GIANNA NANNINI / X FORZA E X AMORE
邦題は『愛と力にかけて』でした。Gianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)のアルバムって、以前は中古で安く見つけることがけっこうあって、そのたびについ買ってしまっていたものだから、そこそこの枚数のアルバムがうちにはあるのですが、そのなかでもこの『X forza e x amore』はなかなか出来のいいアルバムだと思います。基本的にはGiannaらしい、シンプルでストレートなメロディと構成を持った曲に、力強いひび割れヴォーカルが乗るといったスタイルなのですが、それぞれの曲の持つメロディが、シンプルながらも素直で美しい響きを持っているからでしょう。
M1「Radio baccano」やM9「Lamento」などは、ストレートでドラマティックなハード・ロック。パワフルなヴォイスが美しいメロディに乗ります。M1には途中でラップを入れるなどの工夫も見られます。
M2「Io senza te」やM7「Oh marinaio」などではドラマティックなスロー・バラードを聴かせてくれます。M2はシンプルで美しいメロディを素直に歌っていますが、一瞬ファルセット気味になる部分があり、Giannaの歌ではちょっとめずらしいかも。M7ではピアノの演奏をバックに、どこか傷ついた心の傷みや哀しみを感じさせるような、だけどそれをあまり表には出さないようにしているような、そんな情感に満ちたヴォーカルが聴けます。サビではディストーション・ギターも入り、感情の高まりが上手に表現されています。
M5「Principe azzvrro」はほのかに危険な感じのする、ちょっといなたいブルーズ・ロック。たとえばストリッパーのいるようなバー/キャバレーと強いアルコールが似合いそうなイメージです。サキソフォンの響きもどことなく妖しい感じ。しかしサビに入るとGiannaらしい、シンプルなロック・メロディになります。
そのほかにも、軽快なリズムと素直なメロディが交換をもてるポップ・ロックのM3「Bell'amica」や、どことなくBob Dylan(ボブ・ディラン)風というかカンタウトーレ風の味わいがGiannaにはめずらしい感じのM4「Tira tira」のような曲もあります。
アルバム・タイトル曲のM6「Per forza e per amore」はスローな曲ですが、太鼓の響きにエスニックでエキゾチックな香りがあり、どこかの土着な祭典のようです。厚いコーラスも入り、ロック色の強いGiannaの作品のなかで不思議な味わいを持っています。さらにM8「Maremma」はいっそうトラッド風味があってめずらしいなと思ったら、この曲は本当にトラッド・ソングのようです。
基本はシンプルでわかりやすいロックというGianna Nanniniらしさをしっかり出していながら、収録された曲にはさまざまな表情や味わいがあるところが、このアルバムを魅力的にしていると思います。
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