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2006年9月3日 - 2006年9月9日

2006/09/08

ANDREA ORI (2006)


1977年11月6日ミラノ近郊デシオ(Desio)生まれで、2006年のサンレモ音楽祭新人部門に参加し、早い段階で選考から落ちたAndrea Ori(アンドレア・オリ)のデビュー・アルバムです。サンレモ参加曲はこれといって聴きどころのないつまらないものでしたが、アルバムのほうは力強いロックが多く収録されていて、それなりに楽しめます。

M1「Oggi no」は冒頭から厚みのある力強いロック・リズムが重く響き、ひび割れたというよりは喉になにか絡まったような感じの少し濁った歌声とよく合います。途中には美しいスロー・パートが入り、アクセントの役割を果たしています。こういったミドル・テンポのロック・チューンが、彼の持ち味のように感じます。

M2「Nel tuo mare」は2006年のサンレモ音楽祭参加曲。スケール感のあるバラード路線を狙ったのかもしれませんが、メロディも構成も展開も単調かつ平凡で、ぜんぜん印象に残りません。2006年のサンレモ参加曲のなかでもかなりつまらない部類に入る曲でしたが、このアルバムのなかでもかなりつまらない曲だと思います。だけどシングル・カットされてるんだよな。

M3「Non li spengo」は重たいリズムに乗って歌われるスローなロック。やはりこういう曲のほうがAndreaのヴォーカルには合います。濁った感じの力強い歌声と、ブルージーなギター。この曲に限りませんが、Andreaのロックにはイタリアの匂いはほとんどせず、イギリスのロック・シンガーのような重さがあります。

M4「Nel mio mondo」もミディアム・スローのロック。クセのあるヴォーカルが歌い上げるメロディ・ラインは美しいのだけど、その美しさはやはりイタリアのものではないように感じます。

M5「Forse era meglio」も力強いロック・チューン。ここまでの曲はソロのロック・シンガーのものといった印象が強かったのですが、この曲はエレキ・ギターのリフやアレンジなどがとてもバンド風です。

M6「Dove vai」はアコースティック・ギターの弾き語りによるロック・バラード。これまでのように力いっぱい歌い上げるのではなく、声の濁り具合はそのままですが、いくぶん楽な感じで、やさしく歌っています。それがほんのりとセンチメンタルな雰囲気を漂わせます。

このあたりからアルバムの性格が変わってくるようで、前半の、いかにもロック的な力強さが後退し、後半はロック系カンタウトーレ的な味わいになってきます。

M7「Con qualcosa di piu'」はピアノとギターの弾き語り風に始まります。序盤は抑えた感じですが、サビに向けてリズムやオーケストラが入り、スケール感のあるバラードへと展開します。非常にロック・カンタウトーレぽい曲ですが、バックの演奏の中(とくにギター)にわずかにプログレッシヴ・ロックの匂いがするように感じるのは、気のせいでしょうか。

M8「C'e' ancora」はミディアム・テンポのロック・カンタウトーレぽい曲。

そしてアルバム最後を飾るM9「In paradiso」。ミディアム・スローなロック・カンタウトーレ曲ですが、ほんのりとアイリッシュ・トラッドのエッセンスが混ぜ込まれています。Andreaのクセのある歌声とあいまって、寂しげな哀愁が漂います。その一方で夕日の落ちるサバンナを思い起こさせるようなリズムもちりばめられていて、ヨーロッパの街角でアフリカのスパイスや小物、衣料品などを売っている小さな店を見つけたようなエキゾティズムも感じます。

英米ロック色の強い前半と、ロック・カンタウトーレ色の強い後半とで、ずいぶん印象が違う感じのアルバムですが、自分は後半の作風のほうが好きです。歌メロの魅力がちょっと薄い感じですが、クセのある声と力強い歌い方でその分をカバーしているといっていいでしょう。今後はどっちの色合いを強めていくのかわかりませんが、どちらにいくにしろ、曲作りのなかにもう少し上手にキャッチーさを混ぜ込めるようになるといいなと思います。

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2006/09/07

RICCARDO SINIGALLIA / INCONTRI A META' STRADA (2006)

Riccardo Sinigallia(リッカルド・スィニガッリァ)は、元Tiromancino(ティロマンチーノ)の主要メンバーだった人だそうです。 2003年に『Riccardo Sinigallia』でソロ・デビューし、この『Incontri a meta' strada』はセカンド・アルバムになります。

これ、紹介しにくい作品だ。とてもアンビエントな印象を持ったアルバムです。水面に広がる波紋のように透明でやわらかなピアノ、おだやかにつづられるシンプルな歌メロ、けっして歌い上げることのないヴォーカル。この3つの要素を中心に、静かに、ある意味淡々と、同タイプの曲が連なります。ところどころでリズムの入った曲もあるのですが、全体の印象は透明で、どこか幻想的。1曲ごとを切り出して聴くのではなく、10曲40分のアルバムを通して、曲同士の流れやつながりに身をまかせ、空間に広がっていく音の中でたゆたうことで、じんわりと良さが身体にしみこんでくるタイプのアルバムでしょう。

たとえば一時期のBraian Eno(ブライアン・イーノ)Holger Czukay(ホルガー・チューカイ)のような、あるいはCocteau Twins(コクトー・ツインズ)や、さらにはウィンダム・ヒルのような要素もあり、また幻想フォーク風な部分もあります。M9「Impressioni da un'ecografia」などでは初期のAlan Sorrenti(アラン・ソッレンティ)を思わせる浮遊感と高揚感もあったりします。いわゆる「ポップス」「ロック」とはちょっと違った、耽美な雰囲気を漂わせる音楽なので、聴き手を選ぶとは思いますが、なかなか気持ちのいい作品です。

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2006/09/06

STEFANO PIRO / NOTTURNO ROZZ (2006)

東京で毎月開催されているItalo pop festaの、2005年10月の会に出席された方のなかには、当時、六本木のイタリアン・レストランでバリスタとして働いていた、日本語をまったく話さないイタリア人、Mirko(ミルコ)さんを覚えている人もいるでしょう。そう、2000年のサンレモ音楽祭新人部門に参加して批評家賞を受賞したLythium(リチウム)のベーシストだった彼です。

Lythium自体はサンレモ後にアルバムを1枚リリースして解散してしまったようで、その後のメンバーの消息は、ベースのMirko Virgini(ミルコ・ヴィルジーニ)が六本木でバリスタになっていた(笑)ことくらいしか知らなかったのですが、リーダーでヴォーカリストだったStefano Piro(ステーファノ・ピロ)はソリストとしての活動準備を着々と進めていたようで、2006年にソロとしてのデビュー作をリリースしました。それが『Notturno rozz』です。

Lythiumのアルバムは聴いたことがないのですが、サンレモ参加曲の「Noel」はPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)を思わせるような、ちょっとアーティスティックで妖しい魅力を漂わせたラテン/タンゴ・テイストのあるロックといった感じだったと記憶しています。そういった音楽性はリーダーであったStefanoの持ち味だったのか、Stefanoのこのアルバムも、ロックのような、ジャズのような、ラテンのような、タンゴのような、フォークのような、妖しくもアーティスティックなテイストにあふれています。

David Sylvian(デヴィッド・シルヴィアン)に代表されるような、陰鬱で引きずるような歌声。疲れた大人たちが集まるピアノ・バーで歌われていそうな、けだるいジャズ・ヴォーカル風の曲があるかと思えば、フルートやオーケストラが幻想への逃避を促すようなシンフォニック風アレンジがあったり、オルガンの響きが懐かしいロック・サウンドを奏でたり、フィザルモニカ(アコーディオン)やトランペットがラテンの妖艶なエキゾティズムを漂わせたり。

こういう音楽はいったい誰が聴くのでしょう。プログレッシヴの匂いもするけれど、プログレッシヴ・ロックじゃない。ラテンの匂いもあれば、ロックやフォークやトラッドの匂いもあるけれど、そのどれでもない。いろんなものがミクスチャーされてます。やはり、プログレ耐性のあるポップス/ロック・ファンになるのかしら。

ただ、残念なのは、演奏やアレンジのアイデアなどはなかなか興味深いのだけど、ヴォーカルそのものにはあまり表現力がないうえに、歌メロも抑揚のないタイプなので、ヴォーカル曲としての印象がほとんど残らないことでしょうか。これ、もっとうまい人がうたっていたならなぁと思います。

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2006/09/05

RAF / PASSEGGERI DISTRATTI (2006)


Raf(ラフ)は、1980年代中ごろにデビューし、いまも現役のベテラン・シンガー。アルバムもコンスタントにリリースしているのでそれなりのディスコグラフィがあるのですが、自分は数枚しか聴いたことがありません。Ron(ロン)などと同様で、有名だし、悪くないんだけど、あんまり強い興味をもてないカンタウトーレのひとりです。アルファベート3文字の名前がいけないのか(ちがうちがう)。

自分のなかでのRafの印象は、もっとロック色の強い感じだったのですが、このアルバムは落ち着いた感じの曲が多く、Rafのことをよく知る人がいうには、印象としては初期の頃に近い感じなのだとか。

M1「Salta piu' alto」のキーボードの音は、なんか懐かしい感じがします。1990年代の終わりから2000年代はじめくらいのアメリカとかのロック・グループって、こんなような音をだすキーボーディストが多かったような気が(むかしのことなので記憶が曖昧だけど)。途中でラップも入る軽快なポップス。

M2「Dimentica」ではゆったりとしたエイト・ビートがきざまれ、古いブリティッシュ・ポップ・ロックを思わせる、ほどよくノスタルジックなメロディが奏でられます。ここ数年のイタリアの若いポップ・ロック系グループなどによく聴かれるタイプのバラードですね。

M3「Passeggeri distratti」で聴かれる、エレクトリック・アコースティック・ギターのコード・ストロークはいい音だな。ミディアム・スローのポップ・ロックで、ときどき耳に届くエレクトリック・ピアノの音色や転調のしかたが都会風のしゃれた感じを出しています。歌メロ自体はキャッチが弱いかも。

M4「Il nodo」はヴォーカル・パート前半の、いくぶん字余り気味に言葉が発せられる感じがカンタウトーレ風で、自分好みです。サビではなめらかなメロディにオーケストラも入り、ほどよく切なく、やわらかに美しく盛り上がります。途中でラップもはさまれますが、ラップにもなぜかほんのり哀愁が漂うのがイタリアらしいですね。曲そのものとしては、どちらかというと素直でありがちなものだけれど、やわらかなノスタルジーとセンチメンタルが心地よく響きます。

M5「Onde」では、ピッチカート風のギターと単純なドラムのリズムに乗った歌が、のんびりとした楽しさ、やさしさ、あたたかさを感じさせます。後半部ではリズム隊が引いて落ち着いた雰囲気に変わった中にピアノが美しく響き、曲の印象に変化を与えます。

M6「Nati ieri」のヴォーカル・パート前半はラップらしい?ラップ。イタリアのラップは、メロディなしでリズミカルにつむぎ出される言葉(ヴォーカル)のうしろでは美しいメロディが奏でられているといったケースが多いように思うのですが、この曲のラップ・パートはどこにもメロディを感じないという点で、アメリカなどのラップに近いように思います。しかしヴォーカル・パート後半に入ると言葉にメロディがつき、イタリアン・ポップスらしい、なめらかで美しいものになっていきます。

M7「Acqua」は、フォーク・タッチになったPaolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)風といった感じでしょうか。最後はオーケストラも入り、美しく、ノスタルジックに、ロマンティックになります。ただ、歌メロ自体は比較的平板で、盛り上がりには欠けるかも。

M8「Se passerai di qui」ではミュートをつけたトランペットやクリーン・トーンで奏でられるエレキ・ギター(セミアコかも)などが入り、ジャジーな雰囲気を漂わせています。比較的メロディの淡々としたスローな曲ですが、サビでちょっと情熱的になる盛り上がり方は、イタリアぽいといえばイタリアぽくもあり、その表現手段としてファルセットを入れたりするあたりはジャズ/ソウルぽくもあり。

M9「Mondi paralleli」はリズムの強調されたスローな曲。ほんのりした哀愁とドラマチックさをまとっていますが、その感じは最近の洗練されたものというよりは、古い歌謡曲的なある種のノスタルジーを思い起こさせます。ここでのRafのヴォーカルは少し醒めた感じがして、誰かの歌い方に似ているような気がするのだけど、それが誰だったか思い出せません...

全体に落ち着いた雰囲気とおだやかな印象があり、ほどよいノスタルジーをちりばめつつロマンティックとセンチメンタルを身にまとったといった感じです。クセが強いとはいえないけれど、あっさりしているともいえない程度にほどよく個性のあるヴォーカルや、派手ではないけれど、地味というには厚みもあるし手もかかっている演奏・アレンジなど、いろいろな意味で「ほどよい加減」に仕上がっていて、聴きやすく楽しみやすい作品になっているといえるでしょう。自分の好みをいうならば、これでもっと歌メロの構成に抑揚があればなぁとは思いますけれど。



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