映画『SAW2』
前作『SAW』のヒットから1年足らずで続編をつくりあげるなんて。このフットワークのよさをうちの会社も見習いたいものだ... いや、それはどうでもいいのですけれど。
観てきましたよ、『SAW2』。前作ではすっかり簡単にころっとだまされた自分でした。実行犯の特定(推測)までは早い段階でできてたのだけど、犯行を計画した真犯人がまさかあんなところにいるあの人だったなんてことは気がつかなかったぁ。密室での緊迫した感じやゲームに勝つ=生き残るための「答え」も、いやぁ~な感じ満載のスリリングな映画だった。かなり楽しんで観たのですよ、前作は。
さて、続編です。う~ん、ちょっとテイストが変わりましたね。脳みそ飛び散ったり、釘だらけのバットが頭に刺さったりと、痛いシーン、えぐいシーンは満載ですが、前作ほどの緊迫感や、恐怖のなかでの知的ゲーム感は薄れちゃった感じ。
もちろん、観終わってみれば、本当の意味でゲームをしてたのは監禁された8人ではなく、刑事とじいちゃん、もっといえば姉ちゃんと刑事であって、あの8人には実はあまり意味がないというか、彼ら自身がゲームの「コマ」であって、実はプレイヤーとしての立場はほとんど与えられていなかったというどんでん返しというか、構造上のトリックというか、そういった引っ掛けに今回もまんまとだまされてしまった自分のバカヤローとかは思いますし、そのあたりが「SAW」的で、うまいなぁとも思います。
でもねぇ、映し出されるシーンのほとんどが「コマ」であるあいつらなわけじゃないですか。できればもっと「コマ」たちのあいだの緊張感・緊迫感がほしかったし、「コマ」であってももっと知力が試される、知力を発揮する展開がほしかった。知力フル稼働したあいつらを「コマ」扱いしてしまうジグソウ、と思ったらそのうしろには2代目ジグソウ、くらいの重層構造があって観てる側は頭の中が大混乱、くらいのお話になってたら、もっとおもしろかっただろうと思うのだけど、「コマ」のほとんどが知力放棄してる連中ばかりなのが残念。もっとね、「コマ」の連中と一緒になって「答え」探しをしたかったよ。
モニターのトリックについては、けっこう早い段階で気づいた。少なくとも発信源は別だろうくらいのことはすぐにわかる。しかし、金庫から子供が出てきたときには「あぁ、やられたぁ」と思いましたわ。大事なのは「ルールを守る」こと。最初からじいちゃんはそういってたのに。ルールさえ守れば、息子は助かるって。くそぉ。
しかし、前作でも思ったのだけど、犯行の動機が弱いよなぁ。命を大切にしない者は、生きるに値しない。これはこれでいい(社会風潮的にはかなり危険だけど)として、初代ジグソウはこの考えに取り憑かれたある種の狂信者(精神的に異常や病的とは言い切れない人でも、こういった考えに取り憑かれるケースはあるからね。ある種の宗教とか)と考えて納得がいくのだけど、2代目ジグソウが同様の考えを強固な信念として持つに至る過程と理由が、あれだけでは弱いと思うのだよなぁ。こういった「信念」って、ある程度の時間をかけて徐々に蓄積し強固になっていくものだと思うのだけど。
などと、なんとなく納得できないところや、充分に楽しみきれなかった部分もあるにはあるのだけど、全体としては満足いく内容でした。あの終わりかただと『SAW3』もありそうな感じだけど、次回はぜひ被害者たちにもっと知力フル稼働で答え探しをしてほしいです。
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コメント
TBさせていただきました。
>命を大切にしない者は、生きるに値しない
ん?
これが犯行動機ではないですよね。
投稿: tosi | 2005/11/10 08:24
>これが犯行動機ではないですよね。
ジグソウのもともとの犯行動機(というか、大義名分)って、これじゃなかったでしたっけ?
2代目も、今回の映画ではほとんど個人的な恨みが直接の動機になっているような感じはしますが、初代ジグソウのあとを引き継ぐ、というからには、大義名分も引き継ぐべきだし、そうでなければ初代も納得しない(引き継がせない)んじゃないかなぁという気がするのですけど。
なにか、重大な見落としをしているかしら、おいら。
投稿: もあ | 2005/11/10 16:40
前作「SAW」は動揺するアダムとゴードンの息詰まる緊張感で感情移入してしまいましたが、今回はアッという間に進んでしまって、刑事親子への同情もあまり感じられないまま、ストーリーを追っていっただけでした。
そして「コマ」は次々倒れてしまい、名前がはっきり印象付けられないまま。
それなりに面白かったけれど、刑事はもっと魅力ある人にして欲しかった。
それと姉ちゃんの最初の行動、不自然過ぎます。
次作「SAW3」大いに期待してます。
投稿: hello nico | 2005/11/20 17:28
ご返事いただいていたのに返しが遅くなりました。すいません。
俺は、「跡継ぎを見つける(ガンを克服する)」ことが動機だと思ったのです。「命を大切にしない者は、生きるに値しない」というのはそのためのテストかと。逆に言うと「命を大切にする者こそ生きる(跡継ぎになる)資格がある」。もっとも更に試練を課していましたがw
俺が勘違いしてるかな?
投稿: tosi | 2005/11/22 08:59
>hello nicoさん
そうなんですよねぇ。今回はどの登場人物にも「選ばれてしまった人物」としての興味とかがあんまりもてなかったのが残念ではあります。
>tosiさん
なるほど。そういう考え方もおもしろいですね。映画を観て、自分なりに意味や理由や背景等を考えたりするのって楽しい。どれが正解・不正解ということはないと思うので、そういう考えもありでしょう。
そうすると、差し迫っての命の危機を抱えていない2代目ジグソウは、初代とは少し違う動機で今後の行動をしていくわけですね。ある種のコピーキャットか。
そうやって、動機や人が少しずつ変わっていきながらも、知能的シリアルキラーとしての「ジグソウ」が何代にもわたって生き残っていく、というのもおもしろそう。
投稿: もあ | 2005/11/22 16:44