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2006/06/15

ジャケ買い


Fausto Leali(ファウスト・レアーリ)のアルバム『Amore dolce, amore amaro, amore mio』について書いたら、tontoさんから「もしかして、ジャケ買いか?」というコメントがつきました。このアルバム、ちょっぴりエロティックですから(笑)。

学生時代とくらべると、いまではすっかり少なくなりましたが、それでも自分は年間30枚から40枚くらいはCDを買っていると思います。そして、その半分くらい(もっと多いかな)は、いわゆる「ジャケ買い」です。そのアーティストやアルバムについてそれなりの情報を事前に得てから買うのではなく、カタログを見て(最近は90%以上をネット通販で買っているので)、ジャケット写真を見て、収録曲のタイトルの雰囲気などを見て、売価を見て、よさそうかなと思うものを買ってる。tontoさんには申し訳ない?けれど、このときの判断基準に「ジャケに女性が載っている」といった項目はありません(笑)。

そんなわけで、Pensiero! websiteをご覧いただいてもわかるかもしれませんが、うちには日本人イタリアン・ポップス・ファンのみならず、イタリア人ですらほとんど名前を知らない、曲を聴いたことがないような、得体の知れないアーティストのアルバムがけっこうたくさんあります。

事前情報がないままに入手したこれらのアルバムは、実はけっこう有名な人だということがのちにわかったり、本当にアルバム1枚でひっそりと消えていった人だったりと、いろいろではありますが、おおむね、気に入っています。「すごくいい!」と思えるものに出会うことは多くはありませんが、たいていはそれなりに「いい」ですし、「これはダメだぁ」というものはほとんどありません。

ものを買うというのは、けっきょく「感性」を買っているのだと思います。自分に合った、自分が好きなタイプの「感性」を持ったなにかを、買っているのです。そして、「感性」を商品上でどうやって表現するか、というのも、やはり感性です。

音楽は、目で見てはわかりません。なので、本来なら「実際に聴く」のが、その「感性」を知るうえではいちばんいいのですが、気になった音楽のすべてを「聴く」ことはできません。そういった環境は、まだ整っていません。

実際の音が届かないリスナーに、別のかたちでそのアーティストの、アルバムの「感性」を表現する。そのひとつがアルバム・ジャケットと、曲名だと思うんです。これは、ヒントなのです。なので、これらに何か感じるものがあったなら、自分はその感覚を信じます。誰かが「いい」といったかどうかよりも、自分が自分に合ったものを見つけ出す「感性」を、大切にしていきたいと思っています。

音楽に限りませんね。たとえば小説も、そのタイトルのつけ方に、著者や制作担当者、出版社の感性が現われます。ぜんぜん現われているようには感じられないものも少なくありませんが、そういったものはたいていの場合、最初から(自分にとっては)問題外。好みは別として、送り手側の何らかの「想い」が感じられるもののほうが、気になります。そのうえで、たとえば『白い犬とワルツを』というタイトルには強く魅かれるものがあるけれど、『マディソン郡の橋』には何も感じない。『博士の愛した数式』にはすごく魅きつけられるけれど、『世界の中心で、愛をさけぶ』にはまったく興味を持てない。そして、タイトルに魅きつけられたものは、実際に読んでも、やっぱり趣深く感じられるのです。

ワインだってそうです。多くの場合、ラベルが美しいワイン、というよりも、ラベルのデザインが気に入ったワインは、美味しいといいます。重要なのは「気に入った」という部分。ワインは、その生産者の「想い」によって、似たような環境、あるいは隣接する畑から取れた同じ種類の葡萄でつくっても、味わいが変わってきます。そして、つくり手がワインに対してどのような「想い」を持っているか、その「感性」が、ラベルにもにじみ出ていることが多いのです。なので、ラベルのデザインが自分にとって好ましいものであるということは、つくり手の「感性」が自分にとって好ましいものであるケースが多い。自分にとって好ましい「感性」をもったつくり手によるワインは、味わいも自分にとって好ましいことが多い。よって、ラベルのデザインが気に入ったワインは、(自分にとって)美味しいことが多いのです。

いずれにしろ重要なのは、「自分にとって」好ましい、ということ。「誰か」がいいといったからでなく、「多くの人」がいいといっているからでなく、「自分が」自分に対して自身を持って「これは、いい。好きだ」といえるか。たとえ他の人が「それは、よくない。嫌いだ」といったとしても揺るがずに「でも、自分は好きだ」といえるか。

そういうものに出会うには、他人の感性は参考程度に収め、それよりも自分の「感性」を信じて、自分で探すしかないのではないかなぁと思うのです。

などという理屈をつけながら(^^;)、あいかわらず自分はジャケ買いを続けているわけです。

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コメント

むかし、悩みました。「感性」に自信を持てなくて。
あるいは今もで、いまはもう開き直りの気味があります。
ただ、ほんとに響いているか、本当か、と問いかけることは絶やさないように心がけています。でも、ついつい。
マイナー好みなんかに、かなり気取りの部分もあるに違いなく、おおげさにいえば、異端を感受するにも相当の力量が必要なはずなのに、異端というだけでよろいを着た気になってることがある。
正統にせよ異端にせよ、そのそれぞれの豊かさを認められる健康な力をこそ身に着けたい、と常々思うものでありまする。

投稿: tonto | 2006/06/15 17:44

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