VINICIO CAPOSSELA / CANZONI A MANOVELLA (2000)
Vinicio Capossela(ヴィニツィオ・カポッセラ)の音楽って、どういう人が聴くのかなぁ。ベースはジャズ風のカンタウトーレなのだろうけれど、他のジャズ風カンタウトーレのように洒落た感じや渋いかっこよさがあるわけではないし、常にジャズっぽいわけでもない。ノスタルジックなジャズ・ポップス風だったり、優雅なサロン音楽風だったり、場末の酒場音楽風だったり、妙に前衛的だったり。さまざまな要素が入り混じって、独特のVinicio
音楽をつくってる。
こういうの、いわゆるポップス・ファンやジャズ・ファンには、どう感じられるのだろう。ポップスやジャズのファンが好む音楽の範疇からはみだしちゃっているように思うのだけど。こういった「なんでもあり」な音楽を好むのは、プログレ系のファンかなぁとも思うのだけど、プログレ・ファンはプログレ・ファンで「プログレ」じゃないと興味を示しにくい部分があるから、やっぱり好む音楽の範疇からはみだしちゃってるように思う。
でも最近、自分は気に入っているのだな、Vinicioの音楽。
この『Canzoni a manovella』にも、なんだかとらえどころのない、つかんだと思ったらすでに違うところへ逃げていたような、不思議なVinicio
の魅力がたっぷり。基本は少しノスタルジックな雰囲気を漂わす、ジャズの要素が残った「古き良き時代」のポップス風なのだけど、曲によってはオーケストラを導入し、優雅に、クラシカルに、古のヨーロッパ社交界のイメージ(あくまでも自分にとってのイメージ)を醸したり、軽快なマーチ風だったり、なぜか「青い山脈」
を思い出すフレーズがあったり、アヴァンギャルドやプログレッシヴな雰囲気を匂わせつつ実はのんびりと楽しげなカントリー風だったり、どことなく「踊るリッツの夜」風だったり、猥雑で世俗感たっぷりの酒場音楽風だったり、古いテレビのミステリー・ドラマの挿入歌風だったり、舞踏会風だったり。こういった要素が、曲ごとに披露されるのではなく、1曲の中で数種類が組み合わさって、独特の個性をつくりだしてる。ヴォーカルも、渋いジャズ・ヴォーカル風かと思えば酒場のシンガー風でもあるし、なぜか蛙のようなゲロゲロした声で歌ってたりすることもあるし。
とらえどころがないのだけど、でも、彼の歌に「人を拒絶するような感じ」はまったくなくて、むしろ心はいつも開かれているような感じを受ける。向こうから積極的にこちらには寄ってこないかもしれないけれど、こちらから寄っていけばいつだってすんなりと受け入れてくれそうな、そんな感じ。そこがまた、自分には可愛らしく、好ましく思われるのだなぁ。おもしろいアーティストだし、おもしろいアルバムだと思います。
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