FABIO CONCATO / FABIO CONCATO (1982)
1977年にデビューし、いまも活動を続けているミラノ生まれのカンタウトーレ、Fabio Concato(ファビオ・コンカート)の4枚目のアルバムです。自分が持っているのは日本盤CDで、ジャケットが日本独自デザインのイラストになっていますが、オリジナルの顔写真アップよりこのほうがいいな。
少しくぐもったような丸くてやわらかくて甘い歌声で、あたたかく美しいメロディを歌います。Fabioの曲って、派手さはないけれど、非常にいいメロディを持ったものが多くあります。そして、やさしいジャズ風味。Paolo Conte(パオロ・コンテ)
ほどシリアスだったりSergio Cammariere(セルジォ・カンマリエーレ)
ほど感傷的だったりすることなく、Pino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)
やNino Buonocore(ニーノ・ブォノコーレ)
などの南伊シンガーほど地中海風だったりアメリカ風だったりすることもなく、ほどよくロマンティックでほどよくセンチメンタルでほどよくおだやかなジャズ風味がとても心地いいです。
全体に、ひところ日本でも流行ったジャズ・ヴォーカル・ブームのころの音楽に似てる感じがします。阿川泰子とか、マリーン
とか、やたらとかかっていましたよね。このアルバムのリリースと年代的にほぼ同じころのようなので、世界的にこういった感じだったのかしら。そうしたソフトなジャズに、AORとイタリアン・ポップスがゆるやかにまじりあっているような、そんな雰囲気。
どの曲もいい感じですが、やはりM1「Domenica bestiale」は名曲だと思います。やわらかなエレキ・ギターのコード・カッティングにのって歌われる、あたたかくおだやかなメロディ。サビでのメロディはいかにもイタリアっぽいおおらかな美しさを持ちつつ、押し付けがましくなくさらりとしているところがFabioの持ち味でしょうか。
M2「Sulla strada romagnola」ではジャジーで軽い演奏が、南洋のリゾートを思わせるようなゆるい楽しさとあたたかみを感じさせます。
M3「Berlacca」は少しダークな雰囲気があって、このアルバムのなかでは傾向がちょっと違うかも。いなたいブルース感覚も見え隠れし、1960年代から70年代あたりのアメリカのロックを思い出したりしました。
M4「Canto」ではアコースティック・ギターのコード・カッティングにピアノのコード・ストローク、ブラシを使ったドラムによるスローなジャズ風の演奏が聴かれます。お酒と煙草と薄暗いバーが似合いそうな曲で、Paolo Conteが歌ったら渋いジャズになりそう。Fabio
が歌うと、やわらかくあたたかいジャズ・ヴォーカル風になりますね。
M6「Disonesta」はフォーク・ロック風のリズムと可愛らしいメロディを持ったポップス。かわいらしい花の咲く草原の中を小さな男の子と女の子が手をつないで歩いているような、とことことした音符のつながりが、なんだか微笑ましいです。
M7「Una casa al mare」は、キーボードの使い方や音づくりが1980年代から90年代くらいのアメリカのポップスみたいな雰囲気。派手な音で派手なコードを鳴らしています。Umberto Tozzi(ウンベルト・トッツィ)の「Gloria」
とかに近いでしょうか。ホーン(シンセのシミュレーションかも)も入り、軽快な曲に仕上がっています。メロディとかもアメリカっぽく、自分の好みとはちょっと違います。
M9「Un piccolo vecchio amore」では、フロント・ピックアップを使ったエレキ・ギター(セミ・アコかな?)の甘いクリーン・トーンが印象的。エレクトリック・ピアノのやわらかな音色と、サキソフォンのおだやかな演奏も、ひだまりのようなFabioのヴォーカルを淡く彩ります。やさしいジャズ・ポップスといった感じで、とても心地よいです。
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