ROBERTO SOFFICI / LE PIU' BELLE CANZONI DI (2006)
Roberto Soffici(ロベルト・ソッフィーチ)は、主に1970年代から80年代前半ころにかけて活動していたカンタウトーレ。彼のオリジナル・アルバムは(おそらく)まだ1度もCD再発されたことがなく、入手困難なアーティストのひとりとなっています。ベスト盤CDのリリースも、たぶんこれが2回目。前回は「音源さえあれば何でもリリースする」感じのD.V.MOREレーベルからでしたから、基本的にはイタリア国内でもあまり人気のない人なのでしょう。
自分は、たぶん1979年ごろにリリースされた『Roberto Soffici』というアルバム(LP)と、1996年にリリースされた『Il meglio』という再録ベスト盤CDを聴いたことがあります。LPのほうは歌謡曲ぽいポップスだったような、おぼろげな記憶しかないのですが、ベスト盤CDのほうは、歌謡曲ぽいものもあるものの、落ち着いた哀愁があって、けっこう気にいっていました。再録ということで演奏がプログラミング中心なのが気になるものの、エレキ・ギターなどは綺麗に鳴っていて、「あぁ、生オーケストラ入りであろうオリジナル録音を聴いてみたいものだ」と思ったものでした。
Warnerからリリースされたこのベスト盤は、彼にとってはおそらく初めての「オリジナル音源CD化」だと思います。オリジナル・アルバムが少なくとも4枚にシングルが12枚くらいあるのに収録曲が全部で12というのは少し寂しいですが、とりあえずオリジナルが聴けるということで期待したのです。
でも、結果的には、自分にとっては微妙でした。なんか、全体的に古臭い。オーケストラのアレンジも歌謡曲チックだし、カンタウトーレ風というよりはイージーリスニングやBGM風な印象が強いし。もともとRobertoのヴォーカルって、ダミ声なわりには弱弱しいというか儚げな印象があるのですが、言い換えれば迫力や声量があまりないわけです。そんなヨワヨワの歌声が、いまとなっては古臭い印象の歌謡曲風な演奏に乗って、全体に安っぽくなってしまっている感じを受けます。
M3「All'improvviso l'incoscienza」やM5「L'amore finisce」、M9「Tanto donna」などは、オーケストラを中心になだらかなメロディと徐々に盛り上がる展開を持ったイタリアらしい曲なのだけど、ヴォーカルが歌い上げきれていないためか、カンタウトーレ風やカンツォーネ風というところまでいかず、BGM的なイージーリスニング風といった印象で止まってしまいます。とくにM5はオーケストラを中心とした歌なしの演奏パートがけっこう長く、いっそうBGM風。自分にとってはまったく物足りないのです。
オーケストラとアコースティック・ギターが陽だまりのおだやかさのようなM2「Invece adesso」とか、アコースティック・ギター2本によるアルペジオが美しいM4「Poesia, musica e altre cose」とか、短いながらもちょっといなためなエレキ・ギターがいい感じなM7「Il canto dello scorpione」とかも、悪くはないのだけど、やはり古臭さや迫力のなさが耳についてしまう。ピアノを中心にシンプルなメロディを歌うM8「Se nonci fossi tu」などは儚げな美しさがあってRobertoのヴォーカルに合っているけれど、メリハリに欠ける感じ。
メリハリに欠ける。うん、全体的にメリハリ感が足りないように思うのです。その点、再録ベストの『Il meglio』は、プログラミング中心の演奏とはいえ、もう少しメリハリがあったはず。もっとリズムや、ロック的な力強さがあった気がします(しばらく聴いてないのでうろ覚え)。それが、ひびわれ声なのにヨワヨワで儚げなRobertoのヴォーカルをいい塩梅に彩っていたのかもしれません。それに対しオリジナル録音では、ヨワヨワなヴォーカルをヨワヨワなままに包み込んじゃうアレンジなのかなぁ。
もちろんM6「Nel dolce ricordo del suo sorriso」のように、シンプルなメロディを積み重ねて徐々にロマンティックに盛り上がる曲もあって、これは彼の儚げなヴォーカルによく合っています。オーケストラのアレンジも、ありがちといえばありがちだけど、ほどよい叙情に満ちています。こういった曲は、自分は好きです。好きですが、こういった曲ばかりが並んでたら、それはそれで飽きてしまいそうではあります。
某プログレ系専門店ではClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)やRiccardo Cocciante(リッカルド・コッチァンテ)
、Umberto Balsamo(ウンベルト・バルサモ)
を引き合いに出して大絶賛に近いような紹介がされていましたが、Claudio
たちの作品には遠く及ばないというのが自分の率直な印象です。ただ、そこそこ古くからのイタリアン・ポップスを聴いているファンとしては、充分に楽しめる内容、愛すべき楽曲群だとも思います。
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