筋肉少女帯 / 仏陀L (1988)
最近ではすっかりのほほんおじさんな印象のある大槻ケンヂ氏が率いた、もしかして伝説的な?ロック(なのか??)グループ、筋肉少女帯
のメジャー・デビュー作です。
自分、けっこう好きなんです、筋肉少女帯。いわゆるポピュラー・フィールドのロックではありえない、ある意味で破綻したメロディ展開と楽曲構成。わけのわからない世界観を持った独特の歌詞。ハード・ロックのようなヘヴィ・メタルのようなパンク・ロックのようなプログレッシヴ・ロックのようなジャンル分け不能の、筋少的ロックとしかいいようのない音楽。ギタリストとして橘高文彦さんが加入した以後の彼らの音楽は比較的ヘヴィ・メタル風なある種の方向性がしっかりとしてきますが、この『仏陀L』の頃の筋肉少女帯
は、音楽的にやりたい放題というか、楽曲ごとにばらんばらんな音楽性というか。なのにやっぱり「筋少的」であり、聴いているとずっぽり筋少世界に包み込まれてしまうのが素敵です。
むかし、ある人にいわれたのですが、自分は基本的に「カンタービレ志向」なのだそうです。意味はよくわからないのですが、おそらく「歌心重視の傾向がある」ということかと思います。その点でいうと筋肉少女帯の音楽はぜんぜん違うのだよな。そもそも「歌メロ」というものがあまり重視されていないというか、たぶんデパートなどのBGM用にインスト可はほとんど不可能なくらい、曲としての「歌メロ」がつくられてない。また、ときどき出てくる大槻さん
の裏返りぎみなシャウト・ヴォイスも自分はあまり好きじゃない。でも、変な歌メロのヴォーカルが妙に演奏力の高いバンドによる不可解なアレンジと渾然一体となって、筋肉少女帯
というグループ独特のカンタービレが生まれ、それがきっと自分にはとても心地いいのでしょう。自分でなにをいっているのだかよくわかりませんが。
この頃のアルバムの演奏では、やはり三柴江戸蔵さんの奏でるピアノ&キーボードが非常に印象的です。クラシカルで透明で張りつめたようなピアノは、大槻さんの描く怪奇な世界に厚みと奥行きを加え、華やかなキーボードは凡百のプログレッシヴ・ロック・グループの腑抜けた演奏とはくらべものになりません。三柴さんはセカンド・アルバム後に筋肉少女帯
を抜け、グループはキーボーディストを補充するのではなくもうひとりのギタリスト、橘高さんを迎え入れ、以後はヴォーカル+リズム・セクション&ギター×2という編成が続いていくわけですが、ユーロピアン・ドラマティックな感性を持った橘高さんと三柴さんが一緒に演奏していたなら、独特なおどろ世界を持ったテクニカル・プログレッシヴ・メタルになっていたかも、などと想像するのもまた楽し。
ここに収録されている曲は、どれもそれぞれに印象的なのだけど、やはりハードである意味派手な「釈迦」や、ポップでさわやか?な「サンフランシスコ」などは耳に残ります。そしてどの曲も歌詞になんともいえない哀しみがあり、大槻さんの詩人としての魅力があふれていると思います。うん、やっぱり筋肉少女帯
はいいな。
ちなみに自分がもっとも好きな彼らのアルバムはこれじゃなく、『レティクル座妄想』だったりするのですが、もっとも好きな曲は『Sister Strowberry』収録の「いくぢなし」だったりします。
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