LUCA BASSANESE / AL MERCATO (2006)
1975年12月18日ヴィチェンツァ(Vicenza)生まれの新人カンタウトーレ、Luca Bassanese(ルーカ・バッサネーゼ)のデビュー・アルバムです。シングル・デビュー自体は2005年9月に果たしていますが、それにしても30歳での新人デビュー。いかにもイタリアらしい感じです。
そして、彼が奏でる音楽が、やはりイタリアらしいというか、なんというか。いわゆる「ポップス」ではなく、フォーク・ロック系の曲なのですが、簡単にフォーク・ロックとひとことでは済ませにくい、ラテンやトラッドやジャズなどの風味が入り混じった興味深いアコースティック・ミュージックになっています。しかも、地味。でも、ただ地味なだけでなく、味わい深い。こういった音楽が、いわゆるメイン・ストリームである売れ線とは少し距離を置いた新人のアルバムの中にぽろぽろと見つかるところに、イタリアのポピュラー・ミュージックが持つ奥行きの深さを感じます。
自分はイタリア語がわからないので歌詞の内容も理解できないのですが、この『Al mercato (市場にて)』は、なんらかのコンセプト・アルバムらしいです。田舎の城下町と思われる、布に描いた絵のようなジャケット・アートも印象的ですが、歌詞カードの中央ページには子供が描いたと思われるイラストが多数掲載されていて、ここもなんだか意味ありげです。
アコースティック・ギターのアルペジオにのって子供が独唱するM1「I pesci」や、おじさんがなにかをしゃべってるだけといった感じのM7「Nina」、ア・カペラのM10「Terra adorata」といった変化球もありますが、基本は古いタイプのカンタウトーレ系音楽にラテン&ジャズ・フレーバーをまぶした感じ、といったところでしょうか。M3「La luz de un novo dia」や、Fabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)のカバーであるM9「Il Bombarolo」などでは、ヨーロッパの古い田舎町で行なわれる祝祭の音楽といったイメージも浮かびます。
また、ガット・ギターと鉄琴のやわらかな響きがほどよく小洒落た感じのM4「Il Destino」、ラテンの哀愁漂うアコーディオンと重たいリズムをバックにした、いなたいトラッド・ロック風のM5「Salta x l'indignazione」、ぶんちゃっぶんちゃっというピアノのリズムが気持ちのいいジャズ・ポップス風のM8「L'Indifferenza」などは、派手さはないけれど愛すべき曲と感じます。
個人的に気に入ったのは、ラテンやタンゴの雰囲気をふりまくアコースティック・ギターとアコーディオンにのってエキゾティックに歌われるM2「Al Mercato」と、ピアノのアルペジオにのって歌われる、やさしげで可愛らしいM6「Canzone di Marta」。とくにM6は、途中からアコースティック・ギターやホイッスル、アコーディオン、コーラスも入り、地味だけれども味わい深いカンタウトーレ作品になっています。
アルバム・リリース以降、地元ヴィチェンツァを中心に積極的にコンサートを行なっているようですが、たぶん、イタリアのヒット・チャートに上がってくるような人気歌手にはなれないでしょう。でも、こういった、地味だけど味のあるフォーク・ロックというのは、やはり「イタリアのポピュラー・ミュージック/カンタウトーレ作品」を楽しむうえでの重要な構成要素だと思います。そしてLucaのこのアルバムは、その点で充分に「イタリアン・ミュージックの魅力の一端」を聴かせてくれているといえるでしょう。ここに、もっとわかりやすいキャッチーさや、ある種の奇抜さのようなものが加わると、もしかしたらSimone Cristicchi(シモーネ・クリスティッキ)のようになるのかもしれないなぁ。
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