« 石焼ハンバーグ@まゆきら(神楽坂) | トップページ | Monteregio di Massa Marittima = Soldimela / Tenuta Moraia »

2007/06/14

PFM / SERENDIPITY (2000)

PFMといえばいまも活動を続けるヴェテランであり、ユーロ・プログレおよびイタリアン・ロック界におけるトップ・グループのひとつです。だけど自分にとっては、あまり興味を持てないグループのひとつであったりもします。『Per un amico』とか『Chocolate Kings』とか、好きなアルバムもいくつかあるにはあるのだけど、たとえば新譜が出たり来日が決まったからといって、ワクワクそわそわドキドキするグループではありません。

その理由のひとつには、ヴォーカルの弱さがあるのかなと思っています。歌メロ自体があまり魅力的じゃないし、専属ヴォーカリストがいないこともあってかヴォーカルそのものも弱め。演奏力は高いしアレンジもいいのだけど、あまりヴォーカル=歌には力を入れていないという印象があるんです。そのため、高い演奏力とアレンジ力を活かしたプログレッシヴ・ロックをやらせたら上手だけど、ポップ・センスはかなりきつい、という印象も持っていました。とくに『Miss Baker』とか、自分にはどうしたら楽しめるのかわからないくらいにきつい。なので、往年のプログレ期(1970年代)以外のPFMには、ほとんど興味がなかったのです。

でも、この『Serendipity』を聴いて、ちょっと印象が変わりました。

2000年にリリースされたこのアルバムは、自分が好きになれなかったPFMらしい?曲もいくつか残ってはいるけれど、アルバム全体の印象としては非常に力強くかっこいい「ロック」を感じるのです。あいかわらず演奏力が高くてテクニカルで、華麗なだけでなく重厚感があります。こういった重さって、自分のなかのPFMの印象にはほとんどなかったもの。

そして、少しびっくりしたのがヴォーカル。以前と同じくFranz Di Cioccio(フランツ・ディ・チォッチォ)が主に歌っているのですが、彼、いつの間に、こんなに声が出るようになったのでしょうか。いつの間に、こんなに力強く、かつ味わいのある歌が歌えるようになったのでしょうか。このアルバムに収められた曲からは、「ヴォーカルが(メロディも歌い方も含めて)弱い」という印象をほとんど受けないのです。

華麗で力強い演奏と、聴かせるヴォーカル。ひさしぶりに「やっぱりPFMっていいかも」と思えるアルバムでした。

M1「La rivoluzione」はPFMらしからぬ?重厚感のあるミディアム・ロック。少しサイケデリックな風味もあるように感じます。重くて音の密度も高いのだけど、ずるずるにならずにキレがあるところはさすが演奏力の高いPFMといったところでしょうか。そして、そのパワフルな演奏にヴォーカルが負けていないところが自分にとっては少し衝撃的(大げさ)。以前のPFMは演奏のパワーにヴォーカルが打ち消され放題な印象が自分には強く、それが非常に不満だったのですが、この曲では力強いヴォーカルが堪能できます。

M2「KNA-kaleidoscope neutronic accelerator」では中近東風の妖しい雰囲気をいくぶん振りまきつつ、サビの部分ではいかにもイタリアン・ロックらしいメロディになります。この曲もほのかなサイケ風味と力強さ、それに高い音密度を感じます。M1もそうでしたが、なんとなくフィンランドのKingston Wall(キングストン・ウォール)にちょっと感じが似てるかもなぁとか思います。

M3「L'immenso campo insensato」は明るい太陽を思わせるようなアコースティック・ギターのストロークで始まります。ほんのり地中海の香りがするところが、むかしからのPFMの持ち味といえそうです。ストリングスも入り、いかにもイタリアらしいメロディで構成されています。とくにサビからのメロディは、美しさとドラマティックさとほのかな哀愁があって、とても自分好みです。

M4「Nuvole nere」では曲の前半にヴェンチャーズ風のクリーンなトーンのエレキ・ギターが入るおもしろい曲。ヴォーカルも演奏もスカスカで淡々としています。でもサビではコーラスも入り、演奏にも厚みがでてきます。

M5「Ore」はクリーン・トーンのエレキ・ギターとリズム・ボックスのイントロが、もしかしたらPFMも流行りのR&B風ポップスをやろうとしているのかと警戒させましたが(自分はR&B風ポップスが嫌い)、ヴォーカルが入ると淡々としたカンタウトーレ風の曲になって安心しました。曲の前半はおだやかな感じで、サビからは力強い歌で盛り上がるというスタイルは、いかにもイタリア風です。ギターは泥臭いブルース風で、Massimo Bubola(マッシモ・ブボラ)などの泥臭系カンタウトーレに通じるところがあるかもしれません。

M6「Automaticamente」はイントロが往年のシンセサイザー・プログレみたい。でもヴォーカルが入るとけっこう普通のポップ・ロックになっていきます。PFM風デジタル・ロックといった感じなのでしょうか。コーラスが爽やかで、Acqua Fragile(アックア・フラジーレ)とか思い出しました。

M7「La quiete che verra'」ではついにメロトロンが投入されます(サンプリングかもしれません)。重く、どこかダークさも感じさせるヴォーカル・ラインを持ったミディアム・スローの力強いハード・ロック。ほんのりプログレッシヴ・ロックの香りがあります。冷たいメロトロンの音色が美しく、イタリアよりもブリティッシュ風かもしれません。それもあってか、なぜかNWOBHMの名バンドと誉れ高いDiamond Head(ダイアモンド・ヘッド)のアルバム『Canterbury』が思い浮かんだのですが、似てるところがあるのかどうかは思い出せません。

M8「Domo dozo」は構成やアレンジに工夫を凝らしたテクニカルなハード・ロックといったところでしょうか。曲の感じが『The Outer Mission』をリリースしたころの聖飢魔IIに似てる気がします。途中で入る語り?が妙にたどたどしい英語でちょっとおもしろいですが、曲自体にはあまり魅力を感じません。歌メロが弱いという往年のPFMらしさ?が残った曲です。

M9「Polvere」のイントロは、アコースティック・ギターとフルートが夕暮れの風景を思わせます。あいかわらずFranco Mussida(フランコ・ムッシーダ)の奏でるアコースティック・ギターは魅力的です。ヴォーカル・パートに入っても、都会風の小洒落た美しさとほのかな哀愁があり、アダルトな雰囲気です。うっすらとメロトロンも入ります。イタリアというよりは、アメリカのAORぽい曲で、PFMもこういう曲を上手につくれるようになったのだなと思ったりして。自分の好きなタイプの曲ではありませんけれど。

M10「Sono un dio」はPFM風のハード・ロックでしょうか。演奏はうまいのだけど、ポピュラー系のロックとしてはキャッチーさが足りません。メロディもありきたりで、あまり魅力を感じません。これもM8同様、歌メロが弱いという往年のPFMらしさ?が残った曲だと思います。

M11「Exit」は、このアルバムのプロデュースとアレンジを担当したCorrado Rustici(コッラード・ルスティチ)が奏でるギターを中心としたインストゥルメンタル。ゆったりしたリズムに乗って、美しく、あたたかく、ほどよくスリリングにギターが歌い、バックの抑えた演奏が広がりを演出します。2分27秒と短いですが、なかなかいい感じのシンフォニック・プログレッシヴ風な曲です。


|

« 石焼ハンバーグ@まゆきら(神楽坂) | トップページ | Monteregio di Massa Marittima = Soldimela / Tenuta Moraia »

ジャンル:ロック」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33532/15428274

この記事へのトラックバック一覧です: PFM / SERENDIPITY (2000):

« 石焼ハンバーグ@まゆきら(神楽坂) | トップページ | Monteregio di Massa Marittima = Soldimela / Tenuta Moraia »