SIMONE CRISTICCHI / DALL'ALTRA PARTE DEL CANCELLO (2007)
サンレモ音楽祭2006のインターネット中継で「Che bella gente」を聴いたときに「この人、ここ数年でデビューしたイタリアの新人のなかで、もっとも才能にあふれたカンタウトーレかもしれない」と感じたのですが、デビュー・アルバム『Fabbricante di canzoni』(2006)はその期待を裏切らないものでした。実際、サンレモ初参加となる「Che bella gente」は2006年のサンレモ音楽祭新人部門優勝曲となりました。
そして翌2007年、今度は「Ti regalero' una rosa」でコンペティション部門に参加し、総合優勝。この曲は、曲だけ聴いている分にはそれほどいいものに自分は感じないのですが、歌詞の意味がわかると、また評価も変わってくるのでしょう。このサンレモ音楽祭2007優勝曲を収録したSimone Cristicchi(シモーネ・クリスティッキ)のセカンド・アルバムが『Dall'altra parte del cancello』です。
今回もSimoneは、その才能を幅広く聴かせてくれます。デビュー・アルバムでは後半に少し息切れしちゃった感じがしないでもなかったですが、今作は最後までSimoneのヴァラエティ豊かな音楽世界が楽しめます。
M1はなんと、Toto Cutugno(トト・クトゥーニョ)の「L'italiano」。Totoのベスト盤には必ず収録されるし、Toto自身も何度かセルフ・カヴァーしている、非常に有名な曲です。これをSimoneはどういうふうに聴かせてくれるのかと思ったら、予想もしなかったラップ・ヴァージョンでした。Aメロ、Bメロは歌詞をラップで口ずさみ、サビのみメロディに載せるというアレンジは、Claudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)がライヴ盤『Attori e spettatori』で聴かせた「Poster」を思い出させます。率直にいって、こういうアレンジは自分は好きではありません。
サンレモ参加曲のM2「Ti regalero' una rosa」も同様に、サビの部分だけメロディがあって、あとはラップというつくりが自分の好みとは合わないのですが、ラップ部のうしろで鳴っているアコースティック・ギターのアルペジオが哀しく寂しい音色で、胸にしみます。
M4「Monet」(M3「Laureata precaria」だったかな)ではボサノヴァのやわらかなリズムが心地よく、M8「Il nostro tango」ではタイトルどおりタンゴの華やかなリズムを聴かせてくれます。
M5「Non ti preoccupare giulio」は黒っぽいブルースを感じるハード・ロックで、一瞬Aerosmith(エアロスミス)の「Walk this way」とか思い出したり、楽しげなM7「L'italia di piero」ではMove(ムーヴ)とかPilot(パイロット)とかElectric Light Orchestra(エレクトリック・ライト・オーケストラ。ELO)とかにも通じそうな古いブリティッシュ・ポップス風のやわらかさを感じたり。
そうかと思うとM9「Nostra signora dei navigli」は変なエレ・ポップ風の曲で、サビにメロディはあるものの、それ以外はなんだかしゃべっているだけのような、かといってラップというわけでもないもの。そういえばデビュー作にも「Telefonata per l'estate」という、電話でふたりがしゃべってるだけという変なものがありました。このあたりもSimoneならではといえば、ならではなのかな。
こういったさまざまなヴァリエーションがありますが、やはり個人的に耳に心地よいのは、M6「Legato a te」やM10「La risposta」のような、やさしいフォーク・タッチの曲。Simoneの丸くて、どこか寂しげなところもあって、現実感の薄いような歌声は、こういった曲に乗ることで一層「独特感」が増すように思います。
最近の若手(1977年、ローマ生まれだそうです)のアルバムにしては収録時間が短めでコンパクトなところも好感が持てます。
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