IL LATITANTE / DANIELE SILVESTRI (2007)
2007年のサンレモ音楽祭参加曲「La Paranza」を収録したアルバムです。
1994年にアルバム『Daniele Silvestri』でデビュー。このアルバムは、その年のPremio Tenco(故Luigi Tencoの名前を冠した音楽コンクール)で最優秀作品賞を取ったそうです。それもあってか、1994年、1995年と続けてサンレモ音楽祭の新人部門に参加。その後も1999年、2002年、2007年と、折々でサンレモに出ています。またアルバムも、だいたい2年後とのペースでコンスタントにリリース。2007年の『Il latitante』は、彼にとって8枚目の作品(ライヴ・アルバム含む)になります。
自分はこれまで、彼のアルバムはデビュー作しか聴いたことがなく、そのときの印象で、どちらかというとロック系のカンタウトーレだと思っていたのですが、サンレモ参加曲のM3「La paranza」は軽快なリズムを持ったラテン・ポップスといった感じで、かなりビックリしました。メロディもユーモラスで楽しく、カリブなどの南のリゾートを思わせる(実際に行ったことはありませんが)陽気でダンサブルな曲で、まさかDanieleからこんな音楽が出てくるとは思ってもいませんでした。M2「Faccia di velluto」ではボサノヴァのリズムを刻むアコースティック・ギターに乗っておだやかで明るいメロディが歌われ、これも予想外。フルートやトランペットの響きもあたたかい感じです。
とはいえ、さすがにアルバム全体にこういった雰囲気があるわけではなく、他の曲はカンタウトーレふうだったりロック風だったりするのですが、どれもどこかしらストレートではない感じのアレンジやメロディがあり、悪くありません。
M1「Mi persi」はピアノとギターのアコースティックな響きが印象に残る、感傷的な曲。寂しく、哀しい感じがします。M9「Ninetta nanna」は古いカンツォーネや初期のころのカンタウトーレが歌うバラードなどを思わせる、素直でシンプルな美しいメロディを持ったスローな曲。ほんのり甘く、やさしく、あたたかく、とてもイタリアらしいと感じます。
M4「Il suo nome」ではシンセ・ベースとリズム・ボックスで一時のニュー・ロマンティックを思い出しましたが、そこにアコースティックな要素とジャズ風味もほんのりとふりかけられていて、都会風の小洒落た感じがします。ポップでダンサブルで軽やかです。M7「Gino e l'alfetta」もデジタルな要素がある軽快なロックで、すかすかしたキーボードやシャカシャカしたリズム・ボックスが歌謡曲っぽいチープな楽しさを感じさせます。メロディはけっこうなだらかで明るく楽しげです。
M5「Sulle rive dell'Arrone」やM6「Io fortunatamente」は、David Bowie(デヴィッド・ボウイ)とかが歌っていそうというか、歌ったらかっこよさそうな感じ。スロー~ミディアムのフォーク・ロック風で、でもけっこうギターの音色などは粘っこく歪んでいたりして、メロディにはノスタルジックな香りがあります。
M8「A me ricordi il mare」はラップ風のヴォーカル・パートもあり、最近のイタリアン・ポップスといった感じの曲。デジタルっぽいリズムとアコースティック・ギターの自然な音色が対比を見せ、おだやかでゆっくりした歌メロとシャカシャカしたせわしないパーカッションも対比を見せるといったアレンジが楽しめます。
アルバムを構成する個々の曲はけっこうヴァラエティがあり、印象もまちまちなのですが、曲の並べ方がうまいのか、アルバムとしてばらけてしまった印象はあまり受けませんでした。なかなか面白い作品だと思います。
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