ANTONELLA RUGGIERO / L'ABITUDINE DELLA LUCE (2006)
2007年のサンレモ音楽祭出場も決まったAntonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)の、2006年のアルバム。現時点のスタジオ作品としては最新作となるのかな(その後にライヴ・アルバムが1枚リリースされてます)。
2000年以降のAntonellaは、いわゆるポップ・フィールドの音楽と、室内楽団をバックに従えたクラシカルな要素の強い音楽の、2種類の活動をしているようです。2001年に室内楽バックの『Luna crescente [sacrarmonia]』、2003年にポップ作品の『Antonella Ruggiero』、2004年に室内楽バックのライヴ盤『Sacrarmonia live [il viaggio]』、サンレモに参加した2005年にジャズ・オーケストラをバックにしたポップ作品『Big Band!』と、室内楽→ポップ作品→室内楽→ポップ作品のパターンができているようで、今回は室内楽編となりました。
率直なところ、初めて『Luna crescente [sacrarmonia]』を聴いたときは、こういったアプローチへのチャレンジは評価するし作品クオリティとしても悪くないと思う一方で、このスタイルがAntonellaのヴォーカルに合っているのか、天からの才を与えられたAntonella
の歌の魅力を最大限に引き出せるものなのか、少し疑問を感じていました。演奏によるクラシカルな要素は魅力的なものの、Antonella
の歌はまだポップ・フィールドにずっと近いところにありましたし、収録曲もこのスタイルになじみきってはおらず、いくぶん中途半端でチグハグな印象を受けたのを記憶しています。
この『L'abitudine della luce』では、そういった中途半端さ、チグハグさがなくなり、アルバム全体が物語を持った1枚の絵のように、もしくは、統一されたテーマとストーリーに沿って美術館の壁に飾られた何枚もの絵をひとつひとつ鑑賞しているような、まとまりの中にある広がりと奥行きを感じます。
室内楽団の演奏によるサロン・ミュージックのようにおだやかでクラシカルな装いが全曲を通して心地よく響き、それと調和するようにAntonellaの伸びやかでカラフルな歌声が印象的な旋律を奏でます。歌い方はやはりポップ・フィールドのものですが、『Luna crescente [sacrarmonia]』のときよりもずっと落ち着いた感じになっていて、Antonella
らしい個性を存分に発揮しながらもクラシカルな演奏との親和性が高まっています。収録曲の半分近くがインストゥルメンタルということもあり、作品全体がたおやかでクラシカルな空気とアート感覚に満ちているのですが、とっつきにくくなることなく、ある種のポピュラリティを失わずにいる点が魅力的です。
インスト曲もヴォーカル曲も、どちらも心地よい旋律と音色が惜しみなく奏でられ、非常に豊かで落ち着いた気分になれます。でもやはり、「歌」好きな自分としては、Antonellaの魅力的な歌声が堪能できるヴォーカル曲に愛着を感じます。とくにM3「Un lungo tratto di strada」とM6「Strada nel bianco」は文句なしの名曲でしょう。伸びやかでカラフルな、でも落ち着いた歌声が、イタリアらしい柔らかな哀愁のメロディを奏でる、アート感覚の高いM3のたおやかさ。Antonellaらしい個性的な歌い回しを存分に聴かせ、やわらかな哀愁を漂わせながらも、やさしく包み込むようなあたたかさと愛情に満ちているM6の心地よさ。何物にも代えられません。
やはりAntonellaの歌声は素晴らしいな。2007年のサンレモも楽しみになってきました。
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コメント
う~ん、すごく良さそうですね。テレビでやっていたクリスマスコンサートで、おそらくオペラ歌手と思われる東洋人女性と歌ったのですが、アントネッラの方が断然うまいと思いました。そのときアントネッラのクラシックもいいなぁと。
やっぱりサンレモが楽しみです!
投稿: なこ | 2007/01/11 23:11