SILVIA MEZZANOTTE / IL VIAGGIO (2006)
Matia Bazar(マティア・バザール)の三代目歌姫だったSilvia Mezzanotte(シルヴィア・メッツァノッテ)の、待望のソロ・デビュー・アルバムです。
Silviaは1990年に「Sarai grande」という曲でサンレモ音楽祭の新人部門に出場したことがあるようで、その際にこの曲で歌手としてシングル・デビューは果たしていたのですが、その後はLaura Pausini(ラウラ・パウジーニ)やFrancesco De Gregori(フランチェスコ・デ・グレゴーリ)、Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)、Mia Martini(ミア・マルティーニ)といった人気アーティストのアルバムやツアーにコーラスで参加するといった裏方仕事が多くなります。
そんな彼女を表舞台に呼び戻したのがMatia Bazarで、Laura Valente(ラウラ・ヴァレンテ)が抜けたあとの三代目歌姫として、1999年にSilviaを迎えました。そして2枚のスタジオ・アルバムと1枚のライヴ・アルバムをリリースしたのち、2004年にMatia Bazarを脱退、ソロ活動を始めます。2005年にはソロ・シンガーとしての再デビュー・シングルとなる「Tanto tanto amor」がリリースされ、いよいよ本格的に活動再開かとファンの期待が高まったのですが、その後なかなか新しいニュースが入ってこず、このまままた消えてしまうのかと心配が高まってきたところで、やっとリリースされたのがこのデビュー・アルバム。まさにファン待望のアルバムといえます。
M1「Parole d'amore」はLaura Pausiniなどにも通じるような、なめらかで美しいメロディを持ったミディアム・テンポの曲。サビのあたりの展開はリラックスしたMatia Bazarといった雰囲気もあります。フルートの音色(かな?)のキーボードが奏でる、ちょっとリズムに遅れ気味のコード・アルペジオが、個人的に好ましく感じます。
M2「Tu sei gia' poesia」は、さらに素直に美しいメロディと構成を持った、とてもイタリアン・ポップスらしい曲。Matia Bazarでは力強い歌声も聞かせてくれていたSilviaが、ここではあえて抑えて歌っているようで、やわらかく優しい感じがあふれます。
M3「Bellezza buttata via」は都会的でしゃれた雰囲気を持ったポップス。ほんのりジャジーなギターのアレンジが心地よいです。アメリカ風の匂いもありつつ、どことなくMatia Bazarの名残も感じられます。
M4「Tanto tanto amor」は先行シングルとしてリリースされた曲ですが、自分の好みとはちょっと違う感じ。南欧的というか、ラテンのムード音楽的な雰囲気があります。ガット・ギターのやわらかい響きは魅力的ですが、自分の好みからすると、ちょっとムーディすぎです。
M5「L'amore non perdona」はミディアム・テンポの曲で、アコースティック・ギターのストロークがやわらかな明るさを出しています。歌メロ前半はあたたかい感じのメロディですが、サビからは少しシビアで重い感じに転調します。この転換のしかたは非常に素直で、そのなめらかさがイタリアぽいともいえますが、曲としてはちょっと平凡かも。
M6「Io si」は、このアルバムのなかではもっともロックを感じる曲といえるでしょう。ヴォーカル・ラインはなめらかなメロディを持ったポップスなのですが、バックではギターやリズム・セクションがミディアム・テンポで8ビートをきざみ、重さを出しています。こういった曲では、もう少し力強く歌ってくれてもいいし、歌える人だと思うのですが、このアルバムでのSilviaは、全体にとてもリラックスして軽やかに歌っている印象です。終盤に聴けるスキャットのなめらかさは、Matia Bazar時代を彷彿とさせます。
M7「Giura adesso」はM6と対比させるかのような、やわらかく、あたたかく、やさしい感じのスローな曲。ここでのSilviaは、いっそう軽やかに、可愛らしい歌声を聴かせてくれます。
アルバム最後を締めるタイトル曲のM8「Il viaggio」は、やわらかなフォーク調。アコースティック・ギターのアルペジオを中心に、ピアノとオーケストラが淡く彩りを添えるというシンプルな演奏が好ましいです。派手さはありませんが、伸びやかなメロディがあり、草原のようにさわやかで、無垢にすら感じられる、Silviaの美しい歌声が楽しめます。
収録曲は8曲で、収録時間は35分弱と、いまの時代としてはコンパクトで、ミニ・アルバム的といえなくもないですが、その分、無駄がなく感じられます。どうしてもAntonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)と比較されてしまうことから逃れられないMatia Bazarの歌姫という立場をはずれたこともあってか、のびのびとリラックスして歌っているのが感じられ、聴いていて気持ちのいいアルバムだと思います。
個人的な好みをいえば、もう少しヴォーカル・ラインがダイナミックに動くような曲があってもよかったな。そういった曲で、力強いヴォーカルも聴きたかったところです。それができるシンガーなのですから。次のアルバムに期待しようっと。
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コメント
シルヴィア・メッザノッテはきれいな声ですよね。私はマティア・バザールで彼女を知ったのですが、今のヴォーカルよりシルヴィアの方が好きです。確か歌の学校をやっていたと思うので、そっちが忙しくてなかなかアルバムを出せなかったのかも。
マティア・バザールのアルバムはアントネッラのヴォーカルのものを持っています。やはりいいですね。
しかしシルヴィアのアルバムは興味あり。聴いてみたいな。
投稿: なこ | 2006/08/16 01:09
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Matia Bazarのいまの(4代目)ヴォーカルって、妙にソウルフルですよね。ついにMatiaもポピュラー・ミュージック総R&B化のいやな流れに乗ってしまったのか... MatiaというとどうしてもAntonellaの印象が強くて、Laura ValenteもSilviaもどこかに「Antonella的」なものを要求されていたように思うのですが、それを断ち切るための4代目なのかしら。
Antonella時代のMatiaはやはり何物にも変えがたいと思いますが、SilviaはAntonellaの幻想をいくぶん保ちつつもSilviaならではのMatiaを表現できてたんじゃないかと思います。Silvia時代のMatia、自分は好きです。
投稿: もあ | 2006/08/19 11:03