NICCOLO' FABI / NOVO MESTO (2006)
ここ最近、自分のなかで急激に評価を上げてきているNiccolo' Fabi(ニッコロ・ファビ)。デビュー当時の軽いデジ・ポップ風味が抜け、ゆるやかに、たおやかに、おだやかに、やわらかに、あたたかに、どことなく夢想的な非現実感を漂わせるアーティスティックな、しかしポップ感を失わない作風が、とても自分の好みをくすぐります。
現時点でスタジオ作としては最新盤となる『Novo mesto』も、どことなく力の抜けた感じにふわふわしたヴォーカルとやわらかい演奏の合間に見えるアーティスティックな感性が心地よいアルバムです。
M1「Novo Mesto (L'aria intorno)」はアコーディオンのやわらかい音色とアコースティック・ギターの軽やかなコード・ストロークが心地よいゆるやかな曲で、リラックスした感じの歌声がよく合います。
M2「Oriente」はバックで鳴りつづけるハンド・クラップが印象的。どことなく古いニュー・ウェーヴ(変な表現ですね)のようでもあり、独特の浮遊感と幻想的な雰囲気もあって、アーティスティックです。
M3「Mettere le ali」のイントロは、陽だまりに座っているような、あたたかくて優しい気持ちになります。やわらかなフォーク・タッチのポップスですが、アコースティック楽器の使い方にはアーティスティックなセンスを感じます。ときどき響くフルートの演奏には、往年のイタリアン・プログレッシヴ・ロックの匂いがするかも。
M4「Costruire」はちょっといなたくて泥臭いフォーク風に始まります。重い演奏と哀しみのメロディ。でもNiccolo'のふわふわしたやわらかい歌声が、重苦しく沈んだ感じになるのを防ぎます。サビでは長調に転調し、哀しみや苦しみからの解放や明るい希望の光といったものを感じさせます。また、サビの部分や曲の終盤ではストリングスが演奏に厚みをつけ、シンフォニック・プログレの匂いが漂います。エレクトリック・ピアノの演奏も、往年のイタリアン・バンドを少し思い出させます。
M5「Rapporti」は、ピアノの小曲のようなイントロに続いて、やわらかなアコースティック・ギターのストロークによるゆったりとしたフォーク・ソングになります。ときどき聞こえるバンジョーがのんびりした雰囲気を出しています。
M7「Evaporare」も明るくやわらかで優しい感じのポップス。なんというか、彼の歌声にはあまり生活感がありません。夢想の世界に漂っているよう。それがとても心地よく感じます。
M8「La bellezza」はヴァイオリンの独奏で始まります。ヴォーカルは切なく寂しげ。だけど哀しみに打ちひしがれているわけではなく、ときには希望や喜びの光が差し込むように、たおやかでやさしい演奏が差し挟まれます。曲の後半ではリズムが強まり、ヴァイオリン・ロック風な印象も出てきます。
お父さんがClaudio Fabi(クラウディオ・ファビ)だからということではないのでしょうが、演奏のところどころに、たとえばPremiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)やIl volo(イル・ヴォーロ)
、Derilium(デリリウム)といった往年のイタリアン・グループの影がうっすらと横切る気がします。基本はやわらかく優しい感じのポップスですが、けっして力を込めて熱唱しない弱々なヴォーカルが醸しだす浮遊感と、ときに幻想味を加えるアート感覚の演奏が、平凡なポップスで終わらせない独特の個性を表現していると思います。うん、いいアーティストになりましたね、本当に。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 「every little music in my life」最近の更新(2023.08.06)
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- Umberto Tozzi / Io Camminero(2022.07.24)
- Spectrum / Spectrum 6; SPECTRUM FINAL Budoukan Live Sept. 22,1981 (1981)(2022.05.22)
- RockFour / One Fantastic Day (2001)(2022.05.22)
「ジャンル:ポップス」カテゴリの記事
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- 米津玄師 / STRAY SHEEP (2020)(2021.03.18)
- 久保田早紀 / Airmail Special (1981)(2019.02.13)
- Paolo Vallesi / Un filo senza fine (2017)(2018.03.11)
- Riccardo Fogli / Storie di tutti i giorni e altri successi (2016)(2016.11.06)
コメント
昨日CASA BIANCAでこのCDとTizianoとRAF、どれにしようか迷ったんですよね・・・
結局このCD買わずじまいでした。
しまったなぁ・・・
投稿: ぷんと | 2007/01/05 18:24
その三択だと、自分にはNiccolo'以外の選択肢はないな。RAFに多少迷うかもしれんけど。
ちなみに、このCDがぷんとくんの好みに合うかどうかは、なんともいえませんですぅ。だってNiccolo'、金髪ふわふわではあるけれど、グラマラス&セクスィーな女の子じゃないよ。
投稿: もあ | 2007/01/05 21:30
>グラマラス&セクスィーな女の子じゃないよ
こちらの系統のイタリアは最近ネタ切れなので。
買ったのはRAFとTizianoとSimona Benciniという女性歌手。Tizianoは早速イタリア語のセンセが持っていきますた。
Simoneはグラマラス&セクスィーではありませんが、おねーさま系で結構好みのタイプです。
曲は昔のMatia Bazarの曲にも聞こえるかな???
でもNiccoloを買わなかったのは後悔。
投稿: ぷんと | 2007/01/07 00:25
Simona Benciniって、一部で「イタリアのドリカム」とか呼ばれたDirotta su cubaのヴォーカリストだった人ですよね。ソロになってからの曲は聴いたことがないのだけど、Dirottaの曲調は、もしかしたらぷんとくんの好みに合うかもしれません。軽快なファンク・ポップス路線といった感じですけれど。
投稿: もあ | 2007/01/07 19:01