところどころで東欧らしいひなびた哀愁が入り混じり、かと思うと不思議なエキゾチシズムも感じさせたりして、なかなか聞かせます。バラード系の曲はメロディや構成がシンプルだけどヴォーカルに味があり、けっこう沁みます。
ちなみにBijero Dugmeとは英語に直すとWhite Button(白いボタン)という意味だそうです。ファースト・アルバムのジャケットでも女性の左胸のあたりにやけに大きく白いボタンがありましたが、このアルバムでも女性の左耳の下にまるでイヤリングのように大きな白いボタンが描かれています。
M1「Bitanga i princeza」はブルージーなハード・ロック。エレキ・ギターのシンプルなバッキングやオルガンの音が懐かしく感じます。終盤にはスキャットが入り、ヨーロッパの哀愁が漂います。樽を叩くようなドラムの音は、いかにも古い録音という感じで、よくもあり、悪くもあり。
M2「Ala je glupo zaboravit' njen broj」はスピーディなハード・ロック。なんとなくJudas Priest(ジューダス・プリースト)とか思い出しました。イントロではキーボードがエキゾチックで妖しいメロディを奏でます。
M3「Ipak pozelim neko pismo」はちょっと土着リズム風のドラムに乗ったオルガン入りハード・ロックといった感じでしょうか。中間部には静かな演奏パートがあり、そこからエレキ・ギターのソロへと続くあたりはプログレッシヴ・ロックの香りがします。
M4「Kad zaboravis juli」ではパイプ・オルガン系の音づくりをされたキーボードとエレクトリック・ピアノに乗って哀愁のメロディが歌われ始めます。サビ前でアコースティック・ギターのアルペジオが入ってくるとCockney Rebel(コックニー・レベル)の名曲「Sebastian」風になり、哀愁度が高まります。さらにサビではオーケストラが入り、ドラマティックに盛り上がりますが、そのまま哀愁メソメソ路線に進むのではなく、少しの希望を感じる明るさのあるメロディになるのが非常に好ましいです。このサビのメロディはいかにもユーロピアンなシンフォニック・ポップス風ですね。ブラスのアレンジがぶかぶかと垢抜けないのが残念ではあります。
M5「Na zadnjem sjedistu moga auta」は一転して歌謡曲ぽいロック。古くさい女性コーラスの使い方とか、最近ではめったに聴かれないハンド・クラップの導入など、時代を感じます。キーボードの奏でるユーモラスというかコミカルというか、ちょっと妙なメロディもちょっと脱力ものです。
M6「A koliko si imala do sad」もいまとなってはオールド・スタイルですが、シンプルでストレートなハード・ロックで、かっこいいと思います。オルガンも入ってほどよく哀愁も漂わせているし、途中にはセリフのコラージュがあったりと、それなりに構成に気を配っているのも好ましく感じます。
ラストのM7「Sve ce to mila moja prekriti ruzmarin, snjegovi i sas」は、このアルバムのハイライトでしょう。オーケストラの演奏で映画音楽のように始まります。Aメロはアコースティック・ギターのアルペジオをバックにとつとつと歌われます。そして、サビ。ドラマチックなメロディが力強く歌われ、オーケストラがその哀愁をサポート&フォローします。いかにもシンフォニック・プログレッシヴ系バラードらしい曲です。後半のサビでは薄いながらもヒューマン・ヴォイスによるコーラスがかぶさり、哀愁度&ドラマチック度をいっそう高めます。東欧らしい名曲。
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