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2006/04/25

SIMONE CRISTICCHI / FABBRICANTE DI CANZONI

2006年のサンレモ音楽祭でAnna Oxa(アンナ・オクサ)とはまた別の方向に強い個性を振りまいていた新人カンタウトーレ。奇妙なルックスに気をとられがちですが、曲も非常に個性的で、サンレモ参加時からとても気になっていました。これは彼のデビュー・アルバムですが、ステージ等での音楽活動自体は1998年ごろから行なっていたようで、意外と地道な下積みを経験しているようです。デビュー・アルバムなのになかなか完成度が高いと感じられるのは、こうした地道なキャリアがあるからなのかもしれません。オフィシャルサイト(http://www.simonecristicchi.it)の「News」ページに「Simone、2005年のサンレモ音楽祭新人部門に“Che bella Gente”で参加」と年号を間違えた記事を堂々と載せているあたり、なんだか天才肌を感じさせます(←意味不明)。

サンレモ参加曲のM1「Che bella gente」はアコーディオンやマンドリンを導入し、古いユーロ・ミュージック的哀愁が感じられます。最近のイタリアン・ポップスにはなかなか聴けない個性的な曲で、今後に非常に期待が持てます。こういった、少し古いユーロ・ミュージックのような妖しく切ない哀愁は、彼の持ち味のひとつのようです。少し丸い感じのやわらかな声も個性的で、不思議な感覚を持ったこの曲との相性もバッチリ。

M2「Fabbricante di canzoni」ではホーンが入り、ジャズやラテンを感じさせるポップスになっています。派手さのあまりない東京スカパラダイスオーケストラとかを想像してしまいました(スカパラを聴いたことはほとんどありませんが)。

M3「Studentessa universitaria」では文字数の多い歌詞がカンタウトーレ風。どことなくユーモラスでありながらも少し切ない感じがするメロディが印象的です。アコーディオンが導入され、南欧風の哀愁も醸しだします。

M4「Vorrei cantare come biagio」ではミュートをつけたホーンのイントロや、ぶんちゃ・ぶんちゃというリズムがノスタルジック。Enrico Ruggeri(エンリコ・ルッジェーリ)の2003年のサンレモ音楽祭参加曲「Primavera a Sarajevo」をちょっと思い出しました。似てないか。終盤部分で一瞬、突然のオーケストレーションつきスロー・パートが差し込まれていて、びっくりします。構成を工夫してるな。ちなみに「Biagio Antonacci(ビァージォ・アントナッチ)のように歌いたい」といった意味の歌のようですが、この曲にBiagio Antonacci風のところがぜんぜん感じられないのもまたおかし。

M5「L'isola」は「島」というタイトルが非常にぴったりくる感じの曲。アコースティック・ギターとマンドリンによるイントロは南欧の雰囲気で、ヴォーカル・パートではレゲエ風のやわらかくあたたかなリズムが心地よいフォーク・ポップスになります。サビでは薄いオーケストレーションが入り、海の広がりのようなものを感じます。ただ、その海岸は人が少なく、少し寂しげな風景も思い浮かびます。

M8「La filastrocca della morlacca」はアコーディオンとヴァイオリンが古いヨーロッパの妖しいノスタルジイを醸しだすような曲。こういったサーカス音楽風の「いけない感じ」がまざった哀愁は、自分は好きです。

M12「L'autistico」もイントロが妖しいユーロ・ミュージックで引かれます。サーカス音楽風というか、Cirque du Soleil(シルク・ドゥ・ソレイユ)風というか。ヴォーカル・パートに入るとけっこう淡々としたものになってしまうのですが、そのうしろには「ヒッチコック劇場」の曲のような、どことなくユーモラスで、どことなくミステリアスな雰囲気があって、悪くないです。

全体的に独特の個性と構成・アレンジを持った曲が多く、自分の好みからすると非常に好ましいアルバムです。

なかにはM9「Telefonata per l'estate」のようにGianni(ジァンニ)とClaudio(クラウディオ)が電話でしゃべってるだけ(というか、こいつら誰だ?)で曲ですらないものとか、M13「Stupidowski」のようなどうということのない普通のポップスもあります。アルバムが後半に進むにつれて、曲づくりの面で少し息切れしてきちゃったかなという感じはないでもないです。

でも、そんなに(キワモノ的な)個性が強くない曲も、それなりに普通に楽しめます。M6「Cellulare e carta sim」などは構成も展開も素直で、ある意味でSimoneらしくない?可愛らしい印象を持った、もし日本語で誰かが歌うとしたら槇原敬之が似合いそうなフォーク・ポップスですが、これはこれでいい感じですし、M10「Ombrelloni」のような50's、60'sを思わせる普通のポップなロックンロールも楽しいです。オールドファッションドなテイストたっぷりのコーラスもいい感じです。M7「Senza」やM11「A samba」は曲自体はたいしたことのない、自分の好みからすればつまらないものなのですが、バックのリズムなどからすれば明るく楽しくなりそうな曲なのに、なぜかそうはならないという不思議さはちょっとおもしろいです。

そんなわけで、トータルとしてとても楽しめたし、今後も楽しみなカンタウトーレです。ところどころで歌声が一瞬、Tito Schipa Jr.(ティト・スキーパ・ジュニア)風に聴こえるところも自分にとってはポイントが高いし。

ちなみに、このアルバムはもともとは2005年にリリースされたものに、サンレモ参加曲のM1を追加収録して2006年に再リリースしたようです。

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