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2006年7月9日 - 2006年7月15日

2006/07/14

ANDREA MINGARDI / PROSSIMAMENTE


1948年にボローニャで生まれ、1974年に『Nessuno siam perfetti, ciascuno abbiamo i sui difetti』でアルバム・デビューしたAndrea Mingardi(アンドレア・ミンガルディ)の、これは9枚目のアルバムのようです。デビュー以来、2~3年ごとにコンスタントにアルバムを出し続け、現時点での最新盤は2004年の『E' la musica』なのかな。すでに19枚ものアルバムがある、現役のヴェテラン・カンタウトーレ。なのに、日本ではしかたがないにしても、本国イタリアでもあまり話題にのぼることが多くないような気がします。そういう自分も彼の作品はこれを含めて2枚しか持っていないし。

最初の本格的な音楽活動は18歳のときに結成したGolden Rock Boys(ゴールデン・ロック・ボーイズ)というロックンロール・バンドだったそうで、その後はジャズやブルース、ファンクなどにも興味を持っていきます。ここからもわかるように、けっこうアメリカ的な志向が強い人なのでしょう。実際、自分が持っているもう1枚の彼のアルバム『Si Sente Dire In Giro...』(1990年)はZucchero(ズッケロ)にも通じるようなソウルっぽい感覚が随所にありました。しかしこの『Prossimamente』(1988年)は、それほどソウルっぽかったりアメリカ風ということもなく、イタリアらしいメロディに満ちていると思います。

アルバムの冒頭を飾る「E la radio va」はスケール感のあるミディアム・スローの曲で、ゆったりしたメロディにはほのかにカンツォーネの香りもします。豊かなキーボード・オーケストレーションやサキソフォンによる彩りも入り、厚みのある、どこかゴージャスにすら感じられる演奏にのって、Andreaの力強いひび割れ声が響きます。これ、Al Bano(アル・バーノ)とかが歌ってもよさそうな感じです。

M2「Se tu esistessi」はロック色のあるミディアム・テンポの曲。こういったタイプの曲に彼のひび割れた声は合いますね。キーボードの音づくりやアレンジがちょっと安っぽかったりするのですが、ディストーション・ギターはなかなかいい音色でなっています。

M3「Ah si l'amore」はデジタリックな音のキーボード・アルペジオから始まり、一瞬Giuffria(ジェフリア)とか思い出してしまいました(このグループのことを覚えている人がいま、どのくらいいるだろう。笑)。しかしヴォーカル・パートが始まるとイタリアらしくなってきます。熱いひび割れヴォーカルはFausto Leali(ファウスト・レアーリ)などに通じるかもしれません。

ここまで比較的力強くて“陽”のイメージを持った曲が多かったのですが、つづくM4「Lieto fine」は渋くて少し暗い、“陰”の雰囲気で始まります。だけどそれは最初だけで、ヴォーカル・パートが進むとイタリアらしい明るさとやわらかさが満ちてきます。ゆったりとしたメロディに彩を添えるキーボードのオーケストレーションは古いムード音楽を思い出させるような雰囲気を持っていて、ちょっとロマンティックです。

M5「Oh mamma」は、若者たちの前向きな愛と青春と挫折と成長を描いたアメリカ映画(たとえば『愛と青春の旅立ち』みたいな。ベタだな)のテーマ曲を思わせるようなピアノのイントロから始まります。しかしヴォーカル・パートに入ると一転して、明るく軽やかなイタリアン・ポップスになっていきます。

M6「Cosa si fa dove si va」はシンセ・ベースやキーボードのアレンジがいかにも古い印象というか、Human League(ヒューマン・リーグ)ですか?みたいな“時代”を感じるところがあるのですが、ヴォーカルのメロディ自体はやわらかな哀愁とやさしく暖かな雰囲気があって、なかなか好ましいです。マイナー・キーから始まり、サビでメジャー・キーに転調する展開がロマンティック。しかし、このブカブカいうシンセサイザーのコード・ストロークはどうにかならないのでしょうか。

M7「Chissa'」は、なめらかで美しく、ほどよい明るさとあたたかさがあります。まだ人のまばらな初夏のビーチで海を眺め、ビールや冷えた白ワインを飲みながら聴いたら、気分がよさそう。なめらかなメロディを、歌詞に合わせてぶつ切り風に歌うようなところが、いかにもカンタウトーレぽい感じがして、好ましく思います。しかし、最後のシンセサイザーの音づくり(金管楽器のシミュレート?)はひどいな。

M8「Questa notte ho te」はロマンティックなメロディを持った美しい曲。シンプルなフレーズを並べてあるだけなのですが、Andreaの味わい深いひび割れ声と歌唱力が、それに深みと旨みを与えています。ちょっとMichele Zarrillo(ミケーレ・ザッリッロ)の「Una rosa blu」に曲の雰囲気が似てるかな。

M9「Va bene... cominciamo!」は、Tom Waits(トム・ウェイツ)の「Time」という曲にAndreaLucio Dalla(ルーチォ・ダッラ)がイタリア語歌詞をつけたもののようです。

非常に歌唱力のあるカンタウトーレで、少しひび割れた声も趣があり、力強い歌い方も好ましく感じます。曲のタイプも、少なくともこのアルバムではなめらかで美しく、ときにロマンティックな部分もあり、これも好ましい。ただ、全体にキーボード(シンセサイザー)の音づくりとアレンジがいかにも安っぽくてセンスが悪いというか、古臭いというか(実際、古いアルバムですが)、もう少しなんとかならなかったのかと、その点が残念です。彼のようにヴォーカルに存在感や個性が出せる人は、あまり演奏のアレンジにごちゃごちゃ手をかけず、シンプルなバックで歌ったほうがいいんじゃないかと思います。

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2006/07/11

DAVIDE DE MARINIS / COME DA 2 LUNEDI

1999年に『Quello che ho』でアルバム・デビュー、翌2000年に「Chiedi quello che vuoi」でサンレモ音楽祭に参加(この年に『Quello che ho』をサンレモ・エディションで再リリース)したあと、活動を聞かないなぁと思っていたDavide De Marinis(ダヴィデ・デ・マリニス)のセカンド・アルバム... かと思っていた『Come da 2 lunedi』ですが、実は2001年に『Passo dopo passo』というアルバムを出していたのですね。なのでこれは彼のサード・アルバムになります。

『Quello che ho』は不思議な魅力のあるアルバムで、けっこう気に入ってました。これといって派手さのない、とくにどうということのないポップスなのだけど、過不足なく練られたアレンジや、不意にLucio Battisti(ルーチォ・バッティスティ)の影が横切るのが感じられたりなど、聴いているうちにいつのまにかDavideの世界が耳にしみこんでくるのです。その後の活動・アルバムを期待させるに充分な作品でした。

で、サード・アルバムとなる『Come da 2 lunedi』です。う~ん。このアルバムでも、不意にLucio Battistiがうしろを通り過ぎるような(声質とメロディのつくり方に似てるところがあるのでしょう)部分はあります。ヴォーカルも、それなりに個性的です。ファースト・アルバムとのいちばん大きな違いは、このアルバムは妙に派手でゴージャスな印象があるところでしょうか。そして、ファーストではなかった(と記憶しています)R&B風味が妙に強く感じられるのです。

重く、ときに引きずるような音を持ったロックっぽい演奏。ドラム・マシンを多用し、わざと安っぽいキーボードのアレンジを組み合わせるところなど、最近の若いイタリアン・ロック・グループに見られる傾向ですよね。そして、Tiziano Ferro(ティツィアーノ・フェッロ)の成功以降(か?)急速にイタリアン・ポップス界に広まったソウル/R&B風味のヴォーカル。なんか、すごく「流行にひよった」印象を受けてしまいます。ファースト・アルバムで感じた彼の魅力は、そういった流行とは関係なく、淡々と素直に自分の世界を表現していたところにあったと自分は思っているのですけれど、残念ながらこのサード・アルバムは、Davide本人の姿がよく見えない気がします。オーヴァー・プロデュースなのかなぁ。ちなみにプロデュース&アレンジ(さらには作曲も)はファーストと同じ、Cattivi Pensieri(カッティヴィ・ペンシエーリ)のDavide Bosio(ダヴィデ・ボジオ)。そういえばCattivi Pensieriも長いこと名前を聞かない気がしますが、まだ活動しているのだろうか?

M1「E' stato un attimo」はミドル・テンポの、軽快なポップ・ロック・アレンジがされた曲ですが、メロディは哀愁系。ヴォーカルにはほのかにLucio Battistiの影を感じます。

M2「Tutto passa」はTiziano Ferroなどに代表される、ソウル/R&B系の曲。最近流行りのタイプですね。バックの演奏が妙にファットです。

M3「L'ipotesi」はスローな曲で、なめらかなロング・トーンを響かせるギターや、生まれては消える泡のようなキーボードのアレンジなどが、広がりを感じさせます。ここにもほのかにLucio Battistiの香りが。

M4「Fammi entrare」ではチープなキーボードでむかしのブリティッシュ・エレポップを思い出しました。ヴォーカルはソウル/R&B風、途中のギター・ソロもブルース風ですが、ヴォーカルのバックの演奏はおもちゃ箱をひっくり返したようなコミカルで楽しい演奏というアレンジのおもしろさに、なんとなくSimone Cristicchi(シモーネ・クリスティッキ)を思い出しました。

M5「Lasciati andare」はどことなくエキゾチックで妖しい雰囲気を持って始まります。でもサビではオーケストラが入り、イタリアン・カンタウトーレらしい感じになっていきます。

M6「La felicita'」は、ほんのりラテン・ジャズっぽい雰囲気を持った軽快で楽しげなポップス。クリーン・トーンのエレキ・ギターやオルガンのストロークが軽やかに響きます。

M7「Faccio fatica」は引きずるような重いベースとギターでブルース風に始まります。サビのあたりからはオーケストラも入り、哀愁ノスタルジー系のポップスになっていきますが、全体としてはソウル/R&B風味。

M9「Rimediami un abbraccio」はアコースティック・ギターのカッティングを中心にした軽やかなポップス。明るく乾いた感じがするのだけど、どこか哀愁もあるのがイタリア風でしょうか。終盤ではヴァイオリンも入り、穏やかな夕暮れ時の風景を思い浮かべました。

M11「Che sei」はニューウェーブ系ロック・グループのような重い演奏にのってソウル/R&B風味のヴォーカルが入り、サビではLucio Battistiの幻影が見えるといった感じ。

全体にソウル/R&B風味が強いとはいえ、全部の曲がそういうわけではありませんし、1曲のなかでも前半はソウル/R&B風味だけどサビからはイタリアン・カンタウトーレらしくなるといった曲もあります。メロディやヴォーカルにときどきLucio Battisti風なところが見えたり、あるいはSimone Cristicchiに通じるところを感じたりもします。そういった点でいろいろな期待も抱かせるのだけど、もともとソウル/R&B風味があまり好きでない自分にとっては、ファーストほどは興味を抱けないアルバムでした。なんか、育つ方向が、期待していた方向とは違ってしまったなぁという印象です。

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2006/07/10

再発見の土曜日

7月8日(土)は、関東近郊在住イタリアン・ポップス・ファンの月に1度のお楽しみ、Yoshioさん主宰のItalo-pop-festaでした。

スタートしてもう1年以上が経つ月例会。自分はほとんど毎回出席しています。これまでに毎回、たくさんのアーティスト/曲が紹介され、僭越ながら自分からも何回か紹介させてもらっていますが、正直な話、最近はそれほど、自分にとって新しい発見や感動はなかなか見つけられないことが多いのです。

「もっと多くの音楽ファンに、気軽に、身近に、イタリアン・ポップスを楽しんでもらいたい、イタリアン・ポップスに馴染んでもらいたい」という主宰者の希望もあり、この会で紹介されるのは基本的に、現在よく聴かれているポップス系のアーティストと、最近アルバム・リリース(新譜、旧譜再発含む)のあったアーティストが中心。そのため、紹介される音楽の傾向やアーティストにある種の偏りがある、というよりも、あまり裾野への広がりがない傾向があり(ここにも、あまり裾野を広げると、これまであまりイタリアのポップスを聴いたことがなかった人たちが、かえって混乱してしまうのではないか、それに、このかいをコアなマニアのためだけのものにはしたくない、という主宰者さんの希望があります)、自分としては、それほど新鮮じゃない曲調やアーティストが多かったりするのです。

ただ、すでに何枚かアルバムを持っているアーティストでも、自分が持っていないアルバムから紹介された曲などで、いきなり心をわしづかみ!というケースもあります。CDで持っている曲なのだけど、長いこと聴いていなくて、ひさしぶりに会場で紹介されて魅力を再発見!ということもあります。なので、知っているアーティストだからといってうかうかしていられないというのも、この会の楽しみ。

そして今回の魅力再発見は、なんといってもRafでした。Rafのアルバムは2~3枚持っているはずなのだけど、たしか「Stai con me」はPaolo Vallesiぽくてとてもいい曲だったという記憶はあるのだけど、それ以外はそんなに記憶に残っていないのです。ベテランなんだけどね。なので、曲が始まる前は「いまさらRafぅ~?」という気持ちもあったのですが、曲が始まってみたら、これがとてもいい。Rafってこんなにいいんだっけ?と少しビックリの再発見。最近リリースされた新譜からの紹介だったのですが、これは、買いです。哀愁のメロディとひび割れたヴォーカル。自分のツボです。さらにはPaolo Vallesiとデュエットした映像まで紹介され、これまたいい。けっきょく自分はClaudio BaglioniPaolo Vallesi系のひび割れヴォーカルが大好きなのですね。

そして、もうひとつの衝撃(笑)が、Amedeo Minghiのデビュー?曲。1960年代のテレビ映像です。アルバム・デビューする前の、シングル・デビュー曲のようです。Amedeo Minghiですと紹介されても、ぜんぜん彼とわからない(汗)。曲調も歌い方も衣装も、正統的なカンツォーネ・スタイル。兵役前の非常に若いころの映像のはずなのですが、妙に老けて見えるところもカンツォーネ風?

自分にとっての今回の大きな収穫は、このふたつでした。もちろん、紹介された他のアーティストも楽しく聴けました。Riccardo FogliはあいかわらずRiccardo Fogliだし、Mario & Gianni Rosiniはやっぱりナポリの雰囲気を振りまいてる。Carmen Consoliの歌声はいつ聴いても個性的で色っぽく、Claudio Fioriは予想していたとおりオーソドックス。Francesco Rengaの粘っこい歌声が暑苦しくて、Giorgiaはいつもどおりに歌がうまい。今回紹介されたNegritaの曲がレゲエ風の軽いポップスだったのは、ちょっと予想外でしたが。

また、今回は僭越ながら、自分も紹介者としてAnonimo Italianoを2曲かけました。最初はアーティスト名をいわずに新曲「Piu' che puoi」を聴いてもらって、誰の曲だと思うかを会場に問いかけ。こちらの思惑どおり(笑)「Claudio Baglioniじゃないか?」という答えを得てからネタばらしをしました。そしてもう1曲、Claudio Baglioniの曲をいくつか継ぎ接ぎにしたような名曲(迷曲?)「Se anche tu come me」で、会場のClaudio Baglioniファンに笑っていただきました。いつか機会があったら紹介したいとずっと思っていたAnonimo Italiano。比較的喜んでいただけたようで、うれしく思います。

続いてPOP!ITALIANOのkazumaさんが「La vita e' adesso」をかけてくれました。この曲、Claudio Baglioniの有名な曲です。でも、彼のスタジオ盤に収録されているものと、なんか感じがちょっと違う。実はこれ、Claudio BaglioniのカラオケCDに「歌い方のお手本」として収録されたものだったのです。もちろん、歌っているのはClaudio Baglioniじゃありません。Roberto Scozziという、いわばClaudio Baglioniのそっくりさん。そして、なにを隠そう、Roberto Scozziこそが、デビュー前のAnonimo Italianoなのです。

というわけで、主宰のYoshioさんおよびkazumaさんと仕組んだ、Claudio Baglioniもどき3曲をミステリアス&ドラマチックに紹介するという趣向だったのですが、楽しんでいただけたかしら>会場にいらっしゃったみなさま。

次回Festaは8月19日(土)の予定だそうです。次回は何が聴けるのか、どんな発見・再発見があるのか、楽しみです。


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