PFM / PASSPARTU'
Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)といえば、いわずと知れたイタリアン・プログレッシヴ・ロックのビッグ・ネームのひとつなのですが、実は自分、あんまりPFMには興味がなかったりします。もちろん、初期の、いわゆるプログレ気の彼らの作品は持ってますし、それなりに好きではあるのだけど、それほどのめりこむほど好きではないというか。『Per un amico』などはとてもいいアルバムだと思うけれど、なにげでそれよりも『Chocolate Kings』のほうが好きでよく聴いてたりします。
そんなわけで、プログレ・ファン&PFMファンのあいだではあまり評判のよくないBernardo Lanzetti(ベルナルド・ランゼッティ)のヴォーカルも意外と自分は好きだったりしまして、この『Passpartu'』もBernardoのヴォーカルがうまくはまってるよなぁなどと思いながら楽しんでしまっています。
といっても、このアルバムを初めて聴いたのは、実は比較的最近です。『Chocolate Kings』よりあとのスタジオ作品って『Miss Baker』しか聴いたことがなく、これが思いっきり自分の好みとは違っていた(と当時は思ったのだけど、いま聴くとどうかな)こともあり、また以前はよりプログレ的な音楽が好きだったこともあり、「プログレではなくなった」といわれていたこのころのアルバムって、ずっとほったらかしにしてあったのです。PFM自体、そんなに好きというわけじゃないし。
しかし、もったいないことしてたな、自分。よいのですよ、このアルバム。後半はどうってことのない、演奏がうまいだけの中途半端なポップスに自分には聴こえてしまうのですが、前半が素晴らしい。地中海風味たっぷりのプログレッシヴ・ポップス。Franco Mussida(フランコ・ムッシーダ)の、きらきらした地中海を思わせるようなアコースティック・ギターが冴えまくってます。Patrick Djivas(パトリック・ジヴァス)のテクニカルで動きの多いベースも曲に奥行きと広がりを与えてますね。
とくにM1「Viene il santo」とM2「Svita la vita」がいいな。M1はほんと、極上の地中海ポップスだと思います。どちらも、途中のどこかでAngelo Branduardi(アンジェロ・ブランデュアルディ)が出てくるんじゃないかと思った。
M3「Se fossi cosa」もFrancoの弾くガット・ギターのやわらかい響きが心地いいですね。スローなシンフォ・プログレ風のバラードになってます。
一転してM4「Le trame blu」は軽快なポップ・ナンバー。途中の歌詞が「タモ、タモ、タモリ。タモ、タモ、タモリだめ、ブルー」って聴こえる気がする(空耳アワー)。
このあたりまではなかなか楽しいのですが、ここから先が自分にはもうひとつ。
M5「Passpartu'」は明るいインスト・ポップスで、なんだかどこかの製薬会社のCMソングに似ているような気がする、どことなく日本のフージョンぽい曲だし(フュージョンってあんまり好きじゃないんです)、M6「I cavalieri del tavolo cubico」も演奏はすごくうまいんだけど心に響くメロディがなくて魅力が薄い。
M7「Su una mosca e sui dolci」は、ギターの音色は魅力的なんだけど、曲は普通。というか、退屈。ただ、途中でどことなくNew Trolls(ニュー・トロルス)風のコーラスが入るのはいいな。
最後のM8「Fantalita'」は、ほんのりラテン・ポップの雰囲気を漂わせるミディアム・テンポの曲で、ここで少し盛り返したかな。サビのコーラスなどは非常にイタリアン・ポップス的。Pooh(プー)やNew Trollsを小粒にしたような感じでしょうか。
前半の地中海風味、後半は平凡なポップス風味と、途中で印象がかわってしまうのが残念ではありますが、少なくとも前半はかなり魅力的。それだけで自分にとっては充分です。
ちなみに、歌詞の多くを提供しているGianfranco Manfredi(ジァンフランコ・マンフレディ)は、カンタウトーレとして自身のアルバムも何枚かリリースしていますが、なかなか楽しい作品が多いようです。1977年(『Passpartu'』の前年)にリリースされた『Zombie di tutto il mondo unitevi!』にはPFM人脈からの参加ミュージシャンも多く、独特の完成を持ったポップ作品になっています。機会がありましたら、こちらもぜひ。
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