FILIPPO MALATESTA / GIRAMONDO
Rimini近郊出身のFilippo Malatesta(フィリッポ・マラテスタ)。自分にとっては初めて聞く名前のように思うし、ジャケットの写真を見てもまだ若い感じなので、最近出てきた新人かと思っていたのですが、じつはアルバム・デビューは1992年で、この『Giramondo』は4枚目のアルバムだそうで。意外と中堅どころのカンタウトーレでした。
デビューしたてのころはCanzoniere dell'estate(夏の音楽祭)で2位になったり(1993年)、セカンド・アルバム『Malatesta』(1994年)でCorrado Rustici(コッラード・ルスティチ)とコラボレーションしていたりと、それなりに話題も提供していたようですが、1997年にサード・アルバム『Il re delle tre』をリリースして以降7年も沈黙してしまった(シングルのリリースもなし)ので、その間に音楽シーンから忘れられちゃったのだろうな。
というわけで、彼にとっては7年ぶりのアルバムとなった『Giramondo』。悪くありません。悪くありませんが、突出していいところも見つけにくいのが、中堅アーティストとしてはちょっと厳しいところ。
おっさんが歌ういかにも古いナポレターナのイントロからどことなくNek(ネック)風の軽快なポップスへとつながるM1「Giramondo」とか、素直なメロディと伸びやかなヴォーカルが聞けるミディアム・テンポのM8「Fantastico」などは、ラジオで頻繁にかければそれなりにヒットしそうな感じはします。最近のイタリアン・ポップスにありがちな軽やかでメロディアスなポップスですね。
ほかにも、南欧やラテンのようなエキゾティシズムを感じさせるM2「Boh」とか、フォーク風な素朴さや優しさを感じさせるM4「Con un filo di gas」やM6「Solo」などもありますし、初期のAC/DCを思い起こさせる(←本当か?)ディストーションのかかっていないエレキとベースによる重いリフが印象的なM5「Il gatto」などもあります。いくつかの曲ではフィザルモニカ(アコーディオン)が導入され、南欧風のひなびた哀愁が漂います。
ただ、どれも意外と普通というか、平凡というか、ありきたりというか。悪くはないのだけど、もうひとつ「突き抜けた」ところがないのですよ。Francesco Renga(フランチェスコ・レンガ)をすごくおとなしくしたような感じの粘っこい歌い方とけっこうよく通る声はそれなりに魅力的だし個性もあると思うのだけど、考えてみるとこういった声と歌い方の歌手って最近多いよなぁという気もするし、そのなかでFilippoが飛びぬけて個性的かというとやはりFrancescoのほうが圧倒的に個性的なわけで... というようなモヤモヤ感が、ヴォーカルにも曲そのものにも残ってしまいます。
なかにはM7「Luna Park」のように、陽気なカントリー・ミュージック風のところに哀愁のアコーディオンがかぶさったと思ったら途中で歌謡曲みたいなコーラスが入って最後はサスペンス映画かよみたいな演奏につながるという、こう書いているだけで楽しいアレンジもあったりするのですが、せっかくのこうした楽しさを魅力的に活かしきれてないような感じがします。そもそも、Filippoの方向性というか、このアルバムの方向性、伝えたい・表現したい音楽の方向性といったものが、なんだかばらけちゃっているような、そんな印象もあります。
個々の曲は、悪くはないのです。アルバムとしても、悪くはないのです。最近のイタリアン・ポップスの作品として、充分に楽しめる内容だとは思います。ただ、どれもがアベレージな感じなので、あまり「Filippoの歌と曲」という印象が残らないのです。このアルバムではプロデュースもアレンジも自分でやっているようですが、誰かよいプロデューサーとアレンジャーのアドバイスがあったなら、もっと魅力的な作品になったのではないかなぁという感じがします。
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