BANCO / BUONE NOTIZIE (1981)
Ricordiレーベルを離れCBSへ移籍しての第2弾。いかにもイタリアらしいプログレッシヴ・ロック・グループだったBanco del mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)がグループ名を短くBancoだけに改め、ポップ・ミュージックに挑戦し、あえなく散っていった(笑)、プログレッシヴ・ファンのあいだでは長く「Banco不遇の時代」といわれていたころのアルバムです。
初期3作や『Come in un'ultima cena(最後の晩餐)』のような音楽を期待すると、思いっきりびっくりします。だって、あのBancoが、なんだか妙にダンサブル。どの曲も5分程度とコンパクトで、軽快なリズムと明るいメロディ、派手な音色のキーボード、Bancoにしてはめずらしく?前面で主張するロックなギターなどが、彼らの「ポップ・フィールドの曲だってできるんだ」という思いを表わしているように感じます。
でもね、純然たるポップ・ミュージック(ってなんだ?という気はするが)にはね、やっぱりなってないというか、なれていないというか。微妙に中途半端です。中途半端なんだけど、それでは曲や演奏に魅力がないかというと、これが意外といい感じなのですわ。プログレ遺伝子がほんのり見えてしまうポップ・ロック気持ちは思いっきりアメリカよりなのよだけどイタリア人の血もやっぱり隠しきれないの、といった微妙かつ不思議なバランス感覚のうえでタイトかつ軽快なリズムと明るくあたたかなメロディがこんにちは... といった印象なのです。そしてこれが、なんだか妙に微笑ましい。
サイレンのようなキーボーで始まるM1「Taxi」から、これってBanco?な印象炸裂です。エレ・ポップ風のリズムに乗って、さびあたりからはすっかりダンサブルですから。いきなりびっくり。
M2「Canzone d'amore」は、明るく乾いた感じがあるけれど、エレキ・ギターのバッキングや、粘っこいけどさっぱりしているギター・ソロなど、かなりハード・ロック風。サビのあたりのメロディ、なんかの曲に似てるのだけど、思い出せません。アメリカかイギリスのハード・ロックにこんな感じのメロディがあったように思うのだけどなぁ。
M3「Si, ma si」も「プログレッシヴ・ロックのBanco」からは想像もつかないような曲。シンセサイザーのコード・カッティングを中心にした軽快なポップ・ロックで、途中ではヴォコーダーを通したヴォイスまで入ります。10~20年位前のアメリカのポップ・チャートとかに入ってても自分は驚かないです、たぶん。
M4「Buonanotte, sogni d'oro」はイントロがミディアム・テンポで重たい感じ。ピアノのフレーズがBanco風? ヴォーカル・パートは力強くシリアスな感じに始まりますが、サビではあたたかみのあるメロディになります。ほどよく都会風味もあって、イタリアン・ポップスとしてなかなかよくできた曲だと思います。
M5「Baciami Alfredo」はホンキートンク調のピアノが楽しげ。ギターやサキソフォンも活躍し、派手で華やかで雑多な感じのするポップスになっています。イギリスの古いポップ・ミュージックとかにちょっと似た香りがするかな。
M6「Michele e il treno」はピアノをメインとしたバラード風に始まります。中盤からはヴォーカルが力強くなり、演奏自体にもリズム感が出てきます。シンセサイザーの音づくりが鋭く尖った感じなのが自分の好み的にはちょっといただけないのですが、ほどよく広がりと奥行きを感じさせるメロディ・ラインやアレンジは好ましいです。あと少しポップになりきれない感じも、むしろ微笑ましい。
M7「AM/FM」は3分弱のインストゥルメンタル曲。イントロはシンセサイザー・プログレ風でしたが、曲自体はハード・ロック風のエレキ・ギターが中心になって引っ張っていきます。途中ではエスニックぽい打楽器や派手な音色のキーボードも入ります。
M8「Buone notizie」は、カリビアンというか、南洋リゾートぽいというか、明るく可愛らしい音色とメロディを奏でるキーボードのバッキングが楽しい。ヴォーカルも明るくあたたかみのあるメロディで、リズムも軽快。たとえばハワイアン・フェスティバルみたいなお祭り会場で演奏されていても違和感がなさそうな、爽やかで楽しげなポップスです。
ポップスとしてはけっして成功していないけど、プログレッシヴ・グループとしての高い演奏力と優れたアレンジ能力を上手に抑えつつコンパクトで明るくあたたかく楽しげなメロディを追求した結果、一風変わった魅力を持ったものができましたという感じ。自分はこのアルバム、なかなか気に入ったのですが、ストレートなプログレ・ファンやポップス・ファンにはすすめにくい感じだし、プログレッシヴ・ロックとしてのBancoファンにもすすめにくい感じはします。
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