MATIA BAZAR / ...BERLINO...PARIGI...LONDRA
Matia Bazar(マティア・バザール)のオリジナル・メンバーで、曲づくりの中心人物でもあったPiero Cassano(ピエロ・カッサーノ)脱退後にリリースされた最初のアルバム(Pieroは1999年に復帰しています)。それまでのダイナミックかつドラマティックなポップ・ロック・サウンドを残しつつも大胆にテクノ・ポップ・アレンジを導入し、ずいぶんと印象が変わりました。
M1「Lili Marleen」はたしか、このアルバムと同じタイトルの日本独自編集盤ではB面の最後に収録されていたように記憶しています。そのためか、この曲を聴くと、なんだかもうアルバムが終わってしまうような気がします(笑)。Marlene Dietrich(マルレーネ・ディートリッヒ)などで有名な曲ですが、テクノ・アレンジが施されたこのアルバムのなかでも、もっともテクノ・ポップ風味の強いアレンジになっています。
M2「Io ti voglio adesso」は、イントロのころころとしたエレクトリック・ピアノの音がとても可愛らしいですね。メロディがなめらかにつながらず、展開や構成に予定調和を見つけにくい、だけど緩急のドラマがあって美しい独特のヴォーカル・ラインは、Antonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)時代のMatia Bazar
の曲以外ではなかなか聴けない気がします。
M3「Passa la voglia (Look at the rain fall)」ではイントロがスペーシーなシンセサイザー・プログレッシヴ・ロック風。ヴォーカル・パートに入ると、空気の澄んだ明け方の青い空のような爽やかな風が吹きます。
M4「Che canzone e'」はリズムの強調されたポップ・ロック。Antonellaのヴォーカルにはおてんば娘のような元気な可愛らしさがあり、楽しいです。曲の途中に、フィルターかヴォコーダーかなにかをかけたマイクでアルファベートを唱えるパートがあるのですが、この部分のバックで演奏されているギターのメロディは、あとの曲でまた出てきます。
M5「Fortuna」は、イントロの部分を聴くとM1とどう傾向のテクノ・ポップかなと思うのですが、ヴォーカル・パートへ入っていくとMatia Bazarらしいなめらかなポップスへと変わっていきます。1コーラスめでは男性ヴォーカル(誰かしら?)、2コーラスめからはAntonella
へとチェンジして、ヴォーカルの変化もつけています。ディストーションのかかっていないエレキ・ギターの音も好ましく感じます。
M6「Fantasia」はこのアルバムのなかでもなかなか魅力的な曲。デジタルなシンセサイザーの音とクリーンなエレキ・ギター。男女によるヴォーカルの掛け合い。いくぶんシリアスな感じの歌メロ。ヒューマン・ヴォイスを使った空間を感じさせるコーラス。M4の途中で出てきたギターのメロディが、ここでまた導入されています。
M7「Stella polare」は、個人的にこのアルバムのなかでもっとも好きな曲。ゆったりとしたメロディに乗るAntonellaの伸びやかな歌声が空高くまで届いていくようです。無限の空間が広がる夜空を眺めているような印象でしょうか。バックの演奏が意外と可愛らしくて、これもまた魅力的。
M8「Zeta」はピアノによる独奏。ほんのりクラシカルな雰囲気はありますが、とくにどうといったことのない曲のように思います。ピアノの音色に艶がないのが残念。
M9「Fuori orario」はアップ・テンポのロック。がちゃがちゃしたエレキ・ギターの音は気持ちいいのですが、白玉中心のキーボード・アレンジは平凡でいただけない感じです。曲調的にはMatia Bazarの前身グループともいえるJ.E.T.
(ジェット)の面影が見える気がします。
M10「Astra」はこのアルバムで2曲目のインストゥルメンタル。オルゴールのねじを巻くSEから始まるので、ファンタジックな感じになるのかなと思いきや、スペーシーなシンフォニック・プログレッシヴの香りが漂う曲でした。キーボード・オーケストレーションをバックに気持ちよくメロディを奏でるギター。後半部ではピアノとAntonellaのスキャットも入ります。どことなくセカンド・アルバム『Granbazar』のころの彼らを思い出しました。
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