ALDO NOVA / ALDO NOVA (1982)
1982年、「Fantasy」という曲でアメリカのヒット・チャートに彗星のように現われたカナダ出身のマルチ・ミュージシャン、Aldo Nova(アルド・ノヴァ)。Novaという名前どおり、当時は期待の超新星と話題になったものでしたが、やはり彗星のように、こちらに向かってくるとき以外はたいして話題にならず、気がつくと音楽シーンのメイン・ストリームからいつのまにかいなくなってましたとさ。
このアルバムは、話題となった「Fantasy」をアルバム冒頭に収録したAldoのデビュー作。良くも悪くも1980年代のアメリカン・ロック的な曲というか、そのころに学生時代をすごした洋楽ファンには懐かしい『ベストヒットUSA』でいかにも紹介されそうな感じの曲ばかりが収録されています。明るく爽やかで、元気で、ほどよく都会的な洒落た感じや哀愁があって、きれいに歪ませたエレキ・ギターが小気味よいリフを刻み、ちょっと薄いけれどきらびやかなキーボード・サウンドが彩りを添える。あぁ、なんてイタリアン(カナダ人だけど)。
彼はギターとキーボードを演奏するだけでなく、たしか作曲とプロデュース、エンジニアリングも自分でしてたように思うのだけど、それゆえか、全体にAldoらしさがいきわたっているというか、細部まで丁寧につくりこんだのだろうなぁというのが感じられると同時に、意外とこじんまりした枠の中に納まっちゃってるなぁという印象も受けます。曲調やリズムなどにはそれなりのヴァリエーションがあるのだけど、どれも粒が揃いすぎてて、スリリングさに欠ける感じ。その粒も、どちらかというと小粒だし。
彼の弾くギターがバックでもソロでも大きくフィーチャーされている曲が多いのですが、あの時代のギタリストはみんなそうだったのか、それともAldoが几帳面な性格なのか、ギター・ソロで奏でられる音符がどれも生真面目に拍と小節にきれいにオン・リズムで並んでいて、これもまたスリリングさを欠く要因になっているように感じます。逆にいえば、非常に素直なフレージングとリズムどりで、安心して聴いていられるとはいえるのだけど、もう少しシンコペーションとかリズム崩し、ポリリズム的な要素がロックのギター・ソロにはほしいなぁと思ってしまう。
そういった生真面目さは歌メロや全体の構成にも感じられて、どれもわかりやすく、非常に素直。そこがあのころのアメリカン・ロック(カナダ人ですが。しつこいな。笑)のよさ、楽しさでもあるのだけど、曲が素直で単純な分、たとえばサビとかに一発で印象に残るようなキラー・メロディがほしいところ。残念なことにAldoの曲には、キャッチーで印象的なキラー・メロディが不足気味で、それがこのアルバムを「当時よくあったアメリカン・ロック」の中に埋もれさせてしまっているように感じます。
このアルバムの後もAldoは音楽活動を続け、自身のアルバムは5枚ほどあるようですが、どちらかといえばプレイヤーやソングライター、プロデューサーとしての活動が中心になっているようです。Jon Bon Jovi(ジョン・ボン・ジョヴィ)やCeline Dion(セリーヌ・ディオン)のアルバムなどで彼の名前を見つけられるらしい。
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