GOBLIN / IL FANTASTICO VIAGGIO DEL "BAGAROZZO" MARK (1978)
恐怖映画『サスペリア』のサウンドトラックなどで有名なGoblin(ゴブリン)
の、数少ない(2枚だけらしい)「サントラじゃないアルバム」のひとつ。さらに数少ない(唯一の?)ヴォーカル入り作品です。自分は、いわゆるプログレッシヴ・ロックも好きですが、基本的にはヴォーカル・ファンなので、彼らのアルバムのなかではこの作品がいちばん好きだったりします。
M1「Mark il Bagarozzo」は軽快なシンフォニック・ロック。この時点で「ホラー映画のGoblin」のイメージとは違ってきますが、さらにさわやかな感じすらするのが素敵です。ヴォーカルも、うまくはないけれど味があります。
M2「Le Cascate di Viridiana」の前半で聴かれるキーボードのアルペジオはミステリアスで妖しい雰囲気を持っていて、「サスペリア」などに通じますね。中盤からは妖しさが後退し、月明かりに照らされた夜の海のように澄んだ広がりを感じさせます。非常に透明な印象のあるインスト曲。
M3「Terra di Goblin」は「小悪魔たちの地」というタイトルどおり、不安で不吉な雰囲気を漂わせるキーボードで始まります。こういった感じには、Massimo Morante(マッシモ・モランテ)のヴォーカルは世俗を思わせる味わいがありすぎて、ちょっと合わないかもしれません。ただ、曲全体が不安な雰囲気に支配されているわけではなく、ワウを使ったギター・ソロでは妖しいなかにも少しユーモラスな雰囲気があったりします。
M4「Un Ragazzo D'Argento」は軽快なシンフォニック・ポップスといった雰囲気。キーボードやギターの演奏も華やかで、明るい感じがします。
M5「La Danza」のイントロで聴かれるシンセサイザーのアルペジオは、Tangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)などを思い出させます。そこに「サスペリア」チックな緊張感のあるアコースティック・ギターが入り、さらにシンセサイザーもかぶさって、徐々にシンフォニックに、映画音楽的な広がりを持ったものになっていきます。情感のあるヴォーカルも、いい感じです。
M6「Opera Magnifica」はアルバム中もっともイタリアン・ポップスぽい曲。歌メロの前半は細かい音符の連なりが軽快で楽しげな雰囲気、サビでは情感を込めて元気に歌い上げる、といった流れが、いかにもイタリアン・ポップス風というか、カンタウトーレ風というか。明るく楽しいシンフォニック・ポップスといった印象で、自分はとても気に入っています。
M7「Notte」は「夜」というタイトルが暗示するかのように、曖昧で漠然とした恐怖を感じさせます。妖しいピアノの響きと囁き声。ホラー映画風味の強い曲。
M8「.....E Suono Rock」はシンセサイザーとエレキ・ギターの細かいアルペジオで始まり、サックスやリズムが加わってシンフォニック・プログレッシヴへと展開します。ジャジーなオルガン・プレイなども披露され、プログレッシヴ・ロックらしい曲・演奏だと思いますが、アルバムを締める曲としてはちょっと力不足というか、まだこのあとになにかの展開があるのではないかと思わせるような中途半端さを感じてしまいます。
『Profondo rosso』などのサントラ作品とくらべると、瑞々しさと緊張感に少し欠けるというか、より世俗的・日常的な情感があるように感じます。それでも曲の端々にGoblin
らしい張りつめた透明感がちりばめられていて、ロック作品としてバランスのいいものになっていると思います。味わいたっぷりのヴォーカルは、ときに曲や演奏の雰囲気から浮いてしまう部分もありますが、その世俗感がこの作品にある種のリアリティを与えているともいえ、全体として悪くないと思います。
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コメント
何がキッカケだったか忘れましたが、随分前にもこのアルバムのことで盛り上がった様な気がします。確か、このヴォーカルの味わいが分からない内はイタポ・ファンとは言えないぜぃ!みたいな(例によって勝手な脚色が入ってます)。自分、あれから全然進歩してないなぁ。
投稿: ニョッキ | 2006/10/13 01:00