STEFANO PIRO / NOTTURNO ROZZ (2006)
東京で毎月開催されているItalo pop festaの、2005年10月の会に出席された方のなかには、当時、六本木のイタリアン・レストランでバリスタとして働いていた、日本語をまったく話さないイタリア人、Mirko(ミルコ)さんを覚えている人もいるでしょう。そう、2000年のサンレモ音楽祭新人部門に参加して批評家賞を受賞したLythium(リチウム)のベーシストだった彼です。
Lythium自体はサンレモ後にアルバムを1枚リリースして解散してしまったようで、その後のメンバーの消息は、ベースのMirko Virgini(ミルコ・ヴィルジーニ)が六本木でバリスタになっていた(笑)ことくらいしか知らなかったのですが、リーダーでヴォーカリストだったStefano Piro(ステーファノ・ピロ)はソリストとしての活動準備を着々と進めていたようで、2006年にソロとしてのデビュー作をリリースしました。それが『Notturno rozz』です。
Lythiumのアルバムは聴いたことがないのですが、サンレモ参加曲の「Noel」はPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)を思わせるような、ちょっとアーティスティックで妖しい魅力を漂わせたラテン/タンゴ・テイストのあるロックといった感じだったと記憶しています。そういった音楽性はリーダーであったStefanoの持ち味だったのか、Stefanoのこのアルバムも、ロックのような、ジャズのような、ラテンのような、タンゴのような、フォークのような、妖しくもアーティスティックなテイストにあふれています。
David Sylvian(デヴィッド・シルヴィアン)に代表されるような、陰鬱で引きずるような歌声。疲れた大人たちが集まるピアノ・バーで歌われていそうな、けだるいジャズ・ヴォーカル風の曲があるかと思えば、フルートやオーケストラが幻想への逃避を促すようなシンフォニック風アレンジがあったり、オルガンの響きが懐かしいロック・サウンドを奏でたり、フィザルモニカ(アコーディオン)やトランペットがラテンの妖艶なエキゾティズムを漂わせたり。
こういう音楽はいったい誰が聴くのでしょう。プログレッシヴの匂いもするけれど、プログレッシヴ・ロックじゃない。ラテンの匂いもあれば、ロックやフォークやトラッドの匂いもあるけれど、そのどれでもない。いろんなものがミクスチャーされてます。やはり、プログレ耐性のあるポップス/ロック・ファンになるのかしら。
ただ、残念なのは、演奏やアレンジのアイデアなどはなかなか興味深いのだけど、ヴォーカルそのものにはあまり表現力がないうえに、歌メロも抑揚のないタイプなので、ヴォーカル曲としての印象がほとんど残らないことでしょうか。これ、もっとうまい人がうたっていたならなぁと思います。
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コメント
イタリアでオルガンや、けだるいレストランとかないうえに
もあたちが、けだるい匂いとかを演奏した。
投稿: BlogPetの小丸 | 2006/09/06 11:28