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2006/11/02

VINICIO CAPOSSELA / OVUNQUE PROTEGGI (2006)

1965年12月14日に生まれ、1990年に『All'una e trentacinque circa』でアルバム・デビューしたイタリアの個性的なカンタウトーレ、Vinicio Capossela(ヴィニチオ・カポッセラ)が2006年にリリースした8枚目のアルバム。彼の作品は1991年リリースのセカンド・アルバム『Modi'』を聴いたことがあって、タイプとしてはPaolo Conte(パオロ・コンテ)などに近い、ジャズ・テイストにあふれたカンタウトーレなのだと認識していたのですが、このアルバム『Ovunque proteggi』は、たんにカンタウトーレ作品といってしまうには、あまりに風変わりです。

M1「Non trattare」では低音でストリングスがドロ~ンと鳴りつづけ、シタール(だと思う)がエキゾチックな響きとメロディを奏で、 リズムは呪術系音楽のようにプリミティヴ。中近東の香りにサイケデリックな雰囲気もあって、初期のPink Floyd(ピンク・フロイド)だとかIndaco(インダコ)などにも通じるものがあるように思います。

M2「Brucia troia」も、なんだかぶつぶつ呟いているようなヴォーカルという時点で普通のポップスではなく、途中からはファズ・ギターなども入ってきて、サイケデリックな雰囲気の強い実験的なロックになっていきます。

M3「Dalla parte di spessotto」のヴォーカルはさらに個性的になり、演劇的という、物語的というか。曲の展開のしかたなどには古い舞台用音楽のような雰囲気もあるように感じます。こういった演劇性は、中期以降のPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)などにも通じるかもしれません。

M4「Moskavalza」ではコード・ストロークでアーム・ダウンをするなど、オールド・スタイルのロックン・ロール風なエレキ・ギターがバックで鳴り、リズムと装飾はデジタル感が強いという、1980年代ころにイギリスなどでよく聴かれたような気がするタイプの曲。パンキッシュな雰囲気があり、The Stranglers(ストラングラーズ)などに通じるところがあるかもしれません。また、ときにヴォーカルがオペラチックもどきになったりして、ちょっとKlaus Nomi(クラウス・ノミ)とか思い出したり。

M5「Al colosseo」は管楽器によるファンファーレとティンパニをバックに「コロッセオでどうしたこうした(XXXX al Colosseo)」とぶつぶついっているだけだし、途中で「めぇ~」みたいな声も出すし、もう間違いなくポップスじゃありません。

M6「L'uomo vivo」は管楽器を中心に演奏されるマーチにヴォーカルをつけたもので、運動会やパチンコ屋を思い出します。

M7「Medusa cha cha cha」はタイトルどおり、チャチャチャのリズムを取り入れたラテンの雰囲気たっぷりの曲。華やかなブラスの音も楽しげな演奏ですが、ヴォーカルはウィスパー気味だったりして、ストレートなポピュラー音楽にはなっていません。途中で入るのこぎりヴァイオリンのような音の短いソロもいい感じ。

ここまで聴いても、このアルバムが、いわゆるイタリアン・ポップスやカンタウトーレ作品とは違う、非常に個性の強い、言い換えるなら風変わりな作品だということがわかるでしょう。これだけでも自分的にはかなり好ましい、興味を持って楽しめる内容なのですが、極めつけはM12「S.S. dei Naufragati」という曲。ここでは、途中からミラノのサン・マウリツィオ聖歌隊による混声合唱が入り、一気にクラシカルになります。それ以前から、ストリングスのアコースティックな演奏をバックにVinicioがぼそぼそと詩を朗読し、ときに神への祈りを捧げるように歌い上げたりと、かなりアート感の高い曲です。これはもう、ポップスやカンタウトーレというよりも、プログレッシヴ・ロックの一部といってしまっていいのではないでしょうか。

日本ではあまり知られていない人ですが、多少は彼の名前を知っている多くの人にとってのVinicio Caposselaというアーティストに対する認識は、おそらく、いわゆるカンタウトーレなのではないかと思います。ですが、この『Ovunque proteggi』というアルバムは、ポップ系・カンタウトーレ系の曲もいくつか収録はされているものの、いわゆるイタリアン・ポップス・ファンには受け止めきれないような、実験的だったり、トラッド風だったり、プログレッシヴな雰囲気を持った曲が多く、イタリアの底力を感じます。プログレ系のファンでないとなかなかきつい、ある意味ではプログレ系のファンにこそ聴いてもらいたいアルバムかもしれません。



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コメント

このアルバム、今注文してます。
楽しみです♪

投稿: mash | 2006/11/02 10:36

この前のアルバムはオーケストラ入りらしく、それも気になっている今日この頃です。そして11月24日にはニューアルバムもリリースの予定らしく、これも気になるところです。

投稿: もあ | 2006/11/05 15:42

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